鈴木海花の「虫目で歩けば」

自然のディテールの美しさ、面白さを見つける「虫目」で見た、
身近な虫や植物の観察や飼育の記録。

兵庫県伊丹市昆虫館へ

2015-01-31 17:16:40 | 日記

 去年1年、岩手県葛巻町で取材を重ねて、福音館書店『たくさんの ふしぎ』の1冊として出版されることになった「わたしたちのカメムシずかん」(仮題)の原稿が、最後の詰めにかかっています。 

 葛巻での話に加えこの1冊には、カメムシの魅力や、カメムシに関する「なぜ?」に応える内容を盛り込もうと、「どうして、そんなにくさいの?」「どうして、そんなに集まるの?」の2点を追求すべく、1月30日、兵庫県にある伊丹市昆虫館へ、長島聖大さんを訪ねました。

 

 雪の予報はあったものの、チラホラくらいだろう、とたかをくくっていたら、朝、しっかり雪!

いっしょに行く『たくさんのふしぎ』編集担当 北森さん(福音館きっての虫好き編集者)から「空路はダメそうなので、新幹線にしましょう」と連絡があり、急きょ陸路で行くことに。

 新大阪駅から在来線で伊丹へ到着、迎えに来てくださった長島さんと昆虫館へ。

今回は取材インタビューのためということもあるけれど、まだ一度も行っていない伊丹市昆虫館に行くのが楽しみ。

 

東京は雪だったが、伊丹につくと雨だった。昆陽池(こやいけ)公園のなかにある伊丹市昆虫館エントランス。

 

 長島さんに館内を案内していただいた。

ここはミュージアムショップが充実していることでも評判。

なかでも缶バッチの種類がすごい。

標本制作のためのアイテムも充実しています。

なかでも長島さんおススメがこのピンセット。

500円とはすごいお買い得!ちょうどピンセットを探していたので買っていこう~

 

特別展示室には長島さん愛用の「ピンセット展示」もある!

話題をよんだ『カメムシだらけに したろか~』展もここで行われた。

標本づくりにはもちろん、虫の研究には優秀なピンセットが不可欠。

先の効きがポイント。ときには自分で研いで好みの形にすることもあるという。

 

ツダナナフシの顔ったら

 

人気のコノハムシも。食草のグアバは沖縄から取り寄せているそうだ。

 

まるで初夏のようなチョウの温室へ。

足を踏み入れた途端、オオマダラがおでこにぶつかってきた~

今までいくつかチョウの温室に入ったが・・・・このチョウ密度は・・・すごいぞ!

通路を歩く時も、チョウをよけていかないと、衝突しそうな密度なのだ。

 

 

ここで飼育されているのは、オオゴマダラ、リュウキュウアサギマダラ、スジクロカバマダラ、ナミアゲハ、ナガサキアゲハ、クロアゲハ、ツマグロヒョウモン、ジャコウアゲハ、コノハチョウ、ツマベニチョウ、クロテンシロチョウ、ツマムラサキマダラ、キタキチョウ、カバタテハ。

チョウの寿命も、同じ種でも短命も長生きもいるよう。

 ホウライカガミの葉裏にはオオゴマダラの卵

 

羽化したばかりのコノハチョウ。コノハチョウをこんなに近くで見られたのは初めて!

この温室の植物の管理も担当している長島さんが力をいれているのはラン。

あちこちに珍しいランが。

チョウだけでなくランも楽しめるぜいたくな温室。

 

バックヤードも見せてもらいました。

あれ、なんかすごく厳重に南京錠がかかった飼育箱がある・・・・・・。

これはコノハムシの飼育箱。コノハムシは外来生物法で輸入が禁止されている(違反した場合は3年以下の懲役又は100万円以下の罰金)虫。ここで飼育されているのは、輸入を禁止する法律ができる前に、海外からの植物にくっついてきて、植物防除関係の施設で累代飼育されていたもの。こういったものは国内の植物に被害を及ぼす可能性があるので、逃がしたら(あるいは盗まれたら?)たいへん。ということでこの厳重な取扱いなのだそうだ。

館員の方が、飼育箱の掃除やエサの補給をしているところ。

たっくさんあるから、たいへんそうだ。

こ、これっ!!!

ここでは飼育容器の蓋の内側に、ストッキングの脚部分を腿のあたりで切ったものを使っているのだ―――。こうやって手をいれて、エサ交換などをすれば虫を逃がすことがないわけ。

「ただこの方法を実施するには、大量にストッキングを買いに行かなきゃなんないというところが悩みで・・・」

と長島さんが言うので、「あら、デンセンしたお古のではだめなの?」というと、

即座に「それはナシナシ、ぜぇったいナシ!」とそばにいた飼育員の方も口をそろえ、

はげしく否定された。

 

ここは鱗翅目類の幼虫や蛹を飼育している部屋。

容器は毎日交換し、基本1容器に1匹。

もし複数の幼虫が入っている容器で、1匹が死んだら、生きているものも、かわいそうだけど即廃棄だそうだ。病気や菌、寄生虫などが広がるのを防ぐため。自己流で飼育している私にはすごく参考になった・・・というか、もっと厳しく管理しないといけないなあ、と反省しました。

 

次は標本などの保管をしている部屋も見せてもらった。

上の写真の箱には、去年岩手県葛巻で、江刈小学校の生徒や先生、それに石川忠さん、長島さん、私などが調査のために採集したカメムシがみごとに整理されている。

2014年2月に37種だった発見種は、現在85種に増えた。今年もひきつづき、200種を目指して葛巻のカメムシ調査つづけます。

 

わっ、私が見つけたのもちゃんとラベルがついてるじゃん!

うれしいなあ~

秀くんのも、

 

カメムシだいっきらい!という翔太くんが見つけたハムシも立派な標本になってるよ。

次に行くときにはこれらは1種1匹の標本箱にまとめられて、みんなに届けられる予定だそうです。

楽しみだね。

 幼虫飼育室とこの標本類保存室は、土足厳禁でした。

 

 ひととおり館内を見せていただいたあとは、カメムシのにおいと離合集散について、長島さんにロングインタビュー。疑問だったこと、知らなかったこと、たくさんありました。帰ったら、教えていただいたことを原稿に反映させて書き直しします。

 

ところで、これ、

カメムシのにおいを合成した液体!

カメムシの出すにおいの主成分アルデヒドにいくつかの成分を加えたものだそうで

嗅ぐときは少し遠くに置いて、手のひらであおぐようにします。そうしないと強い刺激で「痛い」んだそう。

こわごわ嗅いでみたにおいは、青リンゴのようでした。

ちなみにwikiによると、この液体は、『ブチルアルデヒドジエチルアセタールとエチルビニルエーテルから製造され、フレグランスにナチュラルなトップノートを与えたり、フルーツタイプのフレーバーに使用される[2]慢性疲労症候群に対しても有効である[4]。』そうです。

においはどれも、濃い場合と薄い場合では感じ方やまわりに及ぼす影響がずいぶん違うそうで、

カメムシも「敵接近、警戒しろ!」というときは濃いにおい、「いい越冬場所見つけたからみんなおいでよ」というような場合は同じにおいを薄くして出すのだそうだ。

他にもカメムシのにおいと集まる習性について、いろいろ本に盛り込みます。

 

 というわけで、伊丹市昆虫館での楽しい時間はあっという間に過ぎ、

長島さんに空港まで送っていただいて、帰りは飛行機。

空港でたこ焼きを食べて、羽田に着いたときには、雪は止んでいました。

長いような短いような、一日でした。