にせものを てっていてきに みがきこみ ほんものよりも ほんものにする
*これは、ある女優さんの顔を思い浮かべながら詠んだものです。顔を見れば、かのじょの顔を盗んだというのがありありとわかるような例でしてね、顔のつくりなどはそっくりなのだが、表情がまずくて全然きれいに見えないという人なのです。
しかし芸能界というのはそういう人を徹底的に磨きこむのだ。きれいな服を着せ、おもしろいように宣伝文句をつけて、美人で売り出そうとしている。
偽物も磨きに磨けば、本物になるとでもいうように。だがしょせん偽物は偽物。どうしても臭い正体が漏れ見える。
天使の顔というのは罠なのです。人間としては整いすぎている。それゆえに中身のゆがみがそのまま表に出る。その女優さんは、かたちだけは完璧なのですがね、心の薄さというか、未熟さがそのまま表情に出ている。ゆえに全然きれいに見えないのです。
かのじょが美しく見えていたのは、中身が大きすぎ、美しすぎたからです。人類のために偉大なことをして、それをなんでもないかのようにして通り過ぎていく。その心がみごとだったのです。かたちだけではない。かたちも重要な要素だが、それだけでは美しくはなれない。
その形だけはそっくりな女優さんを見ればそれがわかる。心が、霊魂が美しく整っていなければ、本当の美人にはなれないのです。
その女優さんはおそらく、これから老いてゆけばゆくほど、心が表面にあらわれてくるでしょう。形だけは整っているのに、心がまずければ、どういうことになるかという実例を、人々に見せてくれるでしょう。