ぬばたまの 闇空に照る 星もなく ただ見るものは 身の一つ星
*一つ星とは、北極星のことです。目立たない小さな星だが、ほとんど動かずに空にあり、世をゆく旅人の目印となってくれる星。
だが空に照る星など何も見えない夜には、その星も見えない。そういう時はどうすればいいのか。自分の中にあるひとつ星を見てゆくのだ。
たとえこの世界が逆風の吹き荒れる嵐の世界だとしても、自分の中にはまぎれもない本当の自分がいる。それがいやだということはしなければよい。常に、本当の自分がいいということをしていればよい。それを身のひとつ星というのです。
かのじょはよくこういうことを言っていましたね。自分がいやだということはしなかったと。常にこの自分に心地よいことをしてきたと。その結果が、自閉の半ひきこもりのおばさんだと。
今の世界を、まっとうな感覚でまっすぐに生きていこうとしたら、こうならざるを得ないと言っていました。まさに、そのとおりです。まともな神経で、こんな世界が生きていけるわけがない。だれもかれもが嘘をついている。その嘘が苦しくて、自分よりいいと感じるものを見たらしつこいまでにつきまとって呪い殺そうとする。
恐ろしく嫌な世の中だったのです。全部が全部とは言いませんがね、今の世の中馬鹿がはびこりすぎている。自分が嫌なばっかりに、嘘だけで作った自分を着て、いかにも立派できれいな人間の振りをしているが、やっていることはいつも、人を馬鹿にすることばかりだ。
そういう世の中で生きていれば、まじめな人は引きこもり状態になるよりほかはありません。
ニートだなんだと言われますがね、そういうものを作っているのは、馬鹿が吹き荒れるこの世界なのだ。いやらしい人間がいすぎる。清らかにまじめに生きようとする態度を見せようものなら、そういうものが一斉に襲い掛かって来るのです。人間は、あまりにも愚かな闇に迷い込んでいるのだ。
泥よりも深く暗い闇の中で、身の一つ星さえ溶けてなくなるほど自分を馬鹿にしまくっているのだ。
馬鹿なことになりきって、すべてがだめになっても、彼らはやめられない。
もう永遠に、元の自分に戻れない奈落に、落ち切ってしまったというのに、まだ同じことを繰り返している。
自分という一つ星を、全部だめにしてしまったのです。