子の星を 胸にをさめて ゆく闇夜 夢詩香
*久しぶりに俳句にしましょう。これはだいぶ前に詠んだものだが。
「子の星(ねのほし)」とは、前にも言いましたが、北極星のことです。昔の人の方位の呼び方では、北を「子」といい南を「午」と言いました。西は「酉」で、東は「卯」です。ですから、子午線に対して、卯酉線(ぼうゆうせん)ということばもあります。子午線に直交する東西の線のことです。丑寅というのは、北東の鬼門のことで、昔から忌み嫌われています。未申(南西)は、裏鬼門になります。
まあそういうことは、あまり気にすることはありません。方角による吉凶なんて、でたらめですよ。人間の幸不幸はあくまでも、その人自身から来るものです。
子の星、北極星は、東西の文化の違いにかかわらず、人類の共通の目印だったと言ってよい。地球の地軸も歳差によって微妙に変化していますから、大昔の北極星は違う星でした。古代エジプトのクフ王の時代は、りゅう座のトゥバンが北極星でした。遥か未来には、白鳥座のデネブや琴座のヴェガも北極星になると言われています。だが今は、こぐま座の突端の小さな星が北極星です。あのこぐまという小さな星座の目立たない星が目印だということは、たぶん人間の心に、ある種の陰影を投げかけているでしょう。
今にも闇に消えそうな小さな星だが、確かにそれはある。決して消えはしない。信じて見出し、それを目印にして、正しい道をいけと。
だが、その星も、空を雲が覆ってしまえば、見えなくなる。人間の愚昧が嵐のように大きくなり、世界を覆ってしまえば、神の印も見えなくなる。そんな時にはどうすればいいのか。それは、愛を知っている自分の中にある、まごうかたない真実の光を目印にすればよい。空の真ん中にある子の星のように、それはあなたの真ん中にある。それを見失いさえしなければ、全くの闇夜の中でさえも、正しい道を生きていくことができるだろう。
自分自身というものが、あなたにとっての、子の星なのだ。それだけは、未来永劫、どんな星とも変わることはない。