JCP市原時夫です

千葉県房総の睦沢町から、政治・経済・歴史・オペラ・うたごえを考えるgabuku@m12.alpha-net.ne.jp

思わず胸にこみ上げた 渡部唯生「歴史の吐息」

2019年11月07日 | Weblog
思わず涙が出そうになりました。「民主文学」12月号渡部唯生氏の小説「歴史の吐息」です。
 戦中、政治亡命を行わない日本人の中で、おそらくは不本意にアメリカで生きて行かざるを得なかった、「あき」が日本でその命を終えたいと、オルゴールと奇跡的な再会をし帰らぬ人となる話です。
 私は、私小説的な種類はほとんど読みませんし、矛盾しますが「民主文学」というジャンルが必要なのかという点でも疑問を持っています。
 しかし、この作品は、現代若者の生活気分感情・戦前良心的な官僚の生き様・信仰そして音楽のもつ意味など、読了後、生きることの意味を深く考えさせてくれる作品です。
 国際結婚で夫の死後、帰国した女性を知っておりますが、私のテーマである日本という国に固執する日本人とは何かという、問題提起もあるのです。
 既存の出版界の持つ限界を超えた、才能の発掘という役割が「民主文学」にはあるのかも知れないと思った、作品です。