ナカナカピエロ おきらくごくらく

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

マネキン

2022-09-04 21:54:39 | 
マネキン

その街は
ビジネス街と線路を隔てた反対の
小さな繁華街や怪しい風俗店が雑踏に混じり込んだ
汚い小さな店が犇めく掃き溜めのような町だった
真昼は死んだように静かな街が
一件目の飲み屋が終わった頃には
口を開けて動き出したようにネオンが揺らめく街だった

そんな街の路地路で女は立ちんぼをしていた
暗がりでも目立つように
太い眉に濃いアイライン、真っ赤に引いた口紅に
ロングコードを纏い、まるでマネキンかと見間違えるほどの
美しさだった
雨の日にはアイラインが流れて、まるで捨てられたマネキンのように
哀れだった

今日も女は身体を売って万札のくちゃくちゃになった紙幣を手にするのだった
人生はマネキンのようにはいかなった。
女は生モノで人間だったのだ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

くらげ

2022-09-04 19:13:51 | 
くらげ

夏もそろそろ終わる頃
僕は海水浴に行った

陽はまだ力強く
僕の肌は小麦色に染まった

海にはくらげが大量発生していて
そこかしこに死んだくらげが
波に揺れてぷかぷかと浮かんでいた

帰り道、
僕の身体からは思ったほど
水分が失われ
まるで気の抜けた炭酸水のように
もう鈴虫が鳴く夜の道を
上の空で左右に揺れながら
歩いていた

夜空には黄色く丸い月が
藍色に滲むように輝き
たなびく雲はくらげのように
夜空の風に揺れてぷかぷかと浮かんでいた
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする