ドンクのGallette des Rois
パン作り、趣味で作るなら、2~3日あれば幾つか出来る?ようになります。これを商売にするとなると、1週間や2週間では到底無理です。商売とはお金を頂くこと、そうであれば買ったお客様が少なくとも満足できる商品でなければならない。
経験1年にも満たない程度の技術と知識でベーカリーを始める方を見ますが、其の度胸には感服します。何処に店を出す自信が潜んでいるのか。
材料知識、製パン知識と理論的な裏付け、温度(生地温度、室温、発酵室温など)と発酵時間・熟成時間の関係、品質を決定する様々な要素がどれだけ在るのか。配合・製法、製造できるアイテム数。10年経験してやっと認められる世界で、どうやって生き残りを賭けて、経営して行くのか。
昨年末、中国での講習風景
此処2年ほど中国での仕事を断っていましたが、昨年末断りきれず引き受けた講習。未だに材料が無く、在っても粗悪で、引き受けるには覚悟が必要なこと。出来もしないくせに大きな事を言う、これぞ中国人かと諦めながら、慣れぬ材料で行う試作と講習。
モルトの重要性が判らぬ者共へ、何度も繰り返し其の効果と高品質へのこだわりを説きながら、クロワッサン、デニッシュペストリー、食パン、シュトーレンを見せ付けた。本物のクロワッサンがどんな物か分かったか。小麦粉が枯れていること、其の度合いが半端じゃないこと、薄力粉が強力粉並みの淡白を持っていること、小麦粉の香りがしないこと、粒度が不均一であること、袋ごとに別の粉であるかのような大きな差があること、これまでの中国での講習で分かってはいたが、何しろ酷い。
技術と知識の蓄積の無い中国で在っても、素人ではベーカリー経営は困難であろう。日本の機器は精度が高く、ドゥーコンを例にとっても、温度、湿度のコントロールが間違いなく出来る。素人でも生地さえ上手く出来ればどうにかなる。(一部冷蔵庫メーカーは別だが、ドゥーコンはベーカリー機器専門メーカーに限ります。)しかし、中国のそれは全く信用できない。刻々変わる温度、湿度。これをスィッチのON,OFFとドアの開け閉めでコントロールしながら、作業を行う。こんな環境は日本のベーカリーでは体験できない。
食品衛生の知識も在るのか、無いのか。食品を作る、売る、これは商売だから当然努力する。しかし、食品衛生は商売に必要ではない、そう考えているのだろうか。中国では。小さな店は何処も例外なく汚い。
そんな国に食品加工の工場を置いて、良いものか。確かにこれまで見た大工場の設備は紛れも無い最新鋭の機器で構成され、工場の管理も良くできていた。しかし、作る人間のモラル、これは改善できていない。昭和20年代の何も無い、敗戦国の日本であっても、もっときれいで、衛生的で、しかも人間は比較にならないほど高いモラルと他人への心遣いが在った。