この間からアミメアリという小さなアリをよく見かけます。今年の1月末に大和郡山市に引っ越ししてから、この付近にいるアリを調べてやろうと思い立ち、1種類ずつ詳しく調べています。これまでに、ルリアリ、トビイロケアリ、トビイロシワアリ、ハリナガムネボソアリ、ヒメアリ、クロヤマアリの6種類を調べてきました。今回はアミメアリです。
アミメアリは大きさが2~3mmのこんな小さなアリです。これは6月30日に撮った写真です。これが本当にアミメアリなのかどうかを検索により調べていこうと思います。アリの検索にはいつものように、朝倉書店の「日本産アリ類図鑑」に載っている検索表を用いました。アミメアリはフタフシアリ亜科のアミメアリ属に属するのですが、検索表を使って、まず亜科の検索をしてみます。
①腹柄は2節(腹柄節と後腹柄節)からなる;腹部末端の背板は単純で、微小な鋸歯の列はない;頭盾前縁側方に小突起はない
②触角の挿入部は額葉によって多少なりとも覆われている;前伸腹節刺をもつものと持たないものがあるが、触角挿入部が裸出している種の場合は顕著な前伸腹節刺ある;複眼がある
③跗節末端の爪は単純;複眼の長径は大腮を除いた頭長の1/4以下;額葉は互いに離れる フタフシアリ亜科
検索表ではこの3つの項目を調べることで、フタフシアリ亜科であることが確かめられます。これを顕微鏡写真で確かめていきたいと思います。いつものように、検索の順ではなくて、写真別に各項目を調べていくことにします。
最初は全体像です。まず、アリと一緒にスケールを写して体長を測りました。腹部末端から腹部と腹柄節の境、腹柄節から頭部と胸部の境、それから頭盾の先端まで線を引き、ImageJの折れ線近似で測ったところ、2.9 mmになりました。図鑑では2.5 mmとなっていたのですが、まあ近い値になりました。この写真からは腹柄は腹柄節と後腹柄節の2節からなることが分かります。
この写真では複眼があることを見ます。実は②の対抗する項目にはヒメサスライアリ亜科という複眼を欠くアリがあるようです。それから複眼の長さを図りました。頭盾の先端まで測った頭部の長さの1/4.4になりました。1/4よりは小さいのでこの項目もOKでしょう。
それから、いつも写し忘れる腹部末端も写しておきました。特に異常はないので、①はOKと思われます。
これは顔面の拡大ですが、頭盾の前縁側方に特に突起は見られません。これはクビレハリアリ亜科を除外する項目です。また、触角挿入口はほんのわずかですが、額葉により覆われています。その額葉は互いに離れています。これで①と②はOKです。
最後は脚の先端の拡大ですが、爪に特に異常は見られません。これで、すべての項目を確かめたので、フタフシアリ亜科であることは確かだと思われます。
④触角は11~12節;触角棍棒部は2節以上からなる、あるいは不明瞭
⑤後腹柄節は腹部基部端に接続する;前伸腹節気門は前伸腹節後面にまでかかることはない
⑥前伸腹節刺は前方に向かって反り返らないか、あるいは前伸腹節に刺がない
⑦腹柄節の丘部が山型に隆起し、柄部と区別される;前伸腹節背側縁の前方に小突起はない;腹部腹面側方には隆起縁による輪郭はない
⑧触角棍棒部は3節以上からなる、あるいは不明瞭;触角は12節からなる(一部の種では11節)
⑨頭盾前縁に複数の小突起をもつ;額隆起縁がほとんど張り出さず、そのため触角挿入部が裸出する;触角は11節からなる アミメアリ属
次は属の検索です。赤字は確かめることを忘れた事項です。でも、1項目に複数の事項が含まれているのでたぶん大丈夫でしょう。これも写真で確かめていきます。
触角は11節で、棍棒部は先端3節でした。⑧がちょっとややこしいのですが、一部の例外を除いて12節と書かれていますが、アミメアリはその例外に含まれます。
⑤は腹部の背面寄りに接続するシリアゲアリ属を除く項目です。このアリでは特にそのように見えません。また、⑥は前伸腹節刺が前方に向かって反りかえるカクバラアリ属を除外する項目です。
これは前伸腹節を後方から見た写真ですが、前伸腹節気門は前伸腹節後面にかかっていません。また、前伸腹節背側の縁に突起はありません。これで⑤と⑦はOKです。
腹柄節は丘部が山型に隆起しています。これは腹柄節が筒状のカドフシアリ属を除外する項目です。
これは頭盾を拡大した写真です。この写真だけ、生物顕微鏡の20倍の対物レンズを用いました。頭盾前縁には矢印で示したような小突起があります。これはアミメアリの特徴ですが、写真には写しずらかったです。
これは額隆起線を撮ったものです。あまり隆起していませんが、はっきりと見てとれます。この隆起線が張り出していないため、触角挿入部がよく見えています。
この写真は触角挿入部を写したのものですが、非常によく見えています。アリの種類によっては額隆起線が張り出し、額葉となるため、触角挿入部が見えにくい種があります。これでほとんどすべて項目を確かめたので、アミメアリ属であることが確かめられました。
最後は種の検索です。日本産アミメアリ属にはアミメアリとトゲムネアミメアリという2種が記録されています。ただし、後者は八重山諸島と西表島で見られるアリなので、属が決まった時点でほとんどアミメアリとなるのですが、一応、調べておきます。
⑩前胸側縁部に突起はない;前伸腹節刺は長く、側方から見て先端は前伸腹節後端を越える;頭部と胸部は褐色から赤褐色、腹部は黒 アミメアリ
種の検索はこの1項目です。これも写真で見ていきます。
前胸側縁部には特に突起はありません。また、前伸腹節刺は長く、前伸腹節後端を越えています。色は書いてある通りです。ということで、無事にアミメアリになりました。生態写真を撮ると、頭部の網目模様と黒くて丸い腹部を持っているので比較的に分かりやすいアリです。
アミメアリは大きさが2~3mmのこんな小さなアリです。これは6月30日に撮った写真です。これが本当にアミメアリなのかどうかを検索により調べていこうと思います。アリの検索にはいつものように、朝倉書店の「日本産アリ類図鑑」に載っている検索表を用いました。アミメアリはフタフシアリ亜科のアミメアリ属に属するのですが、検索表を使って、まず亜科の検索をしてみます。
①腹柄は2節(腹柄節と後腹柄節)からなる;腹部末端の背板は単純で、微小な鋸歯の列はない;頭盾前縁側方に小突起はない
②触角の挿入部は額葉によって多少なりとも覆われている;前伸腹節刺をもつものと持たないものがあるが、触角挿入部が裸出している種の場合は顕著な前伸腹節刺ある;複眼がある
③跗節末端の爪は単純;複眼の長径は大腮を除いた頭長の1/4以下;額葉は互いに離れる フタフシアリ亜科
検索表ではこの3つの項目を調べることで、フタフシアリ亜科であることが確かめられます。これを顕微鏡写真で確かめていきたいと思います。いつものように、検索の順ではなくて、写真別に各項目を調べていくことにします。
最初は全体像です。まず、アリと一緒にスケールを写して体長を測りました。腹部末端から腹部と腹柄節の境、腹柄節から頭部と胸部の境、それから頭盾の先端まで線を引き、ImageJの折れ線近似で測ったところ、2.9 mmになりました。図鑑では2.5 mmとなっていたのですが、まあ近い値になりました。この写真からは腹柄は腹柄節と後腹柄節の2節からなることが分かります。
この写真では複眼があることを見ます。実は②の対抗する項目にはヒメサスライアリ亜科という複眼を欠くアリがあるようです。それから複眼の長さを図りました。頭盾の先端まで測った頭部の長さの1/4.4になりました。1/4よりは小さいのでこの項目もOKでしょう。
それから、いつも写し忘れる腹部末端も写しておきました。特に異常はないので、①はOKと思われます。
これは顔面の拡大ですが、頭盾の前縁側方に特に突起は見られません。これはクビレハリアリ亜科を除外する項目です。また、触角挿入口はほんのわずかですが、額葉により覆われています。その額葉は互いに離れています。これで①と②はOKです。
最後は脚の先端の拡大ですが、爪に特に異常は見られません。これで、すべての項目を確かめたので、フタフシアリ亜科であることは確かだと思われます。
④触角は11~12節;触角棍棒部は2節以上からなる、あるいは不明瞭
⑤後腹柄節は腹部基部端に接続する;前伸腹節気門は前伸腹節後面にまでかかることはない
⑥前伸腹節刺は前方に向かって反り返らないか、あるいは前伸腹節に刺がない
⑦腹柄節の丘部が山型に隆起し、柄部と区別される;前伸腹節背側縁の前方に小突起はない;腹部腹面側方には隆起縁による輪郭はない
⑧触角棍棒部は3節以上からなる、あるいは不明瞭;触角は12節からなる(一部の種では11節)
⑨頭盾前縁に複数の小突起をもつ;額隆起縁がほとんど張り出さず、そのため触角挿入部が裸出する;触角は11節からなる アミメアリ属
次は属の検索です。赤字は確かめることを忘れた事項です。でも、1項目に複数の事項が含まれているのでたぶん大丈夫でしょう。これも写真で確かめていきます。
触角は11節で、棍棒部は先端3節でした。⑧がちょっとややこしいのですが、一部の例外を除いて12節と書かれていますが、アミメアリはその例外に含まれます。
⑤は腹部の背面寄りに接続するシリアゲアリ属を除く項目です。このアリでは特にそのように見えません。また、⑥は前伸腹節刺が前方に向かって反りかえるカクバラアリ属を除外する項目です。
これは前伸腹節を後方から見た写真ですが、前伸腹節気門は前伸腹節後面にかかっていません。また、前伸腹節背側の縁に突起はありません。これで⑤と⑦はOKです。
腹柄節は丘部が山型に隆起しています。これは腹柄節が筒状のカドフシアリ属を除外する項目です。
これは頭盾を拡大した写真です。この写真だけ、生物顕微鏡の20倍の対物レンズを用いました。頭盾前縁には矢印で示したような小突起があります。これはアミメアリの特徴ですが、写真には写しずらかったです。
これは額隆起線を撮ったものです。あまり隆起していませんが、はっきりと見てとれます。この隆起線が張り出していないため、触角挿入部がよく見えています。
この写真は触角挿入部を写したのものですが、非常によく見えています。アリの種類によっては額隆起線が張り出し、額葉となるため、触角挿入部が見えにくい種があります。これでほとんどすべて項目を確かめたので、アミメアリ属であることが確かめられました。
最後は種の検索です。日本産アミメアリ属にはアミメアリとトゲムネアミメアリという2種が記録されています。ただし、後者は八重山諸島と西表島で見られるアリなので、属が決まった時点でほとんどアミメアリとなるのですが、一応、調べておきます。
⑩前胸側縁部に突起はない;前伸腹節刺は長く、側方から見て先端は前伸腹節後端を越える;頭部と胸部は褐色から赤褐色、腹部は黒 アミメアリ
種の検索はこの1項目です。これも写真で見ていきます。
前胸側縁部には特に突起はありません。また、前伸腹節刺は長く、前伸腹節後端を越えています。色は書いてある通りです。ということで、無事にアミメアリになりました。生態写真を撮ると、頭部の網目模様と黒くて丸い腹部を持っているので比較的に分かりやすいアリです。
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