奈良のむし探検

奈良に引っ越しました。これまでの「廊下のむし探検」に倣って「奈良のむし探検」としましたが、動物・植物なんでも調べます。

イエバエの同定 キイロホソイエバエ

2022-06-24 16:01:29 | 虫を調べる
だいぶ前のことになるのですが、4月16日にいつもの用水路脇でハエの写真を撮りました。



どこにでもいそうなこんなハエです。この日は捕虫網を持っていたので、採集してきました。翌日、検索をしてキイロホソイエバエではないかなというところまで分かったのですが、そのままになっていたので、まとめて出しておこうと思います。



体長は7.2mm。脚の黄色いハエです。検索をする前にまずは各部の名称を調べておきます。



最初は胸を横から見たところです。ハエの胸はいくつかの部分に分かれているのですが、文献により名称が異なるので、最初に調べておく必要があります。ここでは、日本名は「新訂 原色昆虫大図鑑II」に載っている名称、略号は篠永哲著、「日本のイエバエ科」(東海大学出版、2003)に載っているものです。おそらく、イエバエ科なので、「日本のイエバエ科」に載っている検索表を使うことになるので、まずは対応表を作っておく必要があります。



これは翅脈の写真です。翅脈の名称は「新訂 原色昆虫大図鑑II」を参考にしました。CuA+CuP(Cu融合脈)より下の部分が見えなかったので、下の写真でその部分を見せるようにしています。





これは刺毛の名称です。これも文献によって名称が異なるので、これから検索に用いる「日本のイエバエ科」と日本環境動物昆虫学会編の「絵解きで調べる昆虫」(文教出版、2013)を参考にしました。



最後は頭部の刺毛です。

さて、検索に移ります。ハエの仲間では翅の基部が広く拡大して覆弁という構造を取ることがあります。覆弁は基部に近い基覆弁と端覆弁に分けられます。このような覆弁をもつハエを有弁翅類と呼びます。上の写真で基覆弁と端覆弁があることは明らかなので、検索はここから始めます。検索表には、「新訂 原色昆虫大図鑑II」を用いました。まずは科の検索です。

①翅の基部の前下方に小型の瘤状の構造としての翅下瘤が発達する;触角梗節の背面に明瞭な縫線が走る;通常は鬚剛毛を生じる;通常は基覆弁が発達する;翅のSc脈はR1脈と融合しない  有弁翅類
②口器が発達し、口吻は大きく、機能的
③中脚の副基節は無毛か弱い毛や小刺毛が生える;稀に剛毛を生じる場合にはM1脈は途中で前方に強く屈曲しない
④翅のCu融合脈は翅縁に達しない
⑤翅のA1脈は直線状で、その仮想延長部はCu融合脈の仮想延長部を横切らずに、翅縁方向を向く  イエバエ科

検索をすると、①~⑤の手順でイエバエ科であることが分かります。これを写真で確かめていこうと思います。検索順に写真を見ていくと、同じ写真を何枚も出さないといけないので、いつものように部位別に見ていこうと思います。



最初は胸部側面の写真です。①は翅下瘤が発達するかどうかですが、写真のように翅下瘤があります。また、基覆弁も発達しています。これで①はOKです。③は中脚の副基節(中基副節)に関するもので、見た通り無毛です。



これは頭部の写真です。①は触角硬節背面の縫線についてです。写真ではちょっとはっきりしませんが、毛の生えている部分に縫線はありそうです。また、鬚剛毛は確かにあります。上の項目と合わせて考えれば、①はたぶんOKでしょう。②は口器についてです。どれがどれに対応するのか分かりませんが、口器は発達していることは確かです。



最後は翅脈に関するものです。①については、Sc脈とR1脈は確かに分離しています。④は下の写真を見ると分かります。CuA+CuPはCu融合脈と呼ばれていますが、翅縁には達していません。⑤のA1脈の延長部はCu融合脈の延長部とは交差しないことは明らかです。以上のことからイエバエ科であることは確かそうです。

後は亜科、属、種の検索が残っているのですが、今日はとりあえず、ここまで。


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