奈良のむし探検

奈良に引っ越しました。これまでの「廊下のむし探検」に倣って「奈良のむし探検」としましたが、動物・植物なんでも調べます。

NIKON P950にクローズアップレンズを取り付け

2022-07-04 17:09:16 | カメラ
先日、NIKON P950の最短撮影距離を測定した記事を載せました。それによると、望遠側(35mm換算で2000mm)にすると、最短撮影距離が6mにもなることが分かりました。撮影倍率はズームを望遠側にした方がやや高くなるのですが、こんなに離れないといけないとすると、虫や花の撮影はかなり不便です。もう一台、接写用のカメラを持っていけばよいのですが、重いので、だいぶ前からP950に合うクローズアップレンズを使っていました。でも、性能を調べていなかったので、今回、簡単な実験で性能を調べてみました。



実験はいつものようにブックエンドにスケールを貼り付けて、それを撮影します。手前の四角いのはレーザー距離計です。



後は、カメラにクローズアップレンズを取り付けて、スケールを撮影するだけです。用いたクローズアップレンズの焦点距離は1mです。クローズアップレンズの役割はちょうど目の前に虫メガネを置いて見るのと同じです。従って、撮影対象はクローズアップレンズの焦点距離以内に置かないといけないので、この場合の撮影距離は約1mとなります。また、この時の倍率は(カメラレンズの焦点距離)÷(クローズアップレンズの焦点距離)になります。P950の場合は35mm換算で2000mmまでの望遠があるのですが、実焦点距離は357mmなので、倍率は最大で0.357倍まで上がるはずです。

ところで、クローズアップレンズは当然カメラレンズの外側に置かなければいけないのですが、上の写真で分かるように、P950はズーム最大でもレンズ筒は約200mmしか伸びません。組み合わせレンズを使って、実際にはレンズのないところにレンズがあるようにする仕組みを持っているようです。でも、このレンズ筒にクローズアップレンズをつけると、実焦点距離200mm以上は取り付けてもピントが合わないことになります。つまり、実焦点距離200mmがクローズアップレンズが取り付けられる限界になります。



実際にズームを変えながら撮影倍率を求めていったのがこのグラフです。やはり最大で35mm換算1000mm(実焦点距離178.5mm)あたりが焦点のあう限界でした。このグラフにはカメラのイメージセンサーのあると思われる位置からレンズ筒の先端までの距離を表す曲線と実焦点距離を表す直線も載せました。この二つの線の交差する点より焦点距離の短い側でしかクローズアップレンズは使えないことになります。丸と△は二回の実験をして求めた撮影倍率で、破線は上の式を用いて予想した直線です。倍率はほぼ予想通りになっていることが分かります。ついでに、以前報告した最短撮影距離で撮影したときの倍率も載せておきました。従って、クローズアップレンズを取り付けると、35mm換算1000mm程度までは拡大できることが分かります。



実際にスケールを撮ってみた写真がこれです。横側はトリミングをしていますが、縦側はそのままのサイズになっています。35mm換算200mmから1000mmまで変えていくと、確かに拡大はされていくのですが、800~1000mmではどうにもピントがあいません。それで、三脚に微動ステージを取り付けてもっともピントが合うようにしてみたのがこの写真ですが、やはりこれが限界でした。単レンズを用いているので、収差の影響が出ているのかもしれません。35mm換算200mmではレンズを取り付けたときとつけないときがほぼ同じ倍率になるので、実際に使えるのは200~800mmの範囲で、倍率的にはレンズをつけないときの3倍程度というところみたいです。

NIKON P950の最短撮影距離

2022-06-29 20:02:24 | カメラ
早朝の散歩はいつもNIKON P950を持っていきます。これは35mm換算で2000mmまでの超望遠が使えるので鳥を撮る時などにとても重宝しています。一方、虫などを撮ろうとするときは最短撮影距離が5mもあるので、少し下がって撮るべきかそれとも焦点距離を短くして撮るべきかいつも迷ってしまいます。焦点距離を短くすると近くで写せるようになるのですが、あまり拡大することはできません。それに、近づきすぎると虫は逃げてしまうし・・・。それで、焦点距離と最短撮影距離の関係を調べてみようと思って実験をしてみました。



この実験のために写真のような簡単な道具を用意しました。ブックエンドにスケールを取り付けます。そこから巻き尺を伸ばして距離が測れるようにします。椅子にカメラを置いて、カメラのセンサー位置あたりまでの距離を測ります。この距離で焦点距離が大きくなるようにズームしていき、オートフォーカスできる限界を探して撮影します。これを距離を変えて行います。スケールを撮影した写真から撮影倍率を計算します。



この結果をまとめたものがこの図です。青色が最短撮影距離、赤色が撮影倍率です。例えば、35mm換算の焦点距離2000mmでは最短撮影距離は6mで、そのときの倍率は0.048倍でした。この結果、焦点距離を短くすると、それに応じて最短撮影距離は確かに短くなっていきますが、倍率もやや減少していくということが分かりました。虫を撮る時はいつも500~1000mm辺りで撮影しているのですが、やや倍率は下がるもののそれほど悪い選択でもないという感じです。

写真から虫の大きさを推定

2021-06-20 09:36:08 | カメラ
今年の1月終わりに奈良県大和郡山市に引っ越してから、毎朝散歩するついでに、鳥や虫、花の写真を撮り始めました。以前のコンデジでは鳥がうまく撮れないので、Nikon P950とCanon SX70 HSという2台の高倍率ズームのコンデジを購入しました。虫については、以前から用いているNikon D7100のボディにAF-S Micro NIKKOR 85mm 1:3.5というマクロレンズを取り付けて撮っています。写真から虫の大きさが推定できないかと、以前から寸法測定用のテープを貼って撮ったりしていたのですが、虫の近くにテープを貼るのは面倒だし、時にはそのために虫が逃げてしまうこともあって、ときどきしか使っていませんでした。

撮った写真を整理するときにXnViewというフリーソフトを使っているのですが、写真のプロパティにあるEXIFという写真データを何の気なしに見ているときに、"focus distance"という項目が目につきました。ネットで調べると、どうやら被写体までの距離データのようです。これさえわかれば、これから倍率を出し、虫の大きさが推定できるかもしれません。それで、早速、"focus distance"が実際の被写体までの距離と一致するかどうかを調べてみました。



実験はこんな風に行いました。食卓用のテーブルの上に、カメラを両面接着テープで固定し、レンズ部分を木切れのスペーサで持ち上げて水平にします。ステンレスのスケールをブックエンドに両面接着テープで撮りつけます。テーブルの端には距離の目安に物差しを貼り付けておきますが、実際の距離はレーザー距離計で測りました。レーザー距離計の後端と物差しの後端をカメラの距離基準マークΦに合わせておきます。後は物差しをガイドにしてブックエンドを動かし、そのたびにレーザー距離計で示された距離を記録し、一方、カメラのファインダーを覗きながらピントをAFで合わせ、リモコンを使ってストロボをたきながら写します。最初はレーザー距離計を使わず、5 cmおきに物差しを見て距離を測っていたのですが、レーザー距離計を使うようになってからは1 cmおきに写真を写しました。



そうすると、例えば、こんな風な写真が得られます。この写真からImageJというフリーソフトを使って、スケールの10mmに相当する画素数をpixel単位で求めます。これと、カメラの仕様から、イメージセンサーの大きさが6000 × 4000 pixelで、23.5 mm × 15.6 mmであることを知って、それから撮影倍率を求めます。



こうして被写体までの距離に対して、撮影倍率を求めたグラフがこれです。全部で4回の測定をしたので、それぞれ色を変えて表示しています。これをEXCELの近似曲線で4次の多項式近似で線を描いたのが破線で示す曲線です。また、その時の式を表示しています。この式を用いると、被写体までの距離が分かれば撮影倍率が分かることになります。



次に撮った写真一枚一枚についてXnViewでプロパティを開き、その中のEXIFの中の"focus distance"を記録していきます。こうして得られた"focus distance"と、実際に測定した被写体までの距離を表したのがこのグラフです。ほぼ直線的に並んでいますが、よく見ると、実際の被写体までの距離が変化しても"focus distance"が変化していないことが見て取れます。この実験は被写体までの距離を1 cmずつ変えて測定したものですが、2-3cmの間は"focus distance"は一定の値で、それから急に変化するので、階段状の変化をしています。この結果を見て、最初はまずいなと思ったのですが、グラフを直線で近似してみると、ほぼ直線で表されているのと、その直線の傾きを± 5 %変化させた範囲(灰色の破線で挟まれた領域)内に全体がほぼ収まっているので、5%の誤差を含んで距離を推定できるということが分かりました。



このことを用いて、EXCELの表計算でこんなものを作りました。橙色で示した部分("focus distance"の値と画像から求めた虫のpixel数)を入力すると、虫の大きさと5%の誤差を与えるというものです。



実際に、6月9日にセイバンモロコシの小穂の写真を撮ったときに一緒にスケールを写していたのですが、そのスケールの10 mmの大きさを今の方法で推定してみることにしました。このときの"focus distance"は0.398107、10 mm分の画素数は966.671 pixel。これから計算すると10.03±0.50 mmとなり、かなりよく合っています。まあ使えそうな感じです。



被写体までの距離と撮影倍率が分かったので、ついでに、以前調べたようにレンズの焦点距離を求めてみました。式は f = LM/(M+1)2です。ここで、fは焦点距離、Lは被写体までの距離、Mは倍率です。こうして求めた焦点距離がこのグラフになります。AF-S Micro NIKKOR 85mm 1:3.5というレンズは内焦式といって、内部の組み合わせレンズの相対的な位置を変えて焦点位置を変化させるので、合焦時間は短いのですが、被写体までの距離を変化させると若干レンズの焦点距離が変わります。このグラフでもそんな傾向が見られます。一方、AF MICRO NIKKOR 60mm 1:2.8 Dというレンズは通常のレンズなので、被写体までの距離を変化させても焦点距離はほとんど変わりません。

久しぶりにカメラの実験をしました。思えば3-4年やっていなかったかなぁ。久しぶりにやってみると、なかなか面白かったです。