1991年に雲仙普賢岳で命を落としたカティアとモーリスのクラフト夫妻はそのキャリアを通じて184もの火山を調査してきた火山学者であり、この映画は彼らが“火山映画作家”であった事も描いている。1970年代から危険な火口、溶岩流にまで接近し、火山活動の壮大なスペクタクルを収めてきた映像がリマスターされている価値は高く、パイオニアとなった彼らを支えたのは死をも恐れぬ火山への執着と畏敬、地球主義的な思想であった(そこには戦後世代故の人間社会に対する諦念もあったかも知れない)。共にフランスで生まれ、共に火山に魅せられた2人の出会いはまさに“地質学的な奇跡”だった。記録映画の先駆者であり、炎のような愛によって結ばれた夫婦への敬意に満ちたドキュメンタリーである。
『ファイアー・オブ・ラブ 火山に人生を捧げた夫婦』22・米、加
監督 セーラ・ドーサ
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