「猿の見る夢」桐野夏生 2016講談社
『週刊現代』2013年08月10日~2014年09月06日号
主人公よりも周りの女に感情移入して、薄井を嘲笑する気持ちよさ。薄井が身勝手な行動をするたびに、この主人公を嫌いになるたびに気持ちよくなる。こいつはどんな罰を受けるの?って。うん、まるで中学生みたいに抑制が効かない、自分勝手な解釈と自己正当化。そんな薄井をだんだん好きになっていたりする。もっとやれ。と。夢見占いのおばさん(長峰)に対する思考と行動は、妻たちの気持ちを考えないことを除いて間違っていないし。長峰の存在って安部公房の「友達」みたいだよね。
相続の喧嘩はもう少しやり合って欲しかった。そして苦労して手に入れた相続財産をかすめ取られて欲しかったな。
先週読んだ「成功者K」のKと薄井は似ている。それだけに桐野先生の読ませ方のうまさが際立つね。
見ざる聞かざる言わざる、せざる。
薄井はせざるでござる。
結局『猿』って薄井のことなのか。「成功者としての人生」がその『見る夢』か。
それとも夢占いで長峰?
ああ、キーキー言っている愛人や妻や妹もか。社長、会長、秘書、みんなそうか。「それぞれの望み(夢)」はまるで猿の餌の奪い合い。ってか。
<セクハラとパワハラのセ・パ両リーグ>って、この本で知りました。
薄井が家を追い出されるところで、またデジャビュ。そこだけ読んだことがあるような、読んだことがあると前にも思ったような気がした。
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