熱帯果樹写真館ブログ

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あなたはだあれ? タロガヨ

2006年11月06日 | 柑橘類
 沖縄県の秋の味覚である在来柑橘類のタロガヨを紹介したいと思います(写真1)


写真1:タロガヨの果実


 タロガヨは、タルガヨ(タルガヨー)或いはマーサクニブー(美味しいミカンの意)とも呼ばれる沖縄県の在来柑橘類です。
 タロガヨという名称は、タルガヤラ(何かなぁ?の意)に由来すると言われています。
 これは、タロガヨが他のよりメジャーな在来柑橘類であるカーブチーでもない、オートーでもないことから「あなたはだあれ?」みたいな感じでタロガヨと呼ばれる様になったためです。
 タロガヨの扁平果はカーブチーに、扁球果はオートーに似ていますので、この名称は言い得て妙なのかもしれません。

 しかしタロガヨは、田中長三郎著「琉球の柑橘(琉球柑橘豫察報文)」によりますと、


(前略)
 本種もまた田中諭一郎氏により独立園生種と認められ、Citrus Tarogago Hort. ex Y, Tanaka として発表されたものである。(「日本柑橘図譜」第2巻422頁)
(中略)
 考説 完熟の標本を見ないから確なことは云えないが、葉翼の殆どない点、果端の凹入少く、凹環もなく、油胞の非常に細密な点、砂じょうが稍々細かく、全体平行網状をなす点、砂じょう尖端が往々2岐するものがある点、果肉は始めから稍々濃厚な点等、カブチーとオートーの中間型と称し難い個条が多々あり、独立種とする田中諭一郎氏の鑑定は当を得ていると思う。
(後略)



 と記載されています。
 タロガヨも柑橘類分類の大家から見ると、個性ある独立種と判断された様です。

 タロガヨは沖縄県においてもマイナーな柑橘類だと思います。
 沖縄県中央卸売市場の品目取扱情報が掲載されている「市場年報」にはカーブチー、オートーは独立して月別取扱数量等が掲載されていますが、タロガヨについては記載がありません。
 また、「特産果樹情報提供事業報告書 マンダリン類1」にはタロガヨについて、


(前略)
 タロガヨは、昭和30年代にカブチーの次に収穫される早生みかんとして普及が図られたが、カブチーに比べて特にすぐれた点がなかったこともあって殆ど普及しなかった。
(後略)



 と散々な評価が書かれています。

 とは言われるものの、タロガヨとカーブチーを食べ比べてみると、タロガヨの方が果実が大きい、タロガヨの方が果皮が薄いため可食部割合が多い、タロガヨの方が酸味が強く味が濃く感じる等、タロガヨにはタロガヨの良さがあると思います。

 タロガヨを持ち上げたり貶めたりと紆余曲折した感がありますが、その評価は皆様自信で判定していただくためにも、タロガヨをお見かけの際は是非ご賞味ください。

○参考資料
 ・「特産果樹情報提供事業報告書(マンダリン類1)」.1995.(財)中央果実生産出荷安定基金協会.
 ・「琉球の柑橘(琉球柑橘豫察報文)」.田中長三郎.1957.琉球政府經濟局.
 ・「平成17年 市場年報」.2006.沖縄県中央卸売市場.