熱帯果樹写真館ブログ

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露地パッションフルーツの花芽形成時期が早い?

2007年02月21日 | パッションフルーツ
 旧正月(今年は2月18日~20日)を終えた今日この頃。
 そろそろ沖縄県北部地域は各地で芽吹きが始まり、春が感じられる季節となっています。

 この季節、私が特に気になるのは露地栽培のパッションフルーツです。
 こちらは新芽ではなく花芽が確認できますが、今年は2月21日に初花芽を確認しました(写真1)。


写真1:2月21日に確認した露地パッションフルーツの花芽


 今年のパッションフルーツ花芽は少し早めに確認できた様な気がしますが、毎年のデータを記録していないので早いのか遅いのか正確なことは言えません。
 とりあえず状況証拠から真実が見いだせないか探ってみたいと思います。

 パッションフルーツの花芽形成と云えば、温度と明期の長さの条件を満たせば花芽形成を行うことが知られています。
 温度で云えば日中温度が20℃以上(表1)、明期の長さで云えば11時間/日以上(表2)が花芽発生の条件となっています。

表1:日中温度がパッションFの花芽出現率に与える影響

(「小笠原のパッションフルーツ」.東京都小笠原亜熱帯農業センター.より抜粋)


表2:パッションFの明期時間と花芽発生

(「小笠原のパッションフルーツ」.東京都小笠原亜熱帯農業センター.より抜粋)


 今年の2月の気象条件は、パッションフルーツの花芽形成の条件を満たしていたのでしょうか?
 また、平年値と比べ、早めに花芽が形成される条件が満たされていたのでしょうか?

 まずは日中温度(最高気温)から探ってみたいと思います。

 沖縄気象台のサイトでは、平年値(1973年~2000年の平均値)及び各年の名護市の地上気象観測統計資料を閲覧することができます。
 そのデータを用いて今年と平年値の2月最高気温を日毎データを見ると、平年値の2月最高気温では20℃以下の日が続くのに対し、今年の2月最高気温は2月5日以降ほぼ20℃以上となっていることがわかりました(図1)。


図1:2007年と平年値の2月最高気温の推移
(沖縄気象台発表データより抜粋・加工)


 次に今年2月の明期時間ですが、国立天文台 天文情報センター 暦計算室のサイトで那覇(沖縄県)の日の出、日の入りの時刻を調べ算出することにしました。
 明期時間が11時間以上になったのは、2月3日以降となっています(表3)。
 また、新暦では同月日における日の出、日の入り時刻は毎年ほぼ同じです。

表3:2007年2月の那覇(沖縄県)の明期時間

(国立天文台 天文情報センター発表データより抜粋・加工)


 以上のことから、パッションフルーツの花芽形成に必要な気象条件は、明期時間は2月3日以降、日中温度は2月5日以降は満たされていたことになります。
 両条件が満たされて約2週間後に花芽形成が確認されたことになります。

 日中温度が平年より高かったため、今年は花芽形成が早めに行われた可能性はあります。
 しかし、これからも花芽形成時期を確認して知見を深めたいと思います。

○参考資料
 ・「小笠原のパッションフルーツ」.2002. 東京都小笠原亜熱帯農業センター、東京都産業労働局農林水産部.

○参考サイト
 ・「沖縄気象台
 ・「国立天文台 天文情報センター 暦計算室