2012年12月上旬、渡名喜島に1泊2日で行って来ました。
渡名喜島は、那覇の北西58kmの洋上(北に粟国島、南東に慶良間列島、西に久米島があります)に位置します(図1)。
写真1.渡名喜島の位置
那覇市(泊港)から片道2時間弱、料金4,520円(往復)で行くことができます(渡名喜島へのアクセス方法)。
渡名喜島の集落風景は、他の島にはない魅力があります。
集落に入り、まず目に付くのは幅2.5m程度の細い路地です。
地面は舗装されておらず白い砂が敷き詰められています。
その両脇には低いブロック塀、その内側にフクギの屋敷林が連なっています。
集落内には赤瓦の古民家が点在しています。
さらに、夜になると幻想的な光景を作り出すフットライト群。
時間をかけて作られたものに新しいものを融合させた渡名喜島の夜景は独特の趣があります。
この光景は、都市環境デザイン会議(JUDI)主催の、美しい景観づくりに贈られる第1回パブリックデザイン賞のブロック賞に選ばれています(琉球新報;2011/11/22)。
さて、ロマンチックなデートスポット話はこの辺にして、当ブログらしく熱帯果樹の話をしましょう。
渡名喜島で気になる果樹と言えばリュウキュウガネブです。
リュウキュウガネブとは、国内では亜熱帯地域の沖縄、奄美地方に自生している南方系の野生ブドウ(所謂ヤマブドウ)です。
ガネブとは九州の方言でブドウを意味します。
渡名喜村では、耕作放棄地再生利用緊急対策交付金を利用して「リュウキュウガネブの試験栽培」が行われています。
これまで、リュウキュウガネブは沖縄県内の様々な島で自生しているにも関わらず、果汁が低糖度で高酸度であることに加え、果房重が100g以下の低収量であるため経済的な価値は見出されていませんでした。
しかし、近年リュウキュウガネブは、以下の様な特性から注目されています(永田.2003)。
・国内のヤマブドウの系統では比較的果房が大きくなるものや4倍体がある。
・自生地では常緑で無限着果性を示す。
・ポリフェノール等の機能成分が豊富である。
・耐暑性、耐病性、耐湿性に優れている。
・酒質資源として有望な遺伝資源である。
リュウキュウガネブを遺伝資源として利用した例として、香川大学の望岡亮介教授らがリュウキュウガネブの野生種を種子親、「マスカット・オブ・アレキサンドリア」を花粉親にして交配を行い、「香大農R-1」という醸造用品種を育成しています(望岡.2012)。
他にも様々なヤマブドウを育種親とした系統(品種)は農文協から出版されている永田勝也 著「新特産シリーズ ヤマブドウ」に紹介されています。
しかし、沖縄県でリュウキュウガネブ(ヤマブドウ)を産業化するには、系統(品種)の選抜の他に台風対策を含めた栽培方法の確立や加工品を販売するのであればその開発、販路開拓等が必要です。
渡名喜島の試験圃場は、それらの第一歩となるかもしれません。
集落付近の試験圃場を訪れると、露地の地植え栽培(写真2)やポット栽培(写真3)が行われていました。
写真2.リュウキュウガネブの地植え栽培
写真3.リュウキュウガネブのポット栽培
また、今年の夏は台風で大きな被害を受けたであろう株で出蕾が見られました(写真4)。
写真4.リュウキュウガネブの蕾
いつの日か、沖縄県の果樹特産品にリュウキュウガネブ(ヤマブドウ)が加わることを期待しています。
最後に、渡名喜島の夜景は夜明け寸前も美しいです(写真5)。
写真5.渡名喜島のフットライト群(夜明け寸前)
〇参考文献
・「新特産シリーズ ヤマブドウ」.永田勝也.2003.農文協.
・「知っていたい、こんな品種(68) 亜熱帯原産野生ブドウ「リュウキュウガネブ」」.望岡亮介.2012.果実日本;第67巻9月号;pp.13-16.日本園芸農業協同組合連合会.
〇参考サイト
・「渡名喜島の概要」
・「 琉球新報;2011/11/22:伝統的集落を足元灯で演出 渡名喜島にパブリックデザイン賞」
・「渡名喜島へのアクセス方法」
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