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多分ですね、僕が、一人称で、「僕」を使うことが恥ずかしくなくなったのは、この小説の影響が大きいと思います。
このブログのどこかに以前書いたと思うのですが、この小説が流行った時、僕も早稲田に通っていて、まさに早稲田界隈に住んでいたので、主人公のワタナベ君がいったグリーンピースの入ったオムレツが美味しいお店とか、永沢さんとワタナベ君が住んでいた、目白の和○塾の寮とか、新宿歌舞伎町のショットバーとか、さまざまシーンが、読んでいて、まさにありありと現実のものとして感じられ、ひしひしと身に沁みてしまったのです。
もう少し詳しく言うと、当時、僕は、早稲田鶴巻町の安アパートに下宿していて、となりの部屋に、同じ学年同じ学部のそれもワタナベ君と同じ神戸出身の同級生がいました。彼とはとても仲が良くなりました(今では、彼は、某有名PC雑誌の編集長ですが・・・)。彼は、原作者の村上春樹のお父さんが国語の教師を勤める高校の出身で、実際に神戸の実家に遊びに行ったとき、神戸のとあるバー(J's Barのモデルといわれる)にも連れて行ってくれました。そして彼とは、高田馬場や早稲田にあるビリヤード場で、よく玉突きをして遊びました。そんなこともあり、当時の自分の生活と主人公たちの暮らしが共通点が多く、なんとなくこの小説の世界と現実の区別があいまいになっていき、さらに、当時の人間関係やら個人的な悩みやらと、この小説の中の出来事が不思議と一致していると勝手に感じてしまっていたりして、この小説を学読(学生読書室)で借りて読み終わってから一週間くらい、現実と小説の間の世界をさまよっていました。一週間、大学へ行けなかったのを覚えています。
今考えてみると、村上春樹は神戸出身で、早稲田のOBだったことを考えると、当然といえば当然だし、それに大学というところは、学校の雰囲気や、学生運動のスタイルなども、村上春樹が過ごしたポスト全共闘時代と、僕の過ごしたバブル時代とも、大して変わってないということなんだろうなあ、と思います。
それに、大学生くらいの若者が抱えている悩みというのも、だいたい似たようなものだったということでしょうか・・・。
それでも、ワタナベ君のセリフで、今も心に残っているのをひとつあげるとすると、「いつまでも同じところをグルグルまわっているような気がするんです。」と永沢さんに言うところです。まさに青春の彷徨・・・(今だに彷徨しているような・・・(^_^;))。
さて、この小説が、「青いパパイヤの香り」とか、「夏至」とかで有名なトラン・アン・ユン監督によって、映画化されるということで、非常に興味深く思っています。詳しくは「ノルウェイの森」公式サイトに出ています。
それで、主人公の、「ワタナベ君」が、松山ケンイチなのはいいとして、「直子」が菊池凛子なのは、イメージじゃない、ミスキャストだ!という声が大きいようですが、はたしてどうでしょうか?彼女は、「バベル」の衝撃が大きいので、そのイメージを打ち破ることができれば成功するかもしれません。
ほかのキャストも、おおむね判っているようですが、僕には、なじみのない方ばかりなのでコメントのしようがありません。YOUTUBEに、イメージビデオみたいなのがありましたので、載せておきますね。
トラン・アン・ユン監督に期待したいのは、しっとりとした色彩美と、主人公たちのガラス細工のような繊細な感情表現ですね。この二つが表現できれば、映画としてはうまくいくと思います。公開は12月11日だそうです。田舎の映画館で独りで観ようかな。