テツの部屋B

アメリカ留学中の見聞録→日本国内の山登り記録+日常の覚え書

Recent Discoveries Seminar Series

2010-01-21 | 研究
今日は、アメリカに来て初めて、ラボ外での口頭発表を行った。





発表したのは、Recent Discoveries Seminar Seriesと呼ばれているDivision of Biochemistryの定期イベントで、毎週1人もしくは2人が、最近の研究成果を発表する。発表時間は最大1時間で、2人の場合は30分(including discussion)となる。今回は、当初2人が発表する予定だったが、直前にもう一人がキャンセルしたため、1時間話しても良いと言われた。

この発表については昨年の9月にチャックに打診された。その時点で主要なデータは揃っていたし、その後ポスター発表を行ったりしたので、本来なら“楽勝”の発表のはずである。しかし、実際にはそうはならなかった。前々日に完成させて、H山さんにリハーサルを見てもらうつもりが、完成せずキャンセル(H山さん、その節はすみませんでした!)、前日のラボ内リハーサルはぐだぐだで、チャックは呆れ顔だった。これは、しっかり反省せねば、という訳で、特に問題だった点を思い出してみる。

1、 スライド間をスムーズにつなぐための因果関係が希薄だった。

日本語で発表する場合、スライド間のつながりが多少悪くても、言葉でごまかすことができる。しかし、英語の場合、今の自分には、ごまかすだけの英語力がない。話が止まってしまったり、アーとかウーとかいううめき声でつないでしまい、ただでさえアメリカ人には聞き取りにくい発表を、ますます悪化させてしまった。
そこで、日本語での発表以上にスライド間の因果関係をはっきりさせてみた。

こういう実験事実がある。→この結果からこのようなことが分かった。→新たにこういう疑問が生じた。→それを明らかにするためにこういう実験を行った。→こういう結果が出た。→この繰り返し。

これにより、説明内容に必然性が生じたため、話しやすくなった。同時に、次のスライドに移る前に余裕が生じた。

2、 普段使用しない単語がすぐに出てこなかった。

特に生物学的背景を説明する際に、普段めったに話すことがない単語(自分の場合、inherited neuropathy、action potential propagationなど)を使用する。これらの単語がぱっとでてこなかった。これに関しては、反復練習で克服するしかないので、そうした。スライドにも実際に使用する言葉を書き込んで、いざというときに対処するとともに、自分のまずい発音により、聴衆が聞き取れなかった場合に備えた。

3、 話すスピードが遅い。

普段よく話をしているアメリカ人であれば、多少早口で話しても理解してくれるが、普段あまり話さない人に対して、調子に乗って早口で話したりすると、たいてい”Pardon?”と聞き返される。疑う余地なく、発音が悪いのだ。したがって、口頭発表では、発音とアクセントに気を配って、はっきり話すように気をつけた。しかし、この結果、話す速度が遅くなってしまう。この問題は、今のところ棚上げにしている。あせって聞き取り不可能な英語を話すよりは、ゆっくりでも理解できる英語を話したほうがましだと考えるからである。


さて、本番の発表はまずまずであった。1時間以内に終わらせれば良かったので、時間に関するプレッシャーがなかったことはラッキーだった(実際には、発表自体は20分程度で終了した)。現状の英語力では、これぐらいできれば御の字であろう。日本語、英語を問わず、発表で最もプレッシャーがかかるのは質疑応答だ。今回は、2人の生物系P.I.から質問を受けた。二人目の質問者は、背景の神経生物学の専門家で、質問というよりは、自分の最近の成果などを話してくれた。こういう場合の受け答えは大変難しく、結局建設的なやり取りができなかった。後から考えると、通常アメリカ人は、こういう場合、自分の知っていることを羅列することが多い(しかも、たいていマシンガントーク)。しかし、想定していない内容を英語でスムーズに話すには、まだまだ修練が必要だ。チャックは、前日の発表があまりにひどかったせいもあり、すごく良い発表だったと大喜びで褒めてくれた。素直に受け止めたいところだが、自分の年齢とキャリアを考えると、この程度のことはできて当たり前なので、複雑な心境だ。

発表には、日本人のポスドク仲間が何人か来てくれた。前日まで、あまりに完成度の低い発表だったため、案内メールを送ったのは、発表当日の朝だった。それにも関わらず聴きに来てくれた皆さん、ありがとうございました。
コメント
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