「電熱器」の付いたシャワー

10年以上も前、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロに行った時の事。当時のリオの治安は悪く、ホールドアップしても撃ち殺されて、お金を奪われるという事件が多発。犯人は、警察に「賄賂」を払って翌日放免。3日間で50人以上が射殺される町だった。インフレ率も、年間2000%、つまり、20万円のテレビが一年後には、20倍の400万円になるという状態。サラリーを貰った市民はすぐ、スーパーに行って、お金を商品に替えていた。

そんな、外国人が昼間でも、街中を歩くのは怖いという状況で、一人旅だったので、一人で、呑気に歩いていた。リオの街でもいちばん危険地帯と言われる「路面電車の終点」の地区にも行った。そこで泊まった一泊1600円位のホテルでの話。

そのホテルは、現地の人に教えて貰い、夜中に行ったのだが、「満室」と断られ、歩いて五分のところに、「姉妹ホテル」があると聞き、びびりながら、教えてもらったホテルにたどり着いた。ホッとして、チェック・イン。もちろん、安ホテルなので、フロントでも英語は通じない。ポルトガル語だ。何とか、部屋に案内して貰い、シャワーを浴びようと思った。

このシャワーが面白い構造をしていた。シャワーコーナーの壁に取り付けられているのだが、そこのシャワーの水の出るところに、電線がついているのだ。そして、スイッチが。つまり、シャワーの、水の出る手前のところに、「電熱器」があって、スイッチを入れると「電熱器」が熱くなり、そこを通った水が温水になる仕組みなのだ。
しかし、僕の部屋のシャワーの「電熱器」は壊れていた。冷たい水を思いっきり浴びた僕は、急いで体を拭き、フロントに文句を言いに行く。言葉が通じないから、部屋まで連れて来て、シャワーを出して、身振り手振り説明。フロントのおじさんもやっと、意味を理解した様で、僕を共同のシャワー室に連れて行ってくれた。そこにも同じ構造のシャワーがあり、「生温いお湯」のシャワーを無事浴びる事ができた。「電熱器」を一瞬通っても、そんなに温かくなるはずもなく、やはり、安ホテルは安ホテルだなあと実感した。
そして、硬い硬いベッドで、眠りについた。