日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

薙刀 飛騨守氏房

2016-08-24 | その他
薙刀 飛騨守氏房


薙刀 飛騨守氏房

 若狭守氏房の子で戦国時代末期から慶長頃を活躍期としたため、時代背景から武骨な造り込みを特色とする刀工の一人。美濃刀工で、後に尾張に移住している。今回は薙刀。刃長一尺八寸五分、反り七分九厘、元幅一寸二厘、物打幅一寸九厘、棟重ね二分三厘、鎬重ね二分四厘、腰元に薙刀樋を掻いて中間から上の棟を削ぎ、鋒辺りを再び厚く仕立てている。いかにも実戦の道具だ。手頃な寸法の柄にこの打ち物を装着し、激しく振り回されでもしたら、二尺七寸ほどの大太刀でも容易には斬り込めない。薙刀は、頗る実用的で破壊力のある武器だ。そもそも、中国の三国志などに登場する蛮刀、青龍刀がこの源流であると理解している。物打辺りに反りのある武器は、截断に適している。この形が古くから存在しており、日本刀に採り入れられ、截断するための反りのある日本刀が生まれたと筆者は考えている。反りを無理に蕨手刀と結びつける必要はない。さてこの薙刀は、適度な反りがついて扱いやすさも格別。板目鍛えの地鉄は戦闘の道具ながら傷もなく綺麗に詰み、地沸も前面に付いてしっとりとした質感さえ感じられる。刃文は湾れに互の目が交じり、小足が入り、帽子は湾れ込んで先小丸に返るも、先に沸が付いて浅く乱れる。小沸主調の焼刃は、もちろん匂が明るく、刃中に流れ込むほつれに沸が絡んで小足に絡み、刃先近辺には淡い葉が乱れ舞う。茎の錆色も叢がなく、鑢目も鮮明で大切に伝えられたことが分かる。武器ながら美しい出来である。□