日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 武州下原廣重 Hiroshige Katana

2016-08-29 | 
刀 武州下原廣重


刀 武州下原廣重

 廣重は照重の分家。この刀は江戸時代に入った寛永頃の作。刃長二尺三寸七分、反り六分半。時代に応じてちょっと長目。総体は尋常な印象。地鉄は詰んだ小板目肌と板目の交じり合ったもので、ザングリとした風がある。こうしたところにまだまだ戦国の気風が残っている。即ち、現代の我々は寛永頃には世も比較的安定していて「江戸時代」という認識だが、この同時代にはまだ世の中がどのように変化するか、また動乱の時代に戻るやもしれぬとの見方があった。だから武士は武器にも備えを怠っていなかった。この刀は正に使うことを考えたもの。刃文は互の目だが形状が不定形で、特に物打辺りは乱れが強くなっている。沸主調の刃中にはほつれ掛かり、砂流し流れ、所々に金線が走っている。相州伝の一。「なんだ下原鍛冶か」などと、軽く評価する方もいるようだが、ここに紹介したような、優れた作を遺している鍛冶集団である。