いろはにぴあの(Ver.3)

ピアノを趣味で弾いています。なかなか進歩しませんが少しでもうまくなりたいと思っています。ときどき小さな絵を描きます。

国際音楽祭NIPPONレポその2

2013年02月16日 | ピアノ・音楽

 そして第2弾は音楽祭出演者によるマスタークラス。ピーター・ウィスペルウェイ氏による室内楽クラスと諏訪内晶子さんによるヴァイオリンクラスで、私はウィスペルウェイ氏による室内楽クラス2クラスと諏訪内さんによるヴァイオリンクラス1クラスを聴講した。ウィスペルウェイ氏の室内楽クラスではショパンのチェロソナタとシューマンのアダージョとアレグロだったのですが、ピアノを弾く人にとっても参考になる内容でした。短い音ほど面白い、とか、フレーズの終わりの扱い方は非常に大切だ、とか。チェロにもピアノにも共通してアドバイスしていた内容が終わりの音は決して強くなりすぎないように、そのためには気を抜かないこと。気を抜くと尻もちになることも多いという話もされていた。弓をはじからはじまで使う、ということは弦楽器を弾く人にとっては楽器が鳴るためにも大切なチャレンジだったのだ。音程を外さないとか音を間違えないために、そして体の硬さもからんで弓の一部だけ使ってしまう、というケースが多いのだが。ピアノで言うと弦を最大限に鳴らすような動きをする、ということにつながりそうだ。ちなみにその後のトークセッションで、ウィスペルウェイ氏はあのジャクリーヌ・デュプレの師であるウィリアム・プリースの薫陶を受けたという話をされていた。

 そして第3弾が今日。横浜美術館での美術館コンサートと音楽祭最終演奏会のアンサンブルコンサートでした。美術館コンサートはロビーで2回ありました(しかも無料)江口玲氏のピアノソロ、そして諏訪内晶子、ピーター・ウィスペルウェイ、江口玲のトリオだったのですが、ときどき開く自動ドアの間から入ってくる冷気の冷たさを感じた以外は非常に充実、本番前なのにこんなに興奮してしまっていいのと思えるぐらい見事な内容でした。本番になかったプログラムは江口玲氏のピアノソロで以下の内容。

ルービンシュタイン ペテルブルグの夜会よりロマンス 作品44-1

シューマン トロイメライ 作品15-7

リスト バラード2番 ロ短調

1番目の曲の作曲者であるルービンシュタインはショパンの演奏などで有名なポーランドのアルトゥール・ルービンシュタインではなくて、へ調のメロディー で有名なアントン・ルービンシュタイン。このペテルブルグの夜会よりロマンスもメロディメーカーのルービンシュタインらしくささやかながらも優しく心あらわれそうな曲であり、演奏であった。そしてその後の二曲。表現力の豊かさを表してくれた。リストのバラード2番は最近聴く機会が多いような気がするのだが、まさにダイナミックでドラマチック。江口氏のピアノのスケールの大きさを実感。扉の開閉もこの瞬間は気にならなくなっていた。 そしてその後は諏訪内晶子、ピーター・ウィスペルウェイ、江口玲のトリオによる、演奏会本番曲3曲が演奏されたのだが、これが大当たり、ちょっと朝早くても行ってよかったという内容だった。演奏者の呼吸や演奏の臨場感、楽音そのもの+αが手に取るように伝わってくる上にその多彩さが半端ではなく、本番前なのに私の気持ちとしてはもうすっかり出来上がってしまっていた。特にラヴェルのヴァイオリンとチェロのソナタには仰天。曲自体の妖しくなまめかしそうな、それでありながらどことなく野生味のある雰囲気と挑むような弦楽器同士の掛け合いにぞくぞくさせられっぱなし。特にウィスペルウェイ氏のチェロの音域の広さとダイナミクスの大きさ、技術の巧みさには魂を奪われぱなしだった。彼の使っているチェロはピッコロチェロといい、高い音域も出ており、チェロの音域がここまで広くていいのだろうかと思った、もちろんずんずん響く低い音域もしっかり出ており楽器全体が鳴りまくっていた。こんなにすごいものを本番前に聴いてしまっていいのだろうかという想いもよぎってきた。もう一度聴けるなんてなんて贅沢で幸せなのだろうと思いながら会場に。

 そしてみなとみらい大ホールでのアンサンブルコンサートのプログラムは以下の通り。

ブラームス ピアノ三重奏曲第1番 ロ長調 作品8

ラヴェル ヴァイオリンとチェロのためのソナタ

メンデルスゾーン ピアノ三重奏曲第1番 ニ短調 作品49

 当然だが美術館よりもフォーマルな雰囲気、しかも大ホールであったのもあり舞台からの距離は一気に遠ざかり美術館で感じられた臨場感が感じにくくなっていた。2階席だったがもっと近い席をとればよかった。(それでも今回はちょっと奮発したのだがそうするのだったらもっと方法があった気がしている)ブラームスのピアノ三重奏曲、第二楽章に非常に心惹かれた。残念なことに何がよかった、と今は具体的に言えないのだが、この第二楽章をもう一度頭の中で再現できないだろうかという想いがある。

 ラヴェルのヴァイオリンとチェロのためのソナタは美術館で聴いたから衝撃的な感動は少しなくなっていたが、それでもすごい演奏だったと思う。曲自体の力もあると思うが、弦を解放し表現力の限界に挑んでいたのが遠くにまでしっかり伝わってきた。音の鳴らし方弓の動かし方も多種多様、ときには楽器本体に弓がぶつかったりもありなのだが、この曲のここではこう来るしかないだろうというか。美術館でのウィスペルウェイ氏のこの演奏にはまってしまった私だが本番でもその勢いはとどまることを知らず。もっと近くで聴きたかった。

 そして個人的にもっとも馴染みがあり楽しみにしていたメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番。第1楽章の出だしで江口氏のピアノに誘われてウィスペルウェイ氏のチェロの語りが登場、どろどろと地の底を這いまわるような世界を。ピッコロチェロではなくてファゴットチェロかと思えるような感じ。長調部分に入り浮き立つ気持ちに。気持ちを奪われたまま大好きな第2楽章へ。出だしから江口氏のピアノ大活躍、くっきりとしたフォルムでありながら甘く官能的な音楽。あまりの美しさにとろけそうに。そして弦楽器の壮絶に美しい重奏が加わって夢の世界に。そして第3楽章のヴァイオリンとチェロとの掛け合いが面白かった軽やかな踊りを楽しんだ。アグレッシブな世界が作り上げられていた。そしてジプシー風の激しい出だしが印象的な第4楽章に突入。激しい部分もよかったのだが、個人的には途中で登場する光がさす部分に非常に心惹かれた。高貴で包み込むような音色でチェロで歌い上げられピアノが続いたあの瞬間が。コーダにも登場したこの光、第2楽章に次いで印象に残り帰り道もその部分がロールバックしていた。すごかったなあ。

 ぐいぐいアンサンブルを引っ張り、表現力の豊かなチェロを聴かせてくれたウィスペルウェイ氏のバッハの無伴奏のCDを購入しサインをしてもらおうとおもったものの、サイン会は人がたくさん並んでおり帰りが遅くなりそうだったので今回は並ばずに帰宅。(実はもう一度聴きに行くのです、ふっふっふ。期待大。)表現ということについて多くのことを教えてくれた気がした。

 演奏もでしたが情報を教えてくれご一緒できた友人にも深く感謝。話題の豊富さと深さ、そして忙しい中でも時間を作り横浜に通い続けた熱意とバイタリティに脱帽でした。


国際音楽祭NIPPONレポその1

2013年02月16日 | ピアノ・音楽

 先週の連休からみなとみらいホールに三度通った私。国際音楽祭NIPPONという音楽祭の開催地が横浜と仙台であることをtwitterからの情報で知り貴重なチャンスだとばかり出かけた。

 先週の土曜日第1弾は大ホールにてエサ=ペッカサロネン氏によるレクチャーとシンポジウム、演奏会のリハーサル、エサ=ペッカ・サロネン氏指揮、フィルハーモニー管弦楽団、曲によってはヴァイオリンソロの諏訪内晶子さんが加わるコンサートだった。曲目は

ベートーヴェン 劇付随音楽「シュテファン王」作品117序曲

シベリウス ヴァイオリン協奏曲 ニ短調作品47

シベリウス 交響詩「ポホヨラの娘」作品49

サロネン ヴァイオリン協奏曲(日本初演)

 サロネン氏のタクトから流れる音楽は多彩で非常に豊か、タクトの先から流れ出る音楽は生き生きとしていて生命力に溢れていたものだった。楽器の使い方も実に巧み。金管木管ハープ打楽器弦楽器、それぞれの楽器がすべていい味を出ていて音楽で表せるものはここまで多彩で深かったのだと感じさせるものだった。特に後半に繰り広げられた心湧き立たずにはいられないポホヨラの娘。そしてサロネン作曲の楽器の機能総動員の想像力の宝庫のようなヴァイオリン協奏曲。サロネンのヴァイオリン協奏曲は短い第二楽章の究極的なバイオリンと背景のオケ、第三楽章の多様な打楽器を用いた激しい躍り、そして別れの第四楽章。コーダに近いところのバイオリンソロにたまらなく泣けそうなところがあり、印象深いものだった。その前のシンポジウムで話題になった、クラシック音楽と現代音楽についての定義づけがよみがえってきた。シンポジウムに同席していた西村朗氏の話によると、クラシック音楽は古い音楽というわけではなく、古くても新しくても伝統的に受け継がれた様式を守っている音楽のことを指し、いわゆる現代音楽と言われるジャンルも新しい音楽というわけではなく、第二次大戦後に使われた前衛的実験的な音楽のことを主にさす、と。サロネン氏も異種のものを採り入れることについて興味深い話をしていた。もし異種のものを採り入れたとしても作曲家は自分だけの有機的なものを産み出さなければならないという闘争がある。つまり一音一音の吟味から始まる職人的な仕事だと。その作曲家、そして音楽つくりのプロとしての彼の成果が形となってあらわれたものが今回の演奏だったのではないかと思った。サロネンという指揮者とフィルハーモニー管弦楽団というオケ、この日まで知りませんでしたがよき指揮者&オケだと思った。(主人も聴きに行ったのだが、よかったと言っていた。サロネンのヴァイオリン協奏曲も面白いと)曲も少し聴いたことのあったシベリウスのヴァイオリン協奏曲以外はまったく知らない曲ばかり、新鮮な空気が入り貴重な出逢いのひとときだった。