ピアノ以外の音楽、そして指揮者、しかも過去の指揮者については詳しくないのですが、ジョージ・セルという指揮者を固有の指揮者として意識したのはこの私にしては早い方かもしれません。それでも長年のファンの方たちからみたらにわかに聴き始めた私がここに採りあげるのはおこがましいのも十分に承知であり、その上あまりにもつたない感想なのですが、それでも印象に残ったものは残しておきたいので書こうと思いました。私のセルとの出会いはあるサイトでした。いにしえのよき演奏を公開したあるサイトで、ジョージ・セルにほれ込んだ筆者が並外れた透明感を持つ演奏だと大きく採りあげていて、こんなにすばらしい指揮者の演奏なら聴きたいと思い、無料でありながらもそのサイトの音源を聴かせていただいていました。そしてtwitterでもセル専門のアカウントを作られる方もいらっしゃるぐらい、クラシックファンに定評のある指揮者なのだということを知り、今度はCDを購入して本格的に聴いてみたいと思うようになりました。
そして第一号に購入したのが、実は、セルにとっては最後の音源でもあった、1970年の来日時の東京公演でのライブ演奏である「LIVE IN TOKYO 1970」ジョージ・セル指揮、クリ―ヴランド管弦楽団による演奏という有難くそして畏れ多さも感じるようなラッキーなものでした。(実はY市の中古レコード店に置いてあったのです!そのときはそこまで感じていなかったのですが今となっては運命的な出逢いだったと思っています)ソニーの京須氏によるCDの解説によると、1970年の来日時には健康状態が思わしくなかったセルでしたが、音楽への真摯な取り組みは変わらず、殆ど観光はせず一にも二にも音楽、オベロン序曲でフルートかオーボエか、メンバーが一人足りないことに気付き団員が寝過ごしたということに判明すると「クビだ、帰国させろ!」と劣化の如く怒ったという、真摯でストイックな姿勢だったそうです。生涯最後の”初演作品”でもあったという「君が代」の試奏のあと、テンポの当否をしきりに周囲の日本人にしきりに問い、譜面を穴があくまで見ていたということでした。
このCDはその来日公演の中の、東京公演初日のプログラムで、音源自体もしばらく不明になっていたものだそうです。拍手も入っていてライブ感にあふれています。
全体的に、とても濃密な演奏です。楽譜をとことんまで見通し深く厳しく追求したからこそ出せる音があつまっていて凄かったです。この演奏を生で聴いた方たちがうらやましくなる、そんな演奏でした。ぴしっとのりをつけてアイロンをかけた、楷書のようなしまり、曲の隅々まで見通し追求したような密度の濃さが感じられました。
CDは2枚あり、下に書く1枚目とともに、2枚目にはシベリウスの交響曲第2番とベルリオーズのラコッツィ序曲があるのですが、今回は1枚目の感想を書くことにします。(ベルリオーズは言うまでもなく、有名なシベリウス2番を聴いたのも今回が初めてだったので、曲そのものへの感想になってしまいそうな気がして今回は避けました)
C.M.v.ウェ―バー 歌劇「オベロン序曲」
「オベロン、または妖精王の誓い」という全3幕のオペラで、台本はヴィーラントの叙事詩「オベロン」の英訳をもとに「夏の夜の夢」と「テンペスト」の内容を付け加えたもの。結核に侵されていたウェーバーが自分の死期を悟り、15ヶ月の速さで作られ、絶筆となった作品。そしてこの序曲がもっとも演奏されています。
冒頭はホルンでしょうか、厳粛な感じの始まり。その後弦楽器そしてフルートと思える管楽器が絡み合い、妖精がささやきはじめます。そして突然どんとなり、美しくわくわくする旋律のテーマとなります。どこかで聴いたことがありそうな楽しいメロディーが続きます。その次も甘くて優しく包み込むような音楽が続いたり、かと思ったら元気に飛び回ったり激しく情熱的になったりと、変化に満ちて聴きごたえがあります。これからの季節にぴったりな曲の一つのような気がしました。
この曲もこのCDで出会ったので、感想を書くのはちょっとおこがましい気もするのですが、とても麗しい演奏で曲との素敵な出会いのきっかけになりました。華やかにはじけ、たおやかに流れる、色彩豊かな演奏でした。
交響曲第40番ト短調
第1楽章モルト・アレグロ 速いホグウッドに聴きなれてきた耳にはゆっくりした音楽に思えたのですが、音の隅々にまで丁寧に神経の行き届いた美しい演奏。速度が一瞬遅くなるところがあるがそのたびに音楽への愛情が感じられぞくぞくしました。その間の中にセルの愛情が込められているような気がしました。まだ音楽は続くはずなのだが最後に近くになるにつれて寂しさを感じました。
第2楽章アンダンテ 低音部や内声を大切にしているからか、厚みにあふれた音楽でした。のどかでゆったりとした感じでありながら、曲が盛り上がるところでは緊迫感がありどきどきさせてくれる。大きく曲をとらえた感じの演奏だと思いました。
第3楽章メヌエット・アレグレット 小悪魔的な雰囲気のこの曲、実はこの40番交響曲の中で私が一番好きな楽章です。変拍子で後半がちょっとずれて寸足らずな感じなのがおしゃれなのですがこの演奏もそういう洒脱を感じさせました。しまりのあるかっこいい音楽。外へ外へと向かう激しい気迫も感じられその気迫がずしんずしんと重力方面にも向かっている感じでした。
第4楽章アレグロ 目まぐるしく転調しめくるめく音楽が広がっていく様子にさらわれそうになりました。しかも濃密なので力強くひっぱられていそうな感じがしました。最後の再現部直前にゆっくりとなるところでふたたびぞくっとしました。一瞬気を抜いたのかな、とも思えそうなのですが、再現部に向かうまでのかけがえのない過ぎてほしくないひと時を感じさせるような気がしました。セルはこの部分に大きな思いをはせていたような気がしました。その後速度が元に戻った時点で駆け抜けるような潔い終わり方がかえって切なさを感じました。
シベリウスとベルリオーズは余力があったら書けたら、と思っているのですがあてにしないでください。(シベリウスの交響曲第2番はさすが名曲だけあり素晴らしい曲でした。この有名な曲を今回まで知らなかったのは大きな損失だったと思っています。)
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