いろはにぴあの(Ver.3)

ピアノを趣味で弾いています。なかなか進歩しませんが少しでもうまくなりたいと思っています。ときどき小さな絵を描きます。

レジス・パスキエ&池田珠代 「祝祭と音楽シリーズ」

2011年09月17日 | ピアノ・音楽

 昨日はヴァイオリンとピアノの演奏会に行ってきました。ヴァイオリンはレジス・パスキエ氏、ピアノは池田珠代さんでした。ヴァイオリンのソロリサイタルは初めて、知っている曲もないまま出かけました。しかも私にはあまりなじみのないフランスもの。でも未知であるからこそ却って楽しめることもあるのではと思いながら行きました。


 そしてしっかり楽しめました。特に後半がすばらしかったです!


 曲目は


フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ長調 Op.13


ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタト短調


休憩


ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタト長調


サン=サーンス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ニ短調 Op.75


アンコール


ラヴェル:ハバネラ


 フォーレはさりげなく、次第に水がわきでるような雰囲気からはじまりました。情熱的なのですが、そこはフォーレ。レクイエムや弦楽四重奏五重奏と共通した、泉が天にのぼるような独特の雰囲気の和声が登場。彼は次第に和声をはじめ音楽を科学するようになり、実験的で少し理解しにくい曲を作るようになってきたといいます。このヴァイオリンソナタは彼が31歳、比較的若いときに作られた曲ですが、それでも聴くのにちょっと頭を使いました。ちなみにフォーレの先生はサン=サーンス、またラヴェルはフォーレを先生としたということを初めて知りました。


 ドビュッシーとヴァイオリン、意外な組み合わせな気がします。しかしドビュッシーはヴァイオリンが大好きでした。だからこそ曲を作るのにも苦しんだようです。このドビュッシーのヴァイオリン・ソナタは晩年に作られたものですが、フォーレに負けじおとらじ独特な雰囲気にあふれた曲&演奏でした。パスキエ氏の話によると、彼の一番の師はインスピレーション、そして自然だったらしく、もっとも革命的な路線を歩んだのでは、と言うことでした。病で苦しんでいる時期に作られた曲でしたが、さすが実験的な響きも多く、さすがドビュッシーは天才だと感じた次第です。


 前半は、どたばたした状態で会場入り、そしてあまりなじみがなくて、頭を使いそうなフランスものだったというのもあり、すごい、けれどもついていくのは労力がいりそう、という感じがしました。


 そして後半。ヴァイオリンの響きが非常にのびやかになったような気がしました。ピアノとの響きも前半よりも溶け合ってきました。パスキエ氏の使用しているヴァイオリンは1734年製のグァルネリ・デル・ジュスの「クレモナ」という貴重なヴァイオリンということですが、そのすばらしいヴァイオリンの機能をパスキエ氏はフル活用していました。


 ラヴェルのヴァイオリンソナタト長調。これはすごかったです。個性の強い暴れん坊たちをしっかりとまとめていました。第1楽章はピアノが美しく入った後、なめらかで美しいヴァイオリンが入り、ゆったりとした雰囲気で曲が流れていました。すごいのは音が少なく、無駄な音符がないこと生きていました。(ラヴェル自身、この曲を作る上で無駄な音符を削るのに労力がいったと述べているようです)第2楽章「ブルース」には驚きました。バンジョーかギターの爪弾きをまねたと言われるピチカートではじまり、リズム感&生命力のあふれたブルースが会場全体に響き渡りました。弓と弦をノリノリで力強く動かしていて、体の奥底からエネルギーが湧き出てくるようでした。お互いのびやかに演奏しているようでしたがしっかりかけあっていました。当時流行の最先端だったアメリカの黒人音楽に夢中になっていたラヴェルの思いが伝わってきました。そして第3楽章「無窮動」はタイトル通り動き続ける曲でした。素早くそして絶え間なく続く16分音符、弦も弓もフル稼働、まったく乱れることなく、どんどん美しく盛り上がっていきました。大柄なパスキエ氏のエネルギッシュな弓捌きにはただただため息が。それを支える池田さんのピアノも見事でした。


 最後はサン=サーンスのヴァイオリンソナタ第1番。これらの曲の中でもっとも私には楽になじみやすいだろうと予測していたのですが、その予測は当たりました。ベートーヴェンを尊敬していたサン=サーンス、フランスの作曲家とはいえ古典的な要素が多かったので。弱音の開始からどきどき、華やかでロマンチックな旋律が流れてきてわくわく。音の抑揚も大きく滑らか、そして豊か。美しく感動的な演奏でした。パスキエ氏のヴァイオリンの流れ出る音、絞り出す音、弾かれる音、包み込む音、舞い降りる音に圧倒されました。単旋律の楽器は譜面だけみたら単純そうに思えるのですが、一つ一つの音の情報量の多さ、密度の濃さ、自由さ、凝縮度は鍵盤楽器の比ではないように感じました。ヴァイオリンが複旋律だったり楽譜が2段だったりしたら演奏者も聴き手もヘトヘトでたまらなかったのではという気が。うまくできていると感じました。


 アンコールのハバネラの余韻がまたまたたまりませんでした。


 ヴァイオリンのことも曲のことも分からないまま、友人の紹介で弾みに近いような雰囲気ででかけた演奏会だったのですが、演奏もすばらしく、パスキエさんの話も楽しかったです。あのような場で落ち着いて譜めくりしていた友人のお嬢さんも立派でした。指揮者の大友直人氏がいらしたのにも驚きました。行ってよかったです。お粗末な感想で申し訳ないのですが、とてもいいものを聴かせていただきました♪


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