フランク作曲バウアー編曲の、プレリュード、フーガと変奏Op.18に取り組んで半年。祈るような、そして非常に美しく悲しい旋律、オルガンが原曲で重厚、ポリフォニックな要素にあふれた作り、まさに私が好きな要素がぎっしり詰まったあこがれのこの曲を、いったん気持ちよく卒業させたい、と思い、先月に続いてステップに申し込みました。七夕の日。会場もお寺の神聖な雰囲気にあふれたホールでピアノもまさにあこがれのベヒシュタイン、この曲にふさわしい設定にしたつもりでした。
しかし、一週間前の練習会では自分では気持ちよく弾いたつもりだったものの録音を聴いたら課題だらけだった上に、プログラムが判明してさらにびっくり。私の部は夜、しかも他の方はコンクールに出られていて非常に上手と言われる方たちばかりではないですか。演奏時間が長かったからでしょう。2度目というのもあったかもしれません。私の実力から言うとありえない設定なのですが、逃げるわけにもいかず、密度を上げて練習するしかないと思い、レッスンでのアドバイスを参考に部分練習中心に練習しました。
そして昨日。朝から長い一日でした。練習しては休憩、練習しては休憩。しかしとても幸せなひとときでした。
会場はひんやり。夜だったし冷房も効いていたのでしょう。神聖な雰囲気にあふれ、とても気持ちの良いすばらしい会場でした。前の部でしょうか、美しい演奏が聴こえてきました。ダイナミクスもしっかりついていて細かいところも丁寧に弾かれています。前の部にもこんなに上手な方がいらっしゃるのに、私はその後の部で弾くなんて。。。と思ったのですが、自分を信じるしかありません。しかしなかなか冷静になれず、前の部の演奏は全く聴かず、廊下で自分の演奏の録音をひたすら聴いていました。
しかし時間は容赦なく経ちます。ぎりぎりまで逃げていても逃げ続けるわけにもいかず、部屋に入り、前の方のすばらしい演奏を聴いて、冷静になろう、冷静になろうとおまじないをかけていました。左手ですばらしい演奏をされていた方がいらっしゃり、音楽への熱い情熱に頭がさがりそうになっていたら、自分の番がやってきました。
練習の成果を出そう、そして気持ちよく卒業させよう、音を聴きながら演奏しよう、それ以外のことは考えまい
と思って弾きました。
出だし、思ったよりもいい感じ。弾きなれているピアノとはまったく違っていて、音の立ち上がりからすごいと思いました。ペダルの濁りもあまり感じられないように思いました(実際は濁っていたのかもしれません)しかし緊張のあまり手が震えて震えて。。。プレリュードのコーダや変奏曲の盛り上がり部分など大切なところで外したりかすったりと、心残りの箇所がありました。あぶなっかしかったところを含めると無数。コントロールも何もなく、最後は感情だけを込めればいい、それさえ伝われば、という思いで演奏したような気がします。
なんとか止まることなく終わった瞬間のほっとしたこと。無事に卒業させることができた、と思いました。
ちなみに他の方たちはリサイタルのようでした。演奏は安定感にあふれているし、複数の曲を弾かれていても作曲家や曲によって弾き方をがらりと変えていて、それぞれの曲の特徴をしっかりつかんで演奏されていました。オーラも出ていたしな~。音楽の世界に浸りきっていられるように見えました。
三名の先生から講評をいただきました。
よく弾けているが現実的な演奏、もっと神秘的な演奏を目指そう。音色、ペダルタイミングをもっとコントロールしよう。
ダイナミクスの幅がもう少しほしい。フレーズの作り方、同じ方が続くぜクエンツ進行も、和声の色ごとに音量やイメージを変化させよう。曲への愛情が伝わってくる。
メロディーに対する思いが伝わってくるが和音や流れがモノトーンで同じタイプが多い気がする。音の質や色彩の変化(タッチ、コントロール、ペダルも含む)に変化を加えよう。低音部の旋律の出し方に工夫するとよい。
う~ん、やっぱり振れ幅と色彩感が必要だったようです。モノトーンな演奏だったと自分でも感じました。イメージの変化を具体的に音で出せるようになれることが今後の課題だと思いました。集中力を身に着け緊張感のなかでもしっかり表現できるように。
これから新たな曲に取り組む中で、それらのことができるようになりたい、と思ったのでした。
そして今日は選曲会議。欲望に忠実でいたら、10曲以上弾きたい曲があって手におえない状態になってしまいました。こそ練候補も含め長い列をなしまして。。。(爆)。弾けるものだったら全曲弾きたいし、弾くのだったら今のうち、と思ったのですが、自分のレベルと時間とを考えたら到底無理。レッスンで診ていただく曲はひょんなところから選曲の神様が降りてきた曲になるかもしれません。 この曲も背伸び曲なのですがそういう方向にいくか、と。(ちなみに記念年のドビュッシーさんとは今年は残念ながら縁がないようです)