ジブリ映画「レッドタートル」を観る。フランス人監督の制作になるもので、今まで「となりのトトロ」の系列に連なるジブリものを見慣れた者の目から
見ると、とてつもなく新鮮、かつ斬新な作品。
大洋に浮かぶ、ある無人島に、なぜか一人の男がいる。彼は、何度もいかだを組んで、島から脱出しようとするのだが、なぜか島からようやく逃げ出せそうとした瞬間、いかだが突然壊れ、島へ帰らざるを得なくなる。
ある時、そのいかだを壊しているのが、大きな甲羅を持った赤い亀🐢――レッドタートルだと気づく。
またもや島へ変えらざるを得なくなった男は、腹立ちまぎれにレッドタートルを足蹴にし、浜に転がす。仰向けになったまま、体をもとに戻せない🐢をそのまま放置しておくのだが、やがて心配になり、体を元通りひっくり返してやろうとする。
だが、🐢の甲羅はあまりに重く、どうやら亀も死んでしまったらしい。
ところが、次の瞬間、🐢の甲羅にひびが入り、中から姿を現したのは、何と赤毛の美女だった――。
男と美女は子をもうけるが、その息子はやがて、青年になった頃、どこかへ旅立つ。三匹の亀がなぜか、息子の供をするらしい。
男と女はやがて、年老い、男は死ぬ。すると、驚くべきことに、女は再び、赤い亀(レッドタートル)に戻り、海へ帰ってゆく。
これが、全編のストーリー。正直言って、面白いというより退屈だった。時々、小さな叫びがもれる外、登場人物は、皆無言というサイレント映画なのだ。
だから、独特の映像美が際立つのだが、説明されないことがあまりに多すぎて、チンプンカンプンな人もいるんじゃないだろうか?
まず 1.妻となった美女は、レッドタートルだった。彼女は、なぜ、男が島を出て行くのを阻止したのか?
2.レッドタートルは、自分を足蹴にし、ひっくり返したまま、ひどい目にあわせた男の妻になろうなどと、どうして思ったのか?
3.息子はどこへ旅立ったのか?
4.男はなぜ、無人島にいたのか? どうして、そこへ流されることとなってしまったのか?
5.レッドタートルと結ばれた後、男はどうして、再び、島を出ようとしなかったのか?
こうした疑問が次々浮かんでくるのだが、無声映画だから、だれも物語の中で説明してくれない。黙って、この寓話を楽しめばいいじゃないかと言われそうだが、
フラストレーションがたまって、「??」でいっぱいの状態。
あまりに今までのジブリと作風や色彩感覚からして違うのに驚いたが、これは高畑勲の遺作「かぐや姫」を見た時と、同質の感想だ。
思うに、ジブリはそれまで築きあげたイメージから、新しい時代の映像表現をさぐるべく、模索していたのだろう。
それが、成功だったかどうかは、わからないとしても――。