「宇宙の風に聴く」佐治晴夫著。カタツムリ社から発行されたもの。
これも、K先生からお借りしたのだけれど、実に実に素晴らしく面白い本です。こんな風に宇宙や地球、そして人間の存在を解説してくれる本があったなら、世の中から「理数離れ」なんて消えてなくなるのじゃないかしら? それほど「知」に対して、目を見開かれ、好奇心いっぱいの幼児の心で世界を見渡したくなる読み物です。
著者の佐治さんは、宇宙物理学者なのですが、語り口はいたって平易で、古典やクラシックの音楽家、藤原定家や紀貫之の和歌が出てきたり……と芸術的な感性も存分にあわせもった魅力あるお人柄がうかがわれるのです。
さて、ここに書かれたことは、まさしく「目からうろこ」的な科学的事実ばかり。まず、私たちの体が、「星のかけら」であること。これはどういうことかというと、地球上には90種類以上の元素がありますが、その元素は、みな惑星や星が一生を終え、大爆発した時、うまれたもの。 星は大爆発を起こす時、自分の中で作った元素のすべてを宇宙に返すのであり、それがふたたび雲状に集まり、太陽や地球や他の星が生まれることになったわけです。 これは、逆に言うなら、人間は死ななければ、次の人間が生まれてこないということでもあります。人は、最後は地球に帰っていくのですね。
星や惑星というと、人工衛星やボイジャーの映像で伝えられる、生命の兆候などまるでない冷たい無機質な表面が浮かんできたりしますが、私たちの体を構成する原子や元素がそこからやってきたというのは、とても荘厳な感すらすること。人類は、すべての人が「かぐや姫」なのであります。
はるか時をさかのぼり、私がまだ高校生だった頃、カール・セーガンやアーサー・C・クラークの作品を読んだ後、部屋の窓から夜空を見上げ、微動だにしない星星と漆黒の天蓋に気が遠くなるような思いを味わったことも思い出しました。「永遠」のとばりに頬を触れられたような、しんとした静けさとともに。
そして、宇宙に劣らず、人間存在も不思議。胎内で受精した卵細胞は、分割を始めますが、佐治さんのいうところによれば宇宙は人間を作るのに三十億年という永い時をかけたのに、人間はそれを十カ月で作ってしまうのです。卵細胞は三十二日目には、まだ魚の顔をしているのに、三十四日めには両生類に、三十六日目には、三億年くらい前に上陸した原始爬虫類の顔になっているという訳。そうして、四十日めには、もう人間の胎児の顔になっている--一週間くらいで、一億年の進化を駆け抜けていっているというのですが、これは本当に凄い。おまけにこの人間が、宇宙が自分を見るための「目」として、存在させたとするなら?
これはどういうことかというと、宇宙はすべてであるがゆえに、自分を見ることも認識することもできない。だからこそ、150億年の時をかけて、人間を生み出したというのですが、これはこじつけのようでいて、ある意味哲学的な結論でもあります。人間は、広大無辺な宇宙の観察者という存在理由があるのかもしれません。
宇宙や人間、生命という永遠の神秘に通じる扉が開かれる本!
これも、K先生からお借りしたのだけれど、実に実に素晴らしく面白い本です。こんな風に宇宙や地球、そして人間の存在を解説してくれる本があったなら、世の中から「理数離れ」なんて消えてなくなるのじゃないかしら? それほど「知」に対して、目を見開かれ、好奇心いっぱいの幼児の心で世界を見渡したくなる読み物です。
著者の佐治さんは、宇宙物理学者なのですが、語り口はいたって平易で、古典やクラシックの音楽家、藤原定家や紀貫之の和歌が出てきたり……と芸術的な感性も存分にあわせもった魅力あるお人柄がうかがわれるのです。
さて、ここに書かれたことは、まさしく「目からうろこ」的な科学的事実ばかり。まず、私たちの体が、「星のかけら」であること。これはどういうことかというと、地球上には90種類以上の元素がありますが、その元素は、みな惑星や星が一生を終え、大爆発した時、うまれたもの。 星は大爆発を起こす時、自分の中で作った元素のすべてを宇宙に返すのであり、それがふたたび雲状に集まり、太陽や地球や他の星が生まれることになったわけです。 これは、逆に言うなら、人間は死ななければ、次の人間が生まれてこないということでもあります。人は、最後は地球に帰っていくのですね。
星や惑星というと、人工衛星やボイジャーの映像で伝えられる、生命の兆候などまるでない冷たい無機質な表面が浮かんできたりしますが、私たちの体を構成する原子や元素がそこからやってきたというのは、とても荘厳な感すらすること。人類は、すべての人が「かぐや姫」なのであります。
はるか時をさかのぼり、私がまだ高校生だった頃、カール・セーガンやアーサー・C・クラークの作品を読んだ後、部屋の窓から夜空を見上げ、微動だにしない星星と漆黒の天蓋に気が遠くなるような思いを味わったことも思い出しました。「永遠」のとばりに頬を触れられたような、しんとした静けさとともに。
そして、宇宙に劣らず、人間存在も不思議。胎内で受精した卵細胞は、分割を始めますが、佐治さんのいうところによれば宇宙は人間を作るのに三十億年という永い時をかけたのに、人間はそれを十カ月で作ってしまうのです。卵細胞は三十二日目には、まだ魚の顔をしているのに、三十四日めには両生類に、三十六日目には、三億年くらい前に上陸した原始爬虫類の顔になっているという訳。そうして、四十日めには、もう人間の胎児の顔になっている--一週間くらいで、一億年の進化を駆け抜けていっているというのですが、これは本当に凄い。おまけにこの人間が、宇宙が自分を見るための「目」として、存在させたとするなら?
これはどういうことかというと、宇宙はすべてであるがゆえに、自分を見ることも認識することもできない。だからこそ、150億年の時をかけて、人間を生み出したというのですが、これはこじつけのようでいて、ある意味哲学的な結論でもあります。人間は、広大無辺な宇宙の観察者という存在理由があるのかもしれません。
宇宙や人間、生命という永遠の神秘に通じる扉が開かれる本!