ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

黄色いロールスロイス

2021-10-26 10:53:01 | 映画のレビュー

映画「黄色いロールスロイス」を観る。Amazonの格安のDVDとして購入したのだが、予想にたがわず、面白かった☆

星評価で言うなら、五つ星満点のところ、☆☆☆☆くらいの感じです。  今ではもうすっかり見られなくなったオムニバス式の映画で、全三篇。こういうオムニバス形式の映画って、1960年代の頃は、流行っていたような……しかし、私もこの映画以外観たのは、ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ共演の「昨日・今日・明日」だけだったように思います。

さて、この三篇のショートストーリー。これが、いずれも上質な短編小説を読んだ後のような満足感を感じさせてくれ、しかも小粋なのである。物語をつなげるピースとなる存在は、題名ともなっている黄色いロールスロイス。この美しい車が、持ち主を変えながら、ひとときの人間ドラマを紡いでゆく。

この人間ドラマを演じる俳優陣がまた、素晴らしい!! 最初は競馬狂いのとある侯爵とその夫人の物語。この夫妻を何と、レックス・ハリスンとジャンヌ・モローが演じている。 私は年取ったジャンヌしか知らないのだけれど、若い頃の彼女は、後年のアクの強さがあまり感じられないのに驚く。 レックス・ハリスンの方は、「マイフェアレディ」の洒脱な紳士そのままの風貌。

ハリスン侯爵は、妻エロイーズ(これを、ジャンヌ・モローが演じているってわけ)の誕生日祝いに、珍しい黄色のロールスロイスを贈るものの、その座席で彼女が、若い男と浮気をしているのを目撃してしまう。

この難癖がついたロールスロイスは返品され、また次の持ち主の手に――。今度の持ち主は、アメリカからやって来たギャングとその情婦。若い情婦を、これまた若かりし日のシャーリー・マクレーンが演じている。しかし、最初の内は、画面にあらわれた彼女が誰だかわからず、「このチャーミングな女優は誰だろう?」と思い続けて、後でキャスティングを見て、S・マクレーンであることを確認した時の、私の驚きといったら!

彼女、若い頃はこんなに可愛かったのか!? 「アパートの鍵貸します」をずっと昔観た覚えがあるけれど、シャーリー・マクレーンってこんなに魅力的な女優だったっけ?  このマクレーン演じる情婦が、愛人のギャングがアメリカへ商用(縄張り争いの抗争のため)へ出かけていったあと、アラン・ドロン演じる写真家志望のジゴロとドライブに出かけるのだが、この顔合わせがまた、素晴らしいのだ。

  

 

 

ヨーロッパの色とアメリカのフレッシュな色彩を、カンバスの上で混ぜたら、思いもかけぬ絵がかけたというような――。

情婦はドロンに恋を感じ、ドロンも彼女に真剣な恋を感じるのだが、彼女は自分たちのロマンスを全うさせたら、ドロンが殺されるに違いないと思い、ギャングのもとへ帰ってゆく。彼らの乗ったロールスロイスが目の前を駆け去ってゆくのを見つめながら、彼女の写真をそっと破り捨てるドロン。この幕切れが、なんとも粋で、「ああ、昔の映画ってよかったなあ」と思わせられてしまう。

 掉尾を飾るのは、大女優イングリッド・バーグマン。アメリカからやって来た尊大な未亡人である彼女は、ユーゴスラビアの国王に会いにいくつもりなのだが、そこへいつの間にか、ゲリラの闘士である青年(これを、オマー・シャリフが演じている)をロールスロイスにかくまい、国境を越える羽目になる。ゲリラ活動に巻き込まれることとなったバーグマンは、彼らを車にすし詰めに乗せて、何度も山を下りるのだが、あの美しい車がこんな英雄的なことに使われるとは――粋さも、ここに極まれり!

   

当時、五十前だったバーグマン。今見ても、本当に美しい。

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日々のこと

2021-10-14 08:55:24 | ある日の日記

  

最近、メダカの飼育にはまっている。最初に頂いた近所の方から、赤ちゃんメダカももらってしまい、その子たちは、上の水槽とは別の場所(メダカにも、子供部屋がいるのだ!)で成長中。

     

水槽の上から写したところ。水草の間に、何匹かのメダカが泳いでいるのが見えるでしょうか?

   

こういう感じ。 水槽の下に砂利を敷き、石を入れ、水草をセット。そしてカルキを抜いた水道水を注ぎ、メダカを泳がせたとたん、そこにはなんとも涼し気な水の世界が出現するのです🐡  キッチンの窓辺に置いただけで、まるで小川の中をのそいているかのような風景が出現。

見ているだけで、とても気持ち良いの。  以前も、人から頂いたヒメダカを飼育していたことがあったっけ……そして、私の思いは飛び、ずっと昔、小学生の頃、小鳥を飼っていたことまで思い出し、無性に小鳥が飼いたくなってしまいました。🐓 それも、黄色いヒヨコというものが好きで、そこから連想されるカナリアが飼いたい! 

アフリカとスペインの間の海洋にある島々が原産地だというカナリア。しかし、周りの人は皆「やめて」の言葉。というか、最近では小鳥の好きな人の方が少人数らしいのですね。「🐓は、糞が臭いからイヤ」だとか「くちばしが怖い」だとか――私が小さかった頃は、街(なぜか、外れに多かったように思う)にも、「小鳥屋さん」というものがあったと思うのですが……。

薄暗い木造のお店に入ると、たくさんの鳥かごがあって、いろんな小鳥が盛んに鳴き交わしていたのを、遠い記憶の中におぼろげに覚えているのだけど、要するに、時代と共に流行らなくなっただけのことでしょう。

鳥を怖がる人が意外に多いのにもびっくり。これってヒッチコックの「鳥」が描いたように、鳥というものは、人々の恐怖をあおる薄気味悪さを秘めているのかしらん。神武天皇の東征の時、三本足の鴉が道案内したという伝説もあるのだから、あの小さな丸い目や鋭いくちばしには、蛇🐍と同じく、呪術的な力が込められているのか!? 

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ノーベル賞……(´;ω;`)そして……

2021-10-08 17:45:47 | 本のレビュー

昨夜、発表された2021年ノーベル文学賞。今年も、落選してしまった村上春樹。 残念です。

受賞したのは、タンザニアの作家とのことですが、ちょっと名前が浮かびません。邦訳もこれから始まるということだし……でも、こんな世界的な賞だというのに、一般に知名度もない作家がほとんどなのは、どうしてなんだろう? アーネスト・ヘミングェイとかサルトルの時代とは、まったく違いますね。

毎年毎年、候補に挙げられている村上春樹氏ですが、彼がノーベル文学賞を受賞することはほとんどないんじゃないかと、私などは当初から思っていました。 ハルキ・ムラカミのエンターティメント性とノーベル賞という性質が、一致しない気がするのです。

 

  

こちらは、今月初め開館したという、早稲田大学の村上春樹ライブラリー。 実は、私もここに募金してしまいました。今まで募金したのは、「盲導犬育成基金」だけ。「アミーゴ」とか別のところで募金箱を見かけるたびに、数百円ほど募金していました。

映画「クイール」を見て、クイールの健気さ、賢さに泣いてしまって以来、盲導犬というものを応援したくてたまらないのです。

しかし、今回募金までしてしまったのは、何故かというと、村上春樹が、私の青春の作家という思い出のため。高二の時、彼の作品を初めて読んで、世界が生まれ変わるような気持ちになったとこは、今も鮮明に記憶しています。「ノルウェイの森」、「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」etc.

今は別に、それほどファンという訳でもないのですが……しかし、上記の図書館へは、コロナがおさまったら、ぜひ一度行ってみたいと思っています。 どんな図書館なのだろう?

 

p.s 今後、日本人作家がノーベル文学賞を取るとしたら、私は小川洋子だろうと確信しています。

    

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若草物語

2021-10-04 12:00:00 | 映画のレビュー

映画「若草物語」を観ました。1949年の映画ですから、とても古いです。でも、とても面白かった! 続けざまに、三回も観てしまったくらいです。 

以前観た時は、まだ私が高校生くらいの頃だったのですが、なぜかその時の印象ははっきりしていません。我がままで美人のエミリーを当時十六歳だったエリザベス・テイラーが演じていて、「きれいだな」と思ったものの、黒髪の印象が強いリズは金髪のくるくる縦ロールのヘアスタイルで登場するのが、少し似合わなかったような……。

でも、実を言うとオールコットが書いた「若草物語」は、子供時代の私にとって大切な愛読書でした。「小公女」とか「あしながおじさん」とぃつた名作などより、ずっと心を惹きつけられたぐらい。 今でもピンク色の背表紙のついた講談社の子供向けの児童文学シリーズを、くっきり思い出せます。

元はお金持ちでありながら、没落したマーチ家の四人姉妹。彼女たちがクリスマスの朝、目覚めるところからはじまって、久しぶりのごちそうやお菓子の並んだ食卓に大喜びしながら、飢えて、寒い部屋で過ごさざるを得ない、近所の家の話を聞き、せっかくのごちそうを彼らに持っていってやるところ――とても印象に残っているシーンです。

食いしん坊の私にとって、他人のために自分たちもめったに食べられない、おいしい食事をあきらめてしまう四人姉妹が、輝いてみえたほどです。

さて、この映画は、原作にほぼ忠実な設定となっており、作家志望の次女ジョーが主人公というのも変わりません。ジューン・アリスンがジョーを演じています。 ただ、私の好みから言えば、当時32歳だったジューン・アリスンのジョー役は「少し、違うな」とも思わせられたかも。

何しろ、このジョーは頑固! 気むつかしく、口やかましいながらマーチ一家を助けてくれるお金持ちの伯母さんと衝突はするし、自分に思いを寄せてくれる隣家の大金持ちの青年ローリーを仲良くなるものの、彼の求婚をはねつけてしまいます。魅力的ではあるのですが、姉のメグの恋愛を邪魔する様が、あまりにも大人げない。

これに比べたら、我儘で自分勝手なエミリーの方が、「憎めない」と思ってしまう私です。

    

「若草物語」の舞台は、十九世紀半ば過ぎ。南北戦争が起こった頃なのですね。南部社会から南北戦争を描いたものが「風と共に去りぬ」であるなら、北部の目から見たのが「若草物語」とも言えます。

小学生の頃、繰り返し読んでいた時は、まるで少女小説か少女マンガを読んでいる時の楽しさを味わっていました。しかし、今観てみると、いろんなことがわかってきます。 当時の風俗。ファッション。道徳観――マーチ家が貧しいとされながらも、ヨーロッパ旅行を夢見たり、実際に行けてしまえるような良家であることも。

     

これが、当時芳紀十六歳のエリザベス・テイラー。やっぱり、美人ですね。面白いことに、こんな子役の時代から、彼女の世にも珍しい「紫いろの瞳」への思い入れは強いものらしく、エミリーは淡い紫色のドレスを着て、何度も登場します。

学校で、授業中教師の悪口を書いたとかで、その石板を持たされ、立ちんぼうの罰を受けているリズの姿が可愛い! 白いエプロンドレスなぞ着て、その胸元には「エミリー」と赤い文字で刺繍などしてあるのです。

P.S

以前、カナダのプリンスエドワード島を舞台にした「赤毛のアン」は、カナダ人の間では、すっかり時代遅れの少女小説であり、モデル地にまで押しかけてくる熱烈なファンがいるのは、日本人だけだという記事をどこかで読んだことがありました。

この若草物語はどうなんだろう。歴史に残る児童文学というほど、かしこまったものではない。しかし、こんな風に永遠に灯をともし続ける少女小説の存在は、とてつもなく貴重なものではないでしょうか。

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