ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

I LOVE チラシ

2015-03-31 09:41:53 | 映画のレビュー

近く公開されることとなる映画のチラシを、自室のコルクボードに貼ったところです。

ウディ・アレン監督で、コリン・ファース(「アナザー・カントリー」に出ていたあの英国青年が、こんな大スターになるだなんて!)主演のお洒落でエスプリのきいた恋愛コメディ「マジック・イン・ムーンライト」と名女優シャーリー・マクレーン主演の「トレヴィの泉で二度目の恋を」――あ~、どちらも観たい!

特に「マジック・・・」の方は、1920年代の南フランスはコートダジュールを舞台とするというのだから、きっと素敵な映画のはず。コリン・ファースと主演女優エマ・ストーンが並んで立っているさまなど、素晴らしく絵になっていてうっとり。

最近、やっと気がついたのですが、映画のチラシって、本当に面白い! 中学・高校とバリバリの映画少女だった頃は、映画館に行くたび、パンフレットを買うのが楽しみでしたが、いつかそんなものを買わなくなってしまいました。かさばるし、再びページを開けることなんて、あまりないし…。でも、その点、チラシは気軽。お洒落で代表的なシーンが効果的に配され、洗練された紹介文がそれを彩ります。フォルダーを買って、集めたチラシをアルバムにするのも、グッドアイデア。 昨年、鎌倉へ旅行に行った時、訪れた川喜多映画記念館でも、夫妻が日本に紹介した古いヨーロッパ映画のチラシが壁一面に展示されていて、とても見ごたえのあるものでした。

見た映画も、日々の記憶の中にまぎれこんでしまいますが、チラシをパラパラめくっていくと、魅力的なシーン、俳優の表情、物語のエッセンスが立ち昇ってくる一瞬が好き。
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チポリの国の物語

2015-03-30 22:37:28 | 本のレビュー

「チポリの国の物語」まつだのりよし作 国土社
童話を教えていただいている先生が、以前出された本。冒険世界を描いたファンタジー物とばかり思っていたのですが、そんな夢とロマンばかりを追った、非現実的なものではありませんでした。と、いっても、骨格はもちろんファンタジー。

主人公比呂志(ひろし)は、勉強熱心な優等生の中学三年生。彼には、幼い頃、生き別れになっていた双子の兄多加志(たかし)が
いるのですが、彼はある夜のこと家族の目の前で消えるという不思議な失踪をしています。

そして、時が流れ、ひょんなことから比呂志は亡き祖父が残した木彫りの馬、ハヤに乗って、この地球とは違う次元の世界に旅立つ事に――そこで出会ったのは、かつて別れたままになっていた多加志。この異次元の世界は、チポリの国といい、アフリカの飢餓を連想させる過酷な飢えに苦しめられていたのですが、なんと祖父はもともとこちらの側の世界の住人だったというのです――ファンタジーというと、妖精やら不思議な生物やら、幻想的な風景や街といった道具立てが用意されているのですが、この作品ではそんな砂糖菓子のような甘さなど存在しません。人々は、ナウアという種族(彼らは、もともとチポリの人々によって助けられていた避難民でしたが、やがてチポリの好意を踏みにじったのです)の圧政のもとに、搾取され、貧しい生活を余議なくされています。作中には、その様子がつぶさに描かれている場面がありますが、配給を待つテントの中の人々など、まるで私達の世界の片隅で見る光景そのまま。

ここで、松田先生が、ハンセン病や戦争などに鋭い問題意識をお持ちの方だったことに思いいたったのですが、この視点が「チポリの国の物語」を個性的な作品にしているのでしょう。
兄弟は、チポリの仲間たちとともに、土を耕し、野菜を植え始めますが、これがチポリの新しい夜明けとなるのか――チポリとナウアに見られる富と貧しさの二極、チポリの未来に賭ける若者達の友情――など、読み応えのある書物。

いつか、私達の世界の未来にも、チポリのようにまったく枯渇した資源から、生活を切り開いていかねばならない日が来るとも限りません。この地球の繁栄が尽きることがありませんように。
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写本装飾の世界

2015-03-28 21:58:10 | カリグラフィー+写本装飾
日帰りで、東京へ。銀座教会(東京福音会センター)で29日まで開かれているShell工房の作品展を見るため。私が関西で月1回習っている写本装飾の先生も、この工房のメンバー。

そして、工房のメンバー8名の方の作品を見させて頂いたのだけれど、とても綺麗! 中世ヨーロッパの写本をそのまま模写したものや、オリジナルデザインなど色々あったけれど、ゴシック体などの文字の美しさと飾り文字や細密画の繊細さが溶けあって、格調高い世界を作りだしている。きらめく金箔やあざやかに彩色された模様などを見ながら、いつか私もこんなものを作ってみたいなあ…とため息もの。

帰りの新幹線に乗るまで、数時間しかないので、銀ブラし、「ダロワイヨ」でティータイム。…でも、「ラデュレ」もそうだったけど、こんな有名なパリの老舗の日本支店のものより、さほど知られていないけど、きちんとしたお菓子をつくるカフェのティータイムの方が美味しく感じる。

それにしても、銀座は人が多いなあ――雑踏の凄さよ!

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ある日の日記

2015-03-26 18:32:31 | ある日の日記
美術館で短期集中講座があった「イコン教室」が終わる。週に一回午後の3時間を費やし、計6回というものだった。
最後の教室があった昨日、ずっととりかかっていたイコン画がついに完成! イエローオーカーに白をまぜた背景、ローマンレッドの縁取りを施し終えた後、やれやれと一息。まったくの初心者だけれど、時間をかけて作ったものは可愛い気がする。

そして(終了時刻まで、15分ほどあったけれど)片づけて、帰ろうとすると、「完成した作品を各自で持って、教室の皆さんで記念写真を取りたいので、少し待っててくださいね」と先生のお声。あれ、時間内に完成させたのは、私だけであったか・・・。
手が早いといえば、良く聞こえるけれど、私雑なのかしら? そして、1時間あまり待って、皆さんが完成させたのを待って写真を撮る。

このイコン画は、岡山市立オリエント美術館にて、3月31日~4月12日までの間展示される。イコンとは、珍奇にもマニアックな世界。全国でも、取り組んでいる人は滅多にいないのでは? 興味のある方はどうぞご高覧下さい。 宗教画という敬虔な美への扉が開かれるかも。
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ノエルハーブガーデン便り

2015-03-26 18:18:07 | ガーデニング

昼下がりのガーデン。春と共に、花達もドレスアップしはじめました。まずは、これクリスマスローズ。庭の片隅には、クリスマスローズ達が群生で咲いている一角があるのです。

カイの木の下では、ムスカリたちも、可愛い紫の帽子姿を披露。でも、この花って、なんだかキャンディ棒を連想させるような…。
   ちっとも珍しくないローズマリーだけれど、このスキッとする香りが好きなの。青い小さな花も、地味さけれど、なかなかチャーミングな風情。

ユキヤナギって、白い淡雪を思わせる花。夜の闇の中で見ると、幻想的な白さ。
こうして、次々花が咲きはじめているのだけれど、ずっと母が欲しがっているミモザやサフランの花はまだありません。
ミモザの黄色って、本当に好き。ずーっと昔、春のはじめイタリアに行った時、「ミモザは春の贈り物として、飾るんだ」と聞いた覚えが…。女性が帽子にちょんとミモザの花を飾っている姿も見ましたが、本当に素敵でしたね。

さて、私、まだミモザとギンヨウアカシアの違いが良くわからなのでありました。今度調べてみようっと。
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エリザベートのこと

2015-03-24 09:38:36 | アート・文化
今日は、ちょっと歴史散歩。 ハプスブルク家の終焉を彩ることとなった絶世の美女エリザベートであります。

ウィーンを訪れた時、びっくりしたのは、空港にドーンとエリザベートのポスタ―が幾枚も貼られていたこと。そして、空港内の売店にも、エリザベートの写真をパッケージにしたチョコレートが山積みになって売られていることに、ちょっと唖然…。

ウィーン内で泊まったホテルにも、ベッドの傍らには、ウェルカムプレゼントとして、エリザベートのパッケージの瀟洒なチョコレートの箱が置いてあったし…。 公園には、彼女の彫像、王宮内には、エリザベートを追憶する「シシィ・ミュージアム」があるというのだから、街じゅうがシシィ(エリザベートの愛称)の記憶に満ちているといっても、過言ではないのでした。

老舗のお菓子屋のショーウインドーにも、シシィの写真が飾られているのを見て、この街はまだ19世紀の夢の中に眠っているのでは、と思ってしまったほど。エリザベートが、スイスで青年ルケーニに暗殺されてから、もう一世紀以上もの時間が過ぎているというのに……。

オーストリア国民がかくも、かくもエリザベートを哀惜してやまないのも、不思議といえば不思議。神経症に悩まされ、ひっきりなしに旅をしては、帝都ウィーンにいることはほとんどなく、豪華な専用列車や瀟洒な調度品など贅沢をつくしていたエリザベート。当然、国民の受けは良くなかったと思うのだけど、やはり美女は得なのか? (そういえば、エジプトに昔行った時も、お土産物屋には、ツタンカーメンのものと同じくらいネフェルティティを扱ったものが多かったっけ)

170センチの長身に、50キロの体重を維持するため、乗馬やアスレチック体操など、ダイエットに励んでいたといわれるシシィ。その彼女が甘いスィーツを口にしていた? と思うのでありますが、「スミレの砂糖づけ」が好物だったとかで、そのお菓子も見ました(一説には、お菓子屋から、秘密の地下通路で、王宮内に運ばせていたという、まことしやかな言い伝えもあり)。


そして、こちらの写真は、ババリアの狂王と言われるルードヴィヒ2世。ヴィスコンティの映画が有名ですね。実は、エリザベートのまた従弟の子とかで、親戚関係なのです。今でいう、究極のオタクとして、中世の騎士物語にあるようなお城の建造、ワーグナーの音楽に耽溺し、国庫をほとんど空にしたといわれるルードヴィヒ。わずか40歳で湖で溺死し、その時には、精神状態も冒され、肥満体にもなってしまっていたのですが、若き日はかくも美青年でありました。

「彼は神のように美しかった」とは、若き日のルードヴィヒに会った人の言葉でありますが、エリザベートとルードヴィヒ――この二人、よく似ていません? 栗色の髪に長身、お伽噺のプリンスとプリンセスのように整った顔――精神状態も極端で、厭世感に悩まされていたところもそっくり。

事実、二人は互いに近親感を感じていたよう。二人とも悲劇的な死を迎えましたが、どこかで(たとえば、ルードヴィヒが白鳥城内に、イタリアはカプリ島の「青の洞窟」を模して作った人工洞窟)、静かに語り合っているのでは? と思ってしまうのであります。


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こつこつと、しかし着実に

2015-03-23 18:22:47 | ある日の日記
深く考えさせられることがあって、しばらくブログをお休みにしていました。
忙しい後は、疲れもたまっていて、何と9日ぶりに居住スペースの掃除。二十代の頃は、毎日拭き掃除もしっかりして、家を綺麗にするのが好きだったのに、この現状は…。 どこかのマンガで「ミルク磨き」というものがあり、床に牛乳をたらして「鏡のようにピカピカに」というのがあって、それに憧れたほど、「家具の影がはっきりと映るほど」磨かれた床というものに固執していた昔。

体力が、なくなったなあと思うのですが、これも年齢のせい? TVなどで「ゴミ屋敷」というものが特集されていたりしますが、気づくのは「お年寄りの一人暮らし」が結構な割合を占めること。 家を綺麗にできないのは、グウタラやズボラのなせる業と若い頃の私は考えていたのですが、「老いは気力や体力を奪う」ということにやっと気づきました。

暮らしは、生きることの原点。できるだけ綺麗に、こざっぱりと掃除をしていくことを誓うことにします。でも、生活というのは、ゴミや汚れをあっという間に作りだし、それを毎日かき分けていく作業は、ちょっとシジュフォスの神話を連想させるのでありました。
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湯河原温泉の旅

2015-03-16 08:34:38 | 旅のこと
母とバスの旅で奥湯河原温泉へ行ってきた。ここは神奈川県の箱根近くで、私達の住んでいる所からはハイウェイを通って8時間かかる。 飛行機で言うと、オーストラリアあたりまで行けるかしら?

とにかく、名古屋から向こうの東名高速に乗るのははじめて。だから楽しみにしていたのだけど、バスの窓から富士山がアップで見えた時は、本当に感動! 本当に気品があって綺麗なのだ。 裾野が優美に広がり、紫のかすみがかかって感じられる山容は、本当に他の山が石ころだとするなら、「宝石」のような美しさである!

途中のサービスエリアではじめて、「名古屋コーチンの親子丼」なるものを食す。なかなか美味しい。親子丼なんてものを食べたのが、子供の頃以来なかったような……。それにしても、味噌カツや天むすといい、名古屋は食べ物の新名物が多い。 名古屋県民は発想力とか、進取の気性に富んでいる? まあ、尾張の地域は戦国の名大名たちを生んだ土地柄であるからして――。

はるばるやってきた、奥湯河原は、料亭旅館「海石榴」。この名前、なんて読むかわかる? 答えは「つばき」。あの花の「椿」のこと。 はじめはスゴイ当て字と思ったのだけれど、こういう漢字のもあるのだそう。 旅館内は広壮で、部屋もすご~く広い!
「椿」を旅館名にかかげ、イメージシンボルとするだけあって、タオルも浴衣もオリジナル作務衣など、みな椿の花がデザインに使われている。 仲居さんの着ものの帯の後ろにも、椿の花が鎮座しているのを見て、思わず微笑みたくなったもの。
余談なのだが、この椿の花が胸のところにワンポイント刺繍された作務衣が気にいって、売店で購入してしまった。部屋着として、寝巻として、と活躍すること間違いなし!

そして、そして、お料理がものすごくおいしい! 一流の料理人が丹精と心をこめた料理、とはかくあるものか…と夢のような心地で食べる。 特にお釜ごと持ってこられたごはんなどは、「生まれた初めて、こんな美味しいごはんを食べた」というくらい、素晴らしい。 底にほんのりおこげがついて、まっしろな御飯がつぶが立って、つやつやと輝いている。 電気釜で炊いたものとは全然違うでごわす。 写真は、その一例だけれど、照明の関係もあって綺麗に取れなかった。 お料理を綺麗に撮るのは難しい…。



そして、旅館にほとんど泊まったことがない私には、とても新鮮だったのだけれど、部屋の前には部屋名を書かれた行燈のようなものがあり、それが廊下の奥までずっと続いているのは、壮観! ホテルもそうじゃないかと言われそうだが、どこまでも直線的で、ニュアンスのない均一な照明が照らされたホテルの廊下には、こんな雰囲気はない。 薄暗さも少し感じられる幻想的な趣は、以前トルコのカッパドキアで泊まった洞窟ホテルをも思いださせた。 そして、大浴場へ行くにも、棟と棟がうねうねと曲がりくねって続いて、一階が二階に、二階が一部で三階になるという不思議なつくり。、ふと、夏目漱石の「明暗」で主人公の津田が泊まった旅館を思いおこしてしまう。彼が滞在したのも、山の奥深くの淋しくも幻想的ですらある旅館だったけれど、そこも曲がりくねった作りが、不可思議な魅力を持って迫ったもの。 ああ、あれも考えてみれば、湯河原の旅館じゃなかったっけ? 帰ったら、確認してみよう。

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ある日の日記

2015-03-10 13:41:05 | ある日の日記
月一回の童話教室のある日。 それなのに、先月はやたら忙しくて童話もかきかけのまま。仕方なく短めのエッセイを書いて行くことに。

いつも通り、教室の皆さんと楽しく批評しあった後、ちゃんと作品を作っていなかなければならないと反省。雨の激しく振りしきぶる寒い日で、帰り所用があったためもあって、駅まで歩いて行きました。

駅そばのホテルのティーラウンジで、タルト・フレーズとアールグレイティーの香り高いお茶でほっと一息。イチゴの鮮やかな赤とアーモンドの香りが感じられるタルト生地の絶妙な組み合わせが大好きで、苺のタルト(タルト・フレーズ)やナポレオンパイは一番好きなケーキです。

窓の向こうに広がる灰色の空と激しい雨足を見ながら、何気ない日々や風景の後ろにファンタジーや幻想か隠れているもの、といまさらながらに思う、夕方のひとときでありました。
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ハチ公が帰って来ました

2015-03-10 12:17:32 | ノエル
日本人なら、誰でも知っている忠犬ハチ公。10年近くも、亡き主人を渋谷駅まで迎えに生き続けたというエピソードは、人々の涙を誘い、渋谷駅には有名な銅像も立っていますね。

ハチ公は1923年、秋田県で生まれた、生粋の秋田犬だそう。秋田犬を欲しがっていた東京大学農学部教授上野氏によって、東京までやってきたのですが、米俵に包まれ、20時間も列車に揺られていたのだそう。そうして、主人のおともをして、毎日渋谷駅まで送り迎えするのですが、1925年に上野氏は、脳溢血のため大学構内で倒れ、そのまま亡くなってしまいます。

主人が死んだ後も、渋谷駅までやってくるハチ公。駅の前でじっと座り、列車の到着のベルに耳をすませる犬の姿は、当時の人々にはどんな風に見えていたのでしょう。  それにしても、ハチ公が90年も前に生まれた犬だったとは……。 実在のハチ公の写真も見たのですが、近頃の人間好みに改良されつくしてしまった犬とは違って、キリリとした面構えが何ともチャーミング。

そして、2015年の今、ハチ公は上野教授と念願の再会を! 新しく銅像が作られ、そこには最愛の御主人に飛びついて行くハチの姿が描かれているのですが、上野教授を見上げるハチの目や舌を出した口が、さも嬉しげでとてもかわいいのです。 う~ん、90年ぶりに教授と抱き合うことのできたハチ公――この素敵な銅像は東京大学構内に設置されるのだそう。 私も今度東京へ行ったら、ぜひ見てきませう。

ハチ公の逸話がかくも長く語り継がれたことや、あたらしく銅像が作られ、ゆかりの場所に置かれるというニュースには、人の心には宝石があると思わせ、これも素晴らしく思えてきます。 最後にトリビアを一つ。青山霊園にてハチ公は上野教授のお墓に一緒に眠っているそうです。
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