「ダロウェイ夫人」を読む。言わずと知れた、英国の天才女流作家ヴァージニア・ウルフの代表作である。
実いえば、これを買ったのは1998年と裏にも記してある通り、二十年以上も前。それなのに、その時読みきることができなかったのだ――。
ヴァージニア・ウルフは、とても興味のある作家で、その生涯から何からよく知っているのに、なぜか今まで、その作品を「きちんと全部」読めたことがない。
難解だが、繊細な文章。登場人物の心理描写を細かにする作風、何よりも全盛時代の英国のムードがひしひしと伝わってくる内容といい、100%私の好みなのにもかかわらず……。
うまく言えないけど、思わず踊りだしたくなるようなステキな音楽が♪かかっているのに、どうしてもリズムに合わせて踊れない、というような感じで、作品の中に入っていけなかった。
それが、この度、楽しんで読むことができたのだ! ずーっと昔、「灯台へ」や「波」を読んだ時も、字面だけ追っていて、中身がさっぱり頭に入っていかなかったのに……。この年になって、初めてウルフが理解できた! そのことが、とってもうれしいのであります。
内容は、自分でまとめるのも面倒くさいので、裏のカバーに書かれた文章をそのままここに。
「ロンドンの6月は、緑のなかにさまざまな花々が咲き乱れる美しい季節だ。そして人々は10時ごろまで暮れない長く美しい一日を思う存分、楽しむ。
ヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』は、そのような6月のロンドンを舞台にした、その季節と同じくらい美しい小説と言っていい。
時は1923年6月13日。その日はちょうど、主人公のクラリッサ・ダロウェイが保守党の政治家の夫人として、自宅でパーティを開くことになっている――『ダロウェイ夫人』は、ジョイスの『ユリシーズ』同様、朝に始まり、深夜に終わる一日の物語なのである」
というもの。
あくまで、人物の心理描写や回想が主となっており、ストーリーがどうこうという小説ではない。この本を買った当時、バネッサ・レッドグレーブ主演の同名の映画も公開されていて、それは面白かった。
そして、その頃、映画「めぐりあう時間たち」も公開されていた。
これは、ヴァージニア・ウルフの物語と、現代のニューヨークの女性編集者、1950年代のロサンゼルスの主婦という三人の女性の物語を、それぞれ別個に描きながら、最後には一つの大団円となる壮大な物語――少し難しいけれど、とっても面白かった!
ウルフをニコール・キッドマンがが、素晴らしい存在感で演じていたし、NYの女性編集者のメリル・ストリープのファッションや雰囲気も見ごたえあり。
天才でありながら、精神の病の発作に生涯苦しめられていたウルフ――伝記映画としては、とても興味のある題材に違いない。