ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

アナと雪の女王2

2020-12-27 03:16:57 | 映画のレビュー

 

「アナと雪の女王2」を観る。ず~っと観て見たいと思っていたディズニー映画。

まず、画像の美しさに目が釘付けになってしまう。最新の技術を投入したせいなのだろうけれど、本当に自然描写やエルサの魔法が一つ一つ、ため息が出るほど綺麗!

ストーリーの方は……う~ん (-_-;)特別面白いというものではなかったかも。自然界からの呼び声に突き動かされるようにして、アートハランという土地を目指したエルサ。自然界の精霊たちの怒りによって、アレンデールの国にも滅亡の兆しがしのびより、それを救うためでもあったのだけど、何よりエルサがこの地を目指したのは「自分が何者であったか」「なぜ、魔法を使える特異な身であるのか」を求めるため。

さらにその後を、いつも姉をきづかうアナと恋人のクリストフ、雪だるまのオラフなどが従ってゆくという訳ですが、そんなストーリーよりも、圧倒的な映像の美しさを楽しんだ。

昔、悲劇が起こったとされる森で、次々火の手があがる木にアナが氷の魔法を使って、火を吹き消すところ。そして、闇の海をわたるシーンの凄さ――暗い波を渡ってゆくエルサの前に、海底から不思議な馬が浮かび上がって、その行く手をはばむところ。

そして、アートハランという雪と氷の地の美しさ……本当に、圧巻としかいいようのない。「ディズニーの想像力と技術は凄いなあ」とただただ、目を奪われ続けていた私。これって、アンデルセンの「雪の女王」が住む城の幻想的な美しさに匹敵するのじゃなかろうか?

その中を歌いながら進むエルサ。もうここまで来たら、ストーリーなんてどうでもいいくらい。これは、ファンタジーのなせる魔力だから。

エルサの魔法――もしくはディズニーの夢と魔法を、ぜひご覧あれ♬

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レベッカ

2020-12-24 15:57:49 | 本のレビュー

ダフネ・デュ・モーリアの「レベッカ」を読みました。数か月前初めて読んで以来、これでもう三度目。何度読んでも面白いのです。また近いうちに、もう一度読んでしまうかも。

私の好みのどつぼにはまった作品なのでしょうね。 これを書いた時、モーリアはまだ三十歳かそこらだったというのだから、この天才的なストーリーテーラーたるや恐るべしであります。しかし、そうでなければ、ヒロイン(多分、二十一歳かそこらだと思われる)の若さや未熟さ、そして一途さを描き出すことはできなかったかも。

「ゆうべ、またマンダレーに行った夢を見た。わたしは……」で始まる、ミステリアスにも心をそそらずにはいられない冒頭の文章。

そこから、若きヒロインと彼女の恋と、マンダレーという美しい名の館。そして、夫となったマキシムの前妻であるレベッカを巡る謎へと、見る見るうちに惹きこまれてしまう!

それにしても、不思議なのは、ヒロインの「わたし」の名前が、全編を通して決して明かされないこと。それに反して、今はもう死んでいるはずの前妻レベッカは、堂々と小説の題名とまでなっている――これは、たとえていえば、太陽と月のような彼女たちの位置関係を示しているものなのか?

華やかで残酷で、才能に満ち溢れたレベッカに反して、地味な野の花のような「わたし」の姿が浮かび上がってきそうなのですが、彼女の外見は――想像しにくいですね。金髪で、青白くて、どこかおどおどした物腰の、それでいて、ぶれない芯を持った女性というところでしょうか。でも、まるでもう一人の自分を見ているような親近感を感じさせるヒロインでもあります。

そして、何といってもこの小説で描かれた時代の優雅さ! 実は「わたし」がマキシムに出会ったのは、南フランスのモンテカルロ。そこで、「わたし」はお金持ちの(有名人大好きで、彼らの後を追いかけ回しては嫌われている中年女性)アメリカ女のコンパニオンとして雇われています。つまり、話し相手兼小間使いみたいなものですね。

こんな職業が本当にあったんだ……若くて、よるべない女性は、当時、こんな仕事についていたのでしょうか? 1920~30年代(多分)のモンテカルロの優雅で退廃的な雰囲気は、本当にため息がでてきそうです。ヨーロッパが本当に華やかだった頃は、こんな風だったんだ。

間もなく、暗い影を背負ったナイスミドルのマキシムに見いだされた「わたし」は、彼の新しい妻として、マキシムの城館のあるマンダレーに赴くのですが、ここの描写も素晴らしい! 広大な領地には、森も浜辺もアザレアの茂みもあり、絵のような佇まいを見せているのですが、こんなところへ来たら、誰もがとまどってしまうはず。まして、裕福な生まれでもなく、レディとしての教育も受けていない「わたし」に広い地所の管理と使用人の監督などできようはずがありません。 デュ・モーリアが凄いのは、こうした大旅館のおかみにもまさる責任を押しつけられた「わたし」のとまどいや世間ずれしていない様子を生き生きと描き出しているところ。 

「レベッカ」は単に、よくできたミステリ小説というだけではなく、ヒロインのビルツゥイングスロマンにもなっているのでした。

マキシムの背負う影の原因は、前の妻レベッカの死因にあった――そこで衝撃の事実がわかり、さらにそれが二転三転し、エンディングへと続いて行く訳ですが、このあたりの筆致、デュ・モーリアは本当にお見事です。個人的には、アガサ・クリスティーなどよりずっと素晴らしい作品と思うのですが、わが国ではさほど読まれていないらしい。う~ん、もったいない!

それにしても、昔の英国貴族は、こんな贅沢で優雅な生活を送っていたのですね。「わたし」がマキシムと過ごすマンダレーのお屋敷に置かれた家具調度の素晴らしさは言うまでもなく、朝食やお茶に出されるパンやスコーン、ケーキ、紅茶までがこんなにたっぷりとあるなんて……この小説を読みながら、ミステリだと言うのに、美味しそうな料理を想像して、うっとりしてしまいました。

P.S ヒロインのわたしとマキシムは、マンダレーを失った後、どんな人生を送ることになるのか? 外国のホテルをさまようように流浪の人生を送るのか。暗雲を感じさせるラストが、心に残ります。

 

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カンブリア宮殿

2020-12-19 02:32:03 | テレビ番組

 

時々、木曜夜の「カンブリア宮殿」を観ている。作家村上龍が、新しいビジネスの在り方を追求している企業家と対談し、かつ、その斬新な市場へのプロモート法を紹介するというものだが、面白い!

高校生の頃、やはり村上龍が様々な文化人と対談していたTV番組「きままにいい夜」も熱心に観ていた記憶があるのだけど、これはまったく別のアプローチ。

先週は、洋菓子メーカー「ユーハイム」が取り上げられていたが、見ていて「へえ~」と思う事ばかり。実言うと、デパ地下に「ユーハイム」のショップがあるのはよく見かけていたのだが、神戸発の大量生産型メーカーとしては、「モロゾフ」や「ゴンチャロフ」に比べると、地味で印象に乏しいかな? という感じだった。

神戸というより芦屋よりだけど、「アンリ・シャルパンティエ」でばかり買っていて、「ユーハイム」のお菓子を買ったのは……なかったような気がする。

ところが、この「カンブリア宮殿」を見て、目からウロコが落ちてしまった! 何と、ユーハイムは、ヨーロッパの一流パティシエが日本に出店する際、そのお菓子の製造を任せるというくらいの技術集団だというのだ。

確かに、ユーハイムの職人たちの作るケーキの素晴らしく洗練されていること――高い技術とハート♡があってこそ、なせる技。

工場を持つ大量生産メーカーにもかかわらず、職人がたくさんいて、手作業の工程が多い事が、ユーハイムの人気の秘密なのだそう。

知らなかった……はっきり言って、デパ地下のお菓子は、「工場でつくられたもの」で一部を除いては、そう美味しくはないと思いこんでいた私。 創業者のドイツ人夫婦のスピリットが100年以上も受け継がれているからこその、非効率のクラフトマンシップという訳なのか。

TVで紹介されていたドイツ風ケーキも素朴な外見で美味しそう……これは、絶対食べてみねばと思って、早速もよりのデパ地下へ行った私。

ところが――素朴そうに見えたユーハイムのケーキの値段が、一個500円近くもするじゃないか。高い!

買うのを諦め、そばにあったゴンチャロフの三袋千円のチョコレートをゲットした私でありました。トホホ……。

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今日の新聞記事から

2020-12-09 21:59:41 | 本のレビュー

 

今朝の新聞記事に、作家小川洋子さんの特集記事が載っていました。

記事によると、小川さんの少女時代の作文や写真が、吉備路文学館で今月13日から公開されるそう。昔から大ファンの作家。これは、ぜひ行ってみなければ♬

今年、英国のブッカー賞の最終候補となるなど、国際的にも注目を浴びている小川さん――ノーベル賞も射程距離のうちに入ったと書かれていましたが、すでに、私は高校三年の時、はじめて文壇にデビューした時の彼女の作品を読んで、「この人は、きっと世界的な作家になるだろうな」と予感していました(私は、けっこう直感型人間なのです)。

この記事の中で、目をひくのが、小川洋子さんが小学二年の時書かれたという「あおすじあげはのようちゅうのかんさつ」の写真。

きちんと丁寧に書かれた字も、色鉛筆の絵も素晴らしいです。こんな緻密な観察記録を、8歳かそこらで作り上げていたんだ……凄いなあ。

彼女の小説はほとんど読んでいるのですが、「ブラフマンの埋葬」はまだ読んでいません――今度、縁側の椅子にかけて、ゆっくり読みませう。

 

 

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