ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

ある日の日記

2019-08-18 20:06:43 | ガーデニング

 

ノエル葡萄小屋でも、マスカットが実りはじめています。天井から、たわわに実る、緑の房――実は、この葡萄、今では姿を消しつつあるマスカット・オブ・アレキサンドリア。

薄く、透明な翡翠色の皮と繊細な食感を持つ、マスカットらしいマスカット。今は、「シャインマスカット」という皮の分厚い(その分、剥きやすい)、硬い手触りの品種が多く出回っていますが、私は嫌いです。 あんまり、美味しいとも思えないし。

           

でも、ここ、何だか、温室というより、小さなあずまやみたいな空間でしょ? 棚の上には、ワンコの写真やジョウロが置かれ、夏帽子まで飾られたりしています。 葡萄も、緑の電球というか、ペンダントが無数にぶら下がっているみたいだし。

テーブルと椅子もあって、いつでも飲もうと思えば、ここでお茶が飲めるんですが……しかし、現実問題として、夏は暑すぎます!


むらさきのスカートの女

2019-08-09 08:12:11 | 本のレビュー

 今期の芥川賞受賞作「むらさきのスカートの女」を読みました。

     

以前から、作者の今村夏子さんの名前は聞いていて、一度その作品を読んでみたいと思っていたのですが……読後感は? と言われると微妙。

面白くないというわけではないのですが、「よかったか?」と言われると首をかしげるような読書体験でありました。

作品は、主人公の「私」が、近所の安アパートに住む「紫色のスカートをいつも、はいている」女と友達になりたいと思い、彼女を自分の働いているホテルの清掃係に、こっそりと誘導するところから始まります。

この主人公というのが、まるで透明人間みたいに存在感がなく、生活の背景もわからず、職場でも「あれ? そんな人いた?」というくらい無口な人物であるらしい、というのがキャラクター造形の面白さといえるのかもしれませんが、正直言って、最初は退屈でした。

物語が平坦で、ただ「私」の見る「むらさきのスカートの女」の姿が、あれこれ描かれている。全体に読みやすい文体なのですが、なんだかおもしろくない……そう思いつつ、ページをめくっていたら、三分の二ほど進んだところで、あっと驚くどんでん返しが待っていました。

ウ~ン、これは最後の投げ返し技が鮮やかだわ――しかし、不満もいろいろあって、

☆主人公が、なぜ、「むらさきのスカートの女」と友達になりたいのかわからない。

☆執拗に、「むらさきのスカートの女」を追い続けている割には、彼女がユニークな人物らしいな、という印象程度で魅力的に描かれていない。

☆主人公の生活背景を、もっと詳しく描いて欲しい。

☆物語が面白くなるのが、後半からというのでは、遅すぎる。もっと、序盤から読者を惹きつける構成にして欲しい。

というのが、私の意見。

皆さんの考えは、いかがでしょうか? 

 


深窓の令嬢

2019-08-06 20:44:36 | ノエル

  

こんにちは。ゴールデンレトリバーのノエルです。

夏は、いつも、おうちの中で過ごしています……上の写真は、庭先から部屋の中にいるノエルを写したもの。

可愛い♡としばし、見つめた後、突然「深窓の令嬢」という言葉の意味が、本当にわかったように思いました。

この言葉を聞くたびに、「深い窓」って、どういう意味だろう? と思っていたのですが、例えていえば、道ゆく人が上を見上げた時、

窓があり、その奥に麗しいお嬢さんの姿が見え……という展開は、昔むかしの時代には、よくあったのではないかしら?

当時は、お嬢さんという人は、家からあまり出ない生活をしていただろうし、窓から見える姿が、チラリとするだけというケースも多かったのでは、と思うのです。

ロミオとジュリエットの物語も、こんな具合にはじまっていたような気もするし。

そして、窓の奥にいるお嬢さんは、実物よりも美しく(?)見えるのです!

ノエルも、顔が白くなっていたりして、すっかりシニアの仲間入りをしているのですが、窓越しに見ると、年取ったお嬢さんに見えるかな?

P.S ガラス窓に反射している、庭に置かれたちり取りや脚立は、ご愛敬であります。

 


少女マンガじゃない

2019-08-03 21:30:07 | 本のレビュー

最近、買った少女マンガです☆彡 でも、はっきり言って、大昔の「少女マンガ」の後日談といった方がいいかも…。

「王家の紋章」の方は、私が小学校の低学年の頃には、すでにあったというくらい古い古~いマンガ。現代のアメリカの女の子(それも、大金持ちの令嬢である)キャロルが、古代エジプトへタイムスリップしてしまい、そこから波乱万丈の恋と冒険と、歴史活劇が始める、という物語。

ところが、これが二十一世紀、令和の時代になっても、まだ続いている! そして、エジプト王のメンフィスはおろか、ヒッタイトのイズミル王子などオリエント、地中海世界でモテモテのキャロルをめぐって、奪還劇が繰り返されるというストーリーなのですが、さすがに……マンネリもいいところ。

おまけに、話はいつまでも前に進まないし――いったい、キャロルは、最後は現代に帰ることになるのか、それとも古代世界で死んでしまうのか?

この最新刊でも、舞台はアフリカの奥地、ヌビアに飛び、そこの蛮族の女王に捕まったキャロルを、乗り込んで来たメンフィスが救うという筋書きなのですが、前も何度も見たよ、というパターン。

最初の頃は、いかにもアメリカの女の子という感じで可愛かったキャロルも、今ではすっかりフレッシュさがなく、ヌビアの女王の前にひったてられても、「私はエジプトの王妃。その品位を汚すようなことはできないわ」などと、高慢ちきに。

ああ、年を取らないはずの少女マンガの主人公も、長~く話が続きすぎると、心が汚れてくるのかも

そして、「ポーの一族」の続編である「ユニコーン」――これは、ぜんっぜん面白くありませんでした。四十年ぶりの新作として発表された「春の夢」は、とっても面白かったのに、二巻目のこれは……もはや、意味不明です……。

 

「ポーの一族」は全部で五巻あり、最後は火事が起こり、エドガーとアランは死んでしまう(というか、塵になってしまう)はずだったのに、この「ユニコーン」の舞台である2016年に、エドガーが生きたまま、登場します。

彼は燃えてしまったアランを生き返らせてほしい、と望むのですが、何てムチャクチャな設定なんだ。 あの名作の最後で感動した、昔の読者を裏切るようなことをするな、と叫びたい気持ちです。勝手に話を変えるな!

作者の萩尾望都さんが、すばらしく博学で、素晴らしい想像力を持っているのはわかるのですが、そのせいで話がやたら広がり、わかりにくくなっています。

ポーの一族が住む村には、薔薇が一面に咲き誇っているという話は、幻想的で好きだったのに、その地下には一人の男が埋められていて、薔薇が決して枯れないのも、そのためだという種明かしになっているのは――もはや、興ざめです。帯には、「さらに深度をます世界観に圧倒される、新世紀の‘ポー‘」などと書いてあるのですが、話が空中分解しているだけなのに、ものは言いようだなあ、と思ってしまいました。

結論=少女マンガも、あんまり長く話を引き延ばすと、内容が薄くなります。何でも、潮時というものがあるのじゃ