お暑うござんす。外の気温は、体温ぐらいもあり、自分の部屋に引きこもっています。上の写真は、おとついデパートで購入したばかりのアロマディフューザー。
充電した後、上のスイッチを押せば、二時間きっかり、アロマが薫ります。 最近、すっかりアロマテラピーにはまっている私ですが、植物の香りって本当に深いものなのですね。 でも、バラやジャスミン、オレンジの花を使った精油は、花びらを大量に使っても、採油できる量はほんのちょっとしかないので、とても高価なのだよ! そんな高いものはおいそれと使えないので、なじみ深いラベンダーやペパーミント、オレンジスイート、ゼラニウムなどが出番。
自粛生活で知った新しい楽しみです。
奥に映っているのは、ゴブラン織りのクッションですが、やっぱり夏は暑苦しいかな?
そして、これがどうしても紹介したかった本!
十数年前、河出書房新社から発行されたものの、すでに絶版となっているとかで、ネット経由の古本屋で手にいれました。
ロレンス・ダレルの「アレクサンドリア四重奏」(以前、1960年代にはじめて、日本で翻訳された時は『アレクサンドリア・カルテット』というタイトルだったそうな)――私は、これを恩田陸の「三月は深き紅の淵を」で印象深く紹介されているのを読みました。そこで、好奇心が刺激されたので、iPadで検索したところ、100パーセント、どんぴしゃりの好みらしいと直感。どうしても読みたくなって、取り寄せたのです。
昨日から読みはじめたばかりですが、予想は外れず、とても、とても面白い‼ 文章が華麗で詩的で、なおかつ舞台となったエジプトの都会、アレキサンドリアの異国的な香りを感じさせるのであります。
どんな内容かというと、私も読みはじめたばかりで一言では言えないのですが――帯にある紹介文をそのまま引用すると――
「このエーゲ海の孤島に、ぼくはぼくたちの心を引き裂いたあの都会から逃れてきた。 ぼくをメリッサに会わせ、そしてジュスティーヌに会わせたあの都会――ぼくがメリッサを見出したとき、彼女はアレクサンドリアの淋しい海岸に、性の翼を破られて、溺れかかった鳥のように打ち上げられていた。彼女の明るいやさしいまなざしはぼくを幸せにした。
それなのに、やがて出会ったジュスティーヌの仄暗くかげる凝視に、ぼくは抗うことができなかった……」etc.。
う~ん、こう書いても、作品の魅力は伝わらないなあ。
よし、作品冒頭の文章を書いてみませう。
「今日も浪が高い。刺すような風がほとばしる。冬のさなかにも春のたくらみは感じられる。真昼までは熱い裸の真珠の空、物かげで鳴くこおろぎ、そしていまは大きなスズカケの木々を振りほどき、探し回る風……。
数冊の本をたずさえ、子供を連れてぼくはこの島へ逃げてきた――メリッサの子供を連れて。なぜ「逃げる」という言葉を使うのか、ぼくにもわからない。病気の保養ででもなければこんな遠いところへ来るわけがない、と村の人たちは冗談を言う。よかろう、そう言う言い方がよければ、ぼくは自分を癒しにここへ来たのだ……。
夜、風が吠え、それにこだまして音を立てる炉の傍ら、木の寝台のなかで子供が静かに眠り続けるとき、ぼくはランプを灯して歩きまわる。友だちのことを考えながら――ジュスティーヌとネッシムのことを、メリッサとバルタザールのことを。ぼくは記憶の鉄鎖をひとつひとつたぐって、ぼくたちがほんの僅かのあいだいっしょに住んでいたあの都会へ戻って行く――」
こんな調子。とても、好きな文体です。