さて、ビワマスの体色が銀白色になる現象は6月から
7月に急速に進み、8割を ビワマスの 超える個体
で体色が銀白色になるという。このことがサクラマス
やギンザケなど降海型のサケ科魚類のスモルト(銀毛)
化と呼ばれる現象と同一なのかどうかはまだわからな
というが、とりあえず体色が銀白色となってパーマー
クの見えにくくなった個体をビワマスのスモルト化と
呼んでいる。
いっぽうアマゴは、7月でも体側にはパーマークが鮮
やかに見えていて、銀白化の兆候は認められなかった。
しかし、それ以後も続けて観察していくと、9月の終
わり頃から変化が現われ始め、12月にかけて’スモル
トと呼べる個体が出現する。このアマゴとのスモルト
の違いは、ビワマスのそれと比較すると体色は両種と
も鮮やかな銀白色になることは同様であったが、背鰭
や尾鰭の縁がアマゴでは墨を塗ったように鮮明な黒色
なのに対し、ビワマスではそれほど濃くならないとい
う違いが認められた。体の肥り具合を示す指標の「肥
満度」と呼ばれる数値は、ピワマスとアマゴともパー
に比べスモルトは低下しサクラマスのスモルトと同じ
変化を示しすという。
スモルト化の時期や背鰭の黒色化に少し違いが認めら
れるものの、多くの点で両種のスモルトはよく似てい
て、この時点ではビワマスの。スモルト化はアマゴや
サクラマスのスモルト化と同じ現象と考えて可笑しく
ないという。サクラマスでは、パーからスモルトヘの
変化が孵化後1年ないし2年経過した3月頃から見ら
れ、スモルトは4月から6月にかけて川を下り海での
生活を開始する。これに対して、ビワマスのスモルト
が孵化後半年ほどの6月から7月に出現し、アマゴの
スモルトが9月から12月に現われるという差異が観察
されている。
成熟と死の関係は、サケ科魚類の中にもいろいろなタ
イがあり、川の最上渡部にいるイワナでは、サケとは
異なり雄も雌も産卵後に死ぬことはない。ニジマスも
このタイプ。いっぽう、河川型のアマゴやヤマメでは
2回あるいは3回目の産卵の後に死ぬものが多い。同
種でありながら、これが降海型のサツキマスやサクラ
マスになると1回の産卵で死ぬ。ビワマスの雌は一度
成熟するとすべて死ぬが、雄の中の孵化後1年で成熟
する早熟雄は死なないが、翌年に再度成然したときに
死ぬ。また、孵化後2年以上たって大きく成長した雄
は、成熟すると死んでしまうという。こう見てみると
環境の変化が深く関わっているように見えるが、その
生理的なメカニズムはよくわかっていないのだ。
【エピソード】
水産とか生物生態などとはもともと無縁だったのだが
琵琶湖・淀川水系汚染問題に関わると同時にいやおう
なしに水産生態知識が必要になる。また、前の職場で
も鮎の養殖経営している息子がわたしの上司であった
り、工場長の専門大学が北海道大学の水産学部(出身
地は大阪)であったりといくらでも切り口が広がるも
ので、田中豊一氏(故人)と二人で埼玉水産試験場に
でかけ、ナマズの養殖など調査などもしたもので、皇
太子がナマズ博士であることを知ったりもした。でも
このグループで釣りを趣味とする会員はひとりいない
ように、フィールドワークには疎い。疎いが琵琶湖に
面する河口に行くと、それはそれで、一旦、透明で澄
み切った水中を魚たちが遊泳する情景に見入ってしま
うと離れなくなる。因みに、50年前は瀬田シジミが
この松原、磯でもたくさん水揚げされていたと久保祐
夫氏(故人)が話していたことをいまも懐かしく思い
出される。話は飛躍するが、この問題にかかわる頃は
当然、クジラが古代牛の海進態などはまったく知らな
かったほど素人だった。
【脚注及びリンク】
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1.「淡水魚辞典 サケ科」
2.「WEB魚図鑑 硬骨漁網 サケ科」
3.「イワナ(サケ科魚類)の生活史二型と個体群過程」
4.「日本魚類学会」
5.「魚類学(Ichthyology)」Mojie
6.「成長のメカニズムからサケ科魚類の生活史多型と
資源管理を考える」清水宗敬
7.「田沢湖で絶滅した固有種クニマス(サケ科)の山
梨県西湖での発見」2011年2月22日
8.「醒ヶ井養鱒場」
9.「ビワマスにおける早期遡上群の存在」2006.2.7
10.「ビワマス-湖に生けるサケ-」藤岡康弘
11.「ビワマス」国立環境研究所
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