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ランドスケープ(Landscape)
「Ⅳ 里地里山のビオトープ」の項目では、
「(1)自然環境の把握方法」を俯瞰してき
たが、今回は調査方法等の実践の考察に移る。
❺ 調査方法
事前に図銘などで生態を把握し、生物の種毎
に調査方法を決め、異なる出現時期に合わせ
年間の調査スケジュールを設定。雨天には飛
翔しない、鳴き出さないほか、隠れ処に滞み、
また、早春や晩春には急な気温低下で活動を
抑制される生物が多いので、調査日の天候を
考慮する(野鳥、両生 爬虫類、昆虫、植物な
ど:目視確認や、捕獲後の同定)。
(2)現状評価
❶ 現状評価の視点
同じ雑木林でも、斜面の上下や方位などの立
地条件に加え、現状の樹齢、優占種、低木層
の茂り具合や構成種により育成管理の方向や
ポテンシャルが異なる。里地里山の自然環境
は、すべてに人手が継統的に加わる状態で維
持される二次植生である。雑木林は萌芽更新
せず放置すると、西南日本での低山地では照
葉樹林へ遷移する。湿地のヨシ群落はヤナギ
やハンノキ林などに遷移する。
ハンノキ(榛の木 学名:Alnus japonica)
植生選移とは植生が極相林に向かって置き代
っていく過程をいう。溶岩や火山灰層の上な
ど基質にまったく生物を含まない場所から始
まるものを一次連移森林を技採した跡地など
最初から基質に若干の生物たとえば土壌中の
種子、地下茎、土壌動物などを含む場所から
はじまる(再生する)ものを二次遷移という。
乾燥した裸地に植物が生え森林へと移ろいで
いく「乾生選移」と湖沼が埋まり温地草原森
林へと移ろいでいく「湿性選移Jがある。茅
場や里山は草原から陽村林に向う遷移段階を
人間が切っては戻し、また切ってを繰り返す
ことで維持してきた二次遷移の途上にある二
次的自然である。
ギフチョウ(岐阜蝶・学名 Luehdorfia japonica)
現地で調査した植生区分図が基礎図になり、
この区分ごとの動植物など調査結果をもとに
対象地が有するポテンシャルを確認、育成の
方向性を検討、整理する。たとえば、林床に
野生草花が豊富な雑木林では、その群生地を
育成することが可能であり、絶減危惧種のギ
フチョウが確認された場合には、林分構造を
改良して、食草のカンアオイを育成し、ゲン
ジボタルやタゴガエルが確認された小川で周
囲の植生管理により個体群を保全することが
できる。
カンアオイ(寒葵、学名:Asarum nipponicum)
タゴカエル
❷ 地形条件に対するとらえ方
同じ雑木林でも、斜面の上下や方位などの立
地条件に加え、現状の樹齢、優占種、低木層
の茂り具合や構成種により育成管理の方向や
ポテンシャルが異なる。
ゲンジボタル(源氏蛍・学名Luciola cruciata)
❸ 水質に対するとらえ方
水質を示す指標の一つとして BOD (化物学的
酸素要求量) がある。水中の微生物が有機物
を分解する際、呼吸により駿素を消費する。
BODはこの酸素量を有機物量の目安として取
り扱うものであり、1㍑当たりの水に含まれ
る有機物を分解するのに必要な酸素量を指す。
(3)育成管理の方向性
❶ 雑木林
現地の雑木林を観察してどのような特徴があ
るのか? これによっていくちかの育成管理の
方向性が検討される。クヌギやコナラなど、
幹直径10~15cmまでの樹林では、区画を定め、
株元から伐採し萌芽更新で若返りを図ること
も可能である。対象地全体には樹齢の異なる
様相が形成され、立木間、樹林間に様々な光
や温湿度環境が形成され、全体としては植物
だけではなく、チョウや甲虫など見虫類など
動物相の多様性が向上する。
※直系20cmを上回る立木、樹常15mを超えるよ
うな立木を伐採する場合は、大きな危険が伴
うため専門業者に依頼することが望まれる。
クヌギ(Quercus acutissima)
萌芽更新は、クヌギやコナラなどの中ほ木林
が対象。構高15~20mに達する老齢化した雑木
林では伐採後の萌芽力が弱く更新しない可能
性がある。また、伐採に危険を伴い専門の技
術者に依頼する必要がある。また、アカマツ
林は萌芽更新させることができない。またな
枯れの進行により林分維持に不確定要素を伴
う。絶減危惧種など希歩種が確認された場合
は、その動植物に求められる保全対策を取る。
低木層にヤマツツジやミツバツツジ、ガマズ
ミ、ツクパネウツギなどの野生花木が多い場
合には、これらを育成し開花景観を形成する
ことが可能である。さらに林床にカタクリや
チゴユリなどの春植物、ササユリ、ヤマユリ、
アカマツ(Pinus densiflora、赤松)
アキノキリンソウ(Solidago virgaurea var. asiatica)
アキノキリンソウなどの初夏から秋に成長、
開花する植物が多い場合には、これらの野草
を増殖することも可能である。このほかにも、
谷戸の水田に連続した雑木林では、林床の植
生に対する手入れやエコスタックの設置によ
り、陸化したヤマアカガエルやトウキョウサ
ンショウウオなどの生息地として、機能を高
めることができる。また、直径10~15cmまで
の、特に樹幹から樹波を出す若い雑木林では、
クワガタムシやオオムラサキなど、樹波食性
見虫頚の餌場や繁殖地として、機能を高める
ことができる。
エコスタック
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