公共財の維持と図書館 Ⅱ

2016年11月08日 | 防災と琵琶湖

● 彦根市民の図書機能とは

事例:図書館の民営化で地方都市の再生

カルチュア・コンビニエンス・クラブは図書館内で、年
間612万円の使用料を払って書店とCD・DVDレン
タル店、コーヒーショップ(スターバックス)を運営し
ているが、収支報告には含まれない。CCC社員で武雄
市図書館の宮地康志マネジャーは「詳細な額は公表でき
ないが、民業部門は黒字。ただ、図書館運営の赤字を埋
めるまでには至っていない。
市図書館の15年度の来館
者は72万8242人。14年度の80万736人、13
年度の92万3036人と比べて2年連続で減少し、リ
ニューアル時のブームは落ち着いてきている。担当者
は、
赤字は解消できなかったが、蔵書購入費は増やし、イベ
ント充実にも努めている。サービスを落とさず、経費節
減に努めて黒字転換したいと話している。このように社
会実験の最中にありその成果は今後次第ということにな
る。

● 選書の重要性

そもそも図書館の本来の役割って何なのか?日本の図書
館法では、(1)必要な資料を収集。(2)整理・保存・
公開。(3)教養や生活を豊かにすることにあり、この
「必要な資料の収集」――「選書」と呼ばれるその地域
にとって本当に買うべき本は何なのかを長期的な視点で
考えるの仕事――蔵書の数よりも、その中身が大切が重
要となる。その地域にしかないような歴史資料や高価な
書籍は、市民が自分ではなかなか買えないし、見る機会
も限られるが、図書館であればその役割を担える。その
意味で、武雄市の図書館が提起した問題は、その図書館
にふさわしい選書の重要性を浮き出したとも考えられる。

● 深刻な出版不況

また、本が売れないので、図書館で本を貸し出すのを一
定期間遅延して欲しいという市場圧力がある中どう折り
合いを付けていくのか?これには妙案がないが、図書館
が地域の人たちの交流の場であったり、文化活動の場で
あったり、その機能は多様。また自治体にとっては、街
の再開発計画の中心施設になっているところもあり、自
分の街の図書館をどういう機能を持った図書館にしてい
くのか長期的な見通した議論が必要とされている。



● 社会インフラとしての図書館


このように、近年の公共図書館の利用者は、読書のみを
目的としているとは限らず、無料のWi-Fiやネット接続さ
れたPCが目的の人もいれば、日本でいう高卒認定試験に
あたるGEDの受験に来る人、履歴書を作成して職探しを
する人など、さまざまな目的で図書館が利用されている。
ある米国の研究所は、図書館に求める設備・サービスを
調査結果を発表――回答者の90%が「もし図書館が閉
鎖するとコミュニティに影響を及ぼす」と言い、63%
は「その影響は深刻」とも回答しているという。

また、日本でプリツカー賞を5度受賞する建築家の伊東
豊雄は、東日本大震災以降、被災地で積極的な活動を行
っているが、「震災後に地方公務員が図書館を『文化的
避難所』として素早く再開した」と話している。また、
社会学者のエリック・クリネンバーグは「図書館のよう
な社会的インフラに誰でも訪れられるように設備や状態
を整えなくてはならない」との発言もある。同氏は「
市の復興力」は輸送システム・インフラ・通信網以外に、
公園や図書館などの整備度によって計測することができ
るとも話している。

このように、図書館が長期的かつ文化的目標に沿って進
むべきか活発な市民・住民の議論の深まりが「図書館行
政」のドリブンであると考える。

                     この項了

【エピソード】 
    
     

● 図書館の思い出  



大阪市立曾根崎小学校図書室

現在は再開発で廃校となっているが、当時の校内の図書
は低学年と高学年との2室と洒落たれた立派な図書室
があ
り、静寂な空間で図書棚の絵本を手に取り夢を膨ら
ませていた鮮やかな記憶
が残る。わたの好奇心はこの部
屋で育まれていく。

大阪市立中央図書館

中学生になり西区の南堀江に転居すると、近くの中央図
書館を利用することになる。ここは、
戦争によって大き
な被害を受け、その機能を失っていましたが1946年
に市立精華小学校に育英図書館として復興し、50年に
桜宮公会堂に移転、52年には天王寺公園の中に移り、
桜宮図書館を分館とする。戦争によって着工中止されて
いた中央図書館が市政70周年記念事業として建設、61
年に、西区北堀江に日本の最高水準の図書館として開館。
その後、一区に一図書館を目標に市民が気軽に利用でき
る図書館を建設。96年に全面的に建替、地下6階地上
6階の日本最大級(貸し出し冊数、延床面積等)の公立
図書館としては、図書館に生まれ変わる。図書館で真新
しいインクに匂いの新聞が「キューバー危機」(62年
秋)を報じていたことが強烈な思い出として記憶に残っ
ている。



大阪府立中之島図書館

中高生になると受験勉強と称し仲間(主に三人連れ、市
立図書館は主に一人)と中之島一丁目にある府立中之島
図書館に通うことになる。ここは1904年に「大阪図
書館」として開館、50年天王寺分館を(現大阪府立夕
陽丘図書館)建設、74年「大阪府立中之島図書館」名
称を変更している。中之島図書館が国の重要文化財に指
定。2004年から、中之島図書館はビジネスマンに様
々な情報を提供する「ビジネス支援サービス」を開始。
別館では、関西大学が法科大学院のサテライト教室とし
て「リーガルクリニック」授業を開講し、大阪府立大学
大学院看護学研究科及び同総合リハビリテーション学研
究科が社会人向けにサテライト大学院を開講している。

ここは、夕暮れの御堂筋とペギー葉山の「学生時代」の
歌とともに仲間と一緒に帰宅するイメージとして思い出
として残る。

 

【脚注及びリンク】
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  1. 「私の住む開出今」へようこそ 開出今の歴史
  2. 彫刻家 清水九兵衛 Wikipedia
  3. 橋と欄干
  4. 橋梁維持管理技術の現場検証・評価の結果 国
    土交通省
  5. 平成 28年度 主要事業 彦根市
  6. 都市づくりの基本方針(全体構想) 彦根市
  7. 橋梁長寿命化修繕計画による対策橋梁について
    滋賀県
  8. 彦根市都市計画道路網見直し検討調査
  9. 「地域資源・交通拠点等のネットワーク化による
    国際観光振興方策に関する研究」国土技術政策総
    合研究所 プロジェクト研究報告 2008.05.21
  10. 「歴史まちづくりのてびき(案)」ISSN 1346-73
    28 2013.11.13
  11. 歴史まちづくりの特性の見方・読み方 国土技術
    政策総合研究所 2013.04.11
  12. 「まちづくりはひとづくり」をめざし 市民主導
    のまち創る-近世城下町 彦根市本町地区の2例の
    場合-(これからの都市づくりと都市計画制度 全
    国市長会) 中島一 2005.05.09
  13. List of cities with defensive walls Wikipedia
  14. ヨーロッパ100名城 Wikipedia 
  15. 中国の城郭都市 : 殷周から明清まで 愛宕元著
  16. 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
  17. 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
  18. ドイツ流 街づくり読本  水島信
  19. 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  20. 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
  21. 都市計画-1 日本の都市計画制度の概要 大谷英一   
  22. 都市計画-2 都市の歴史と都市計画 大谷英一
  23. 都市計画の理論 系譜と課題 高見沢実編集
  24. 「協働的プランニング」の都市計画理論 Patsy He-
    aley ,“Collaborative Planning”2010.02.13
        
  25. 第4回 リスク社会論 ベック・ギデンズ・ルーマ
    ンの「リスク」論(現代都市文化論演習 2009)筑
    和 正格 2010.05.25
     
  26. ビフォア・セオリ 現代思想の<争点> モダンと
    ポストモダン 慶應義塾大学出版会|人文書
     
  27. 道路をどうするのか 五十嵐敬喜・小川明雄 岩波
    新書
  28. 日本の道路史 武部健一 中公新書
  29. 道のユニバーサルデザイン 鈴木敏 技報堂
  30. 道路が一番わかる 窪田陽一 技術評論社
  31. 「道路」についての国際比較 藤井聡 2010.3.14
  32. 彦根市都市計画道路網見直し指針 
  33. 地域別のまちづくり方針(地域別構想)-彦根市 
  34. 彦根市新市民体育センター整備基本計画 2016.10.31 
  35. 彦根市立図書館|簡易検索
  36. 武雄市図書館3年連続赤字796万円 佐賀新聞
    2016.07.16
     
     

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