
1.プロローグ
2.バイオマス発電ビジネスの期待と現実
2-1 難しい間伐材の入手
「間伐(かんばつ)」とは樹木の健全な発達を促すために、
一部の木を伐ること。間伐をしないと木が成長するにつ
れ木の根元に方に太陽の光が届かなくなる。すると下草
が生えず、表土の保水力が低下し山崩れなどの原因にな
る。
「間伐」に対し、育った木を売るために伐ることを「主伐
(しゅばつ)」と言う。主伐の方法は、「皆伐(かいば
つ)」と「択伐(たくばつ)」がある。「皆伐」は、対
象とする区画の木を全て伐る方法。「択伐」は対象とな
る区画の中でも、一定の基準で木を選び、伐っていく方
法である。
間伐によって伐られた間伐材は、通常は山にそのまま伐
り捨てられている。全国で年間2000万立方メートル、東
京ドームの容積で換算すると約16個分の間伐材が毎年
森林に放置され続けていると言われている。ところが、
放置するしか選択肢がないのが実情である。
間伐前と間伐後の上写真を見ると分かりやすいが、密集
して木が生えている状態で、良い木を傷つけないように
悪い木だけを運び出すのが非常に難しい。丁寧に運び出
さないと残した良質材を痛めてしまう。手間もコストも
かかるので、間伐材を運び出すことができない。
これらの間伐作業工程は次の3工程にわけ、影響を及ぼ
す要因を、①木の大きさ、②搬出路までの距離、③貯木
場までの搬出距離、④トラック運搬距離がある。
- 伐倒(木寄せ)造材工程:立木を伐倒し、必要な
らば、木寄せを行い、造材する作業工程が含まれ
作業見積要因として、① 立木の胸高直径、②
搬出路までの集材距離が考えられる。 - 丸太搬出工程:造材された丸太を運搬車に積み、
林道端の貯木場まで搬送し、椪積みする作業工程
が含まれ、作業見積要因として、①積み込み位置
から貯木場までの搬出距離が考えられる。 - トラック運材工程
例えば、一般車が入れないほとんど舗装されていない険
しい山道がほとんど。伐った木を運ぶには、人の手で、
作業道を作る必要があるが地層条件でその作業は大きく
左右される。軟弱な地層では、雨が降ると膝まで浸かっ
てしま。岩場、瓦礫の地層では落石の危険性が高い(下
図、作業道開設:松本法域森林組合)。
つぎに、間伐作業用に重機を運び込む。大規模伐採を行
う場合には、重機や大型車などの使用が不可欠となる。
重機には伐採を行うものから伐採後の樹木を任意の場所
へ移動させるものなどがあるが、中には最先端の技術に
よりまるでロボットのようにあらゆる作業を自動で行っ
てくれるものまで存在する。その後パッカー車などを使
用する事で、ゴミなどを効率良く処分し、作業効率の向
上を図るす。これらは、購入/レンタルの選択配備があ
るが、使用には専用免許/資格が必要になる。
写真:間伐作業用代表重機(上/中/下:ユンボ/クラ
ップ/スイングヤータ)
例えば、上写真/下のスイングヤータという重機の先端
にワイヤーがついた機械で慎重に本を引っ張っていく。
そのあとプロセッサーという機械で、まず枝葉を伐り落
としてから、何メートル間隔で伐るか指示をして、等間
隔に伐っていく。それを更に重機で持ち上げながら木の
品質を見極め、家などを造るための建築材とバイオマス
材に分けるのだが簡単に集められない。
2-2 間伐に補助金:神奈川県の事例
神奈川県では水源を守るという理由で、水源環境保全税
という予算があり、皆伐には補助金がつかないが、間伐
すると補助金が付与されている。それだけはない、前出
の Bioフォレステーション株式会社では「列状間伐」と
いう方法――2列伐って4列残す、2列伐って4列残す
…を繰り返していく間伐を行う。この方法が優れている
のは2列伐るとそこで伐った木を、他の木を傷めずに搬
出できる反面、間伐した木を搬出しやすいのがメリット
だが、優良木を伐ってしまったり、不良木が残ってしま
うというデメリットがある。それでも間伐をしないより
は、この方法による間伐法が優れている。間伐前と後の
風景の下写真では、確かに間伐したあとは、森に光が入
りかなり明るくなっている。
こうして、間伐材を、木質バイオマス発電燃料に使用す
ることで、調達価格が13円から32円になる制度で合う
採算性が確保でき、森林保全→水源保護→里山活性化→
過疎化解消→人為的温暖化ガス排出削減→持続可能社会
を実現させようとする。
この項つづく
【エピソード】
● 小規模バイオマス:排熱活用とガス化で採算確保
エネルギー関連事業を展開する洸陽電機は、このほど同
社が計画中の木質バイオマス(ガス化)発電事業に、グ
リーンファイナンス推進機構から、3億9千万円の出資
を受ける。このプロジェクトは、洸陽電機が地元企業な
どと共同により宮崎県串間市で行う、間伐材を中心とし
た未利用バイオマス資源を活用した小規模(発電規模
2000kW未満)な木質バイオマス(ガス化)熱電併給事業。
小規模木質バイオマス発電事業は、5000kW(キロワット)
以上の木質バイオマス発電事業に比べて、スケールメ
リットが働かず十分な収益性が得られないことなどを理
由として、全国的な普及が進んでいない。同プロジェク
トでは、発電時の排熱や木材加工時の端材処理理により
発生する熱をバイナリー発電や燃料となるペレット加工
時の乾燥に活用すること、加えて木質燃料をガス化にす
ることでより高効率かつ安定的な事業を目指す。
尚、事業による二酸化炭素削減効果は年間7,478トンを想
定。
【脚注及びリンク】
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- かながわの水源環境の保全・再生をめざして 神奈川
県2017.02.23 閲覧 - 2017年度のFIT買取価格、例年通り委員会案で決定
2019年度まで発表 環境ビジネス 2017.03.15 - 再エネ事業を地域主導型から 地域貢献型へ PHP総研
2014.03.05 - 木質バイオマスエネルギー利用事例集 - 林野庁 2013.
04.23 - 木質バイオマスの熱利用 - 林野庁 2015.06.25
- メガソーラーの収益を地域に還元、自治体と電力会社
が手を結ぶ スマートジャパン 2014.12.09 - 滋賀県再生可能エネルギー振興戦略プラン 〔概要
版〕 2013.05.07 - 地方自治体の地域エネルギー政策推進に向けた取組
状況 環境省 2015.03.30 - 更なる再生可能エネルギーの導入拡大に向けた 政策
の方向性について 平成27年4月14日 資源エネルギー
庁 2015.09.10 - 滋賀県のバイオマスタウン 近畿農政局 2017.03.23閲覧
- 滋賀県初の木質バイオマス発電所稼働 地元活性化へ
の貢献にも期待 産経WEST 2015.02.12 - バイオマス発電ビジネスのリアル 環境ビジネス2017.sp
- Bioフォレステーション株式会社 公式ホームページ
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