今日から、愛しい彼は、仙台ですね。
たっぷり笑顔で、
たっぷりはっちゃけて、
たっぷり暴れまくって、
跳んで跳ねて頂きたいな。
そこへ行けない私は、かなり、我慢して、
妄想で遊ぶことにします。
さて、
本日は、長編の続きを。
懐かしくて、せつない恋に戻る彼に、会ってください。
とりあえず、でも、
フィクションで、ただの小説ですから、
無論のこと、実在の人物とは、一切、関係ありませんので、
そこは、お間違えのないように。
お付き合いくださる方は、続きから、どうぞ。
携帯電話が着信を告げる。
「ねえ、鳴ってるわよ?」
「放っといてええよ。メールやし」
「誰からか、分かるの? 見なくて平気?」
「知らん。・・・・・・けど、どうせ大したこと、ないやろ」
「そう?」
すばるの部屋。
一人暮らしの、その部屋は、
意外と小奇麗に片付いていて、
それは、
高校時代のすばるからは、あまり、想像できなかった。
「なにしてんの」
座りもせず、立ったままの智香に、
すばるは、声をかけた。
「どこでもええから、座ったら? 今、飲むもん、入れるし」
言いながら、小さなキッチンに立ったすばるは、
慣れた様子で、コーヒーをたてはじめた。
部屋にたちこめるコーヒーの香りに混じって、
かすかに、煙草の匂いがする。
「煙草、吸うんだね」
「ん・・・。まあ、本数は多くないけどな」
智香の知らない、すばるの匂い。
それは、
高校を卒業してからの、2年という時間そのものだった。
智香が高校を卒業して、県外の大学に進学したために、
いつしか、会う回数も、連絡も途切れがちになり、
自然消滅した形の、
すばると、智香。
「今日は、どうしたん? 大学、まだ始まらんの」
マグカップをふたつ、
すばるは小さなガラスのテーブルに置いた。
「すばるだって、まだ、でしょ?」
「ん? 俺んトコは、もう、始まるで。
講義自体は、まだやけど、初めのややこしい説明のやつが、な。
学生課やら就職課やら、なんか、ようけ予定に入ってたわ」
「どこも一緒、ね。サークルは? 相変わらず、球入れしてんの?」
「球入れって、バスケのことか。ほかに、言い様あるやろ」
「だって、大学のサークルなんて、ほとんどお遊びに近いじゃない。
体育会系の、有名どころなら、別だけど」
「相変わらず、口、悪いんやな」
窓を少し開けて、
外の風を部屋に入れる。
暖かなひだまりに、
春風の冷たさが、心地よく流れ込む。
「窓、開けたりして、ええの? 花粉症、治ったん?」
「治っては、おらんけど、な。
注射、打ってもらうようになったら、前よりはラクになったわ」
「良かったわね。前は、この時期、廃人同然だったものね」
「あのな、おまえ。もうちぃっと、口、直したほうがええで。
嫁の貰い手、無くなんで」
「ええわ。そしたら、すばる、貰ってくれるんでしょ?」
智香がまっすぐに、すばるを見つめた。
一瞬の間。
智香が、ケラケラ、笑い出した。
「もう! すばる。ツッコんでくれんと!!」
「あ、ああ、すまん、せやって、突然・・・」
「イヤやわ、ツッコミ、下手なんは、変わらんやん」
笑い転げる智香に、
「しゃあないやんけ。慣れてへんねんから」
すばるは、少々、ふてくされた。
「わかった、わかった。機嫌、直そ?」
智香は、すばるのそばに来て、
寄りかかるようにして、顔を見上げた。
「ごめんね、笑ったりして。・・・・・・でも、安心した。
昔のままのすばるでいてくれて」
「成長してへんって、言いたいんか?」
「まあね、背も、ちっちゃいまんまやし」
「おい」
「うそ。そういうことじゃなくて」
「ほな、なに?」
「そんなに拗ねんの止めて」
「別に、拗ねてなんか・・・」
横を向きかけたすばるの顔を、
智香は、じっと、見つめる。
「そうやって、いっつも、私から顔逸らす、すばるの横顔、
あの頃、見るの、辛かったな」
智香の言葉に、すばるは応えなかった。
代わりに、
冷めかけたコーヒーを一口飲んだあと、
手近にあった煙草を一本抜き取って、火を点けた。
吐き出された紫煙が、
その匂いとともに薄く広がっていく。
智香は、寄り添うように、すばるの肩に、頭を預けた。
「自分勝手、だったよね。
忙しくて、新しい生活に慣れるのに必死で。
すばるがくれたメールに、返事もしなくて。
ゴールデンウィークも、夏休みも・・・・、ううん、
帰ろうと思えば、週末だって、いつだって帰って来れるのに、
そうしなかった。
すばるや、みんなに、ホントは、会いたかったのに、
会う機会を、自分から放棄してた。
すばるは、いつも、優しいメールだけ、くれた、のに・・・」
すばるの手にした煙草が、
次第に短くなってゆく。
「なんで、今日、あそこにおったん?」
煙草を灰皿に押し付け、
すばるは、智香に訊いた。
高校生だった二人が、
休日の待ち合わせに使った公園。
「桜、・・・・・・見たくなって」
高校から少し離れた、大型スーパーの裏。
なんの変哲もない、小さなコドモだって、ろくに遊びに来ないような、
代わり映えのしない公園。
だけど、桜の季節だけ。
そこには、空の青と、
うす紅の花の色が鮮やかに調和して、
広がる春の光とともに、
奇跡のようなスペースが描き出される。
ほんのひととき。
それと分かって、そこに立たなければ、
気づきもしないような風景だけれど。
「桜なんか、どこで見たって、同じやろ」
分かっていて、すばるは、少し意地悪を言った。
「花見やったら、もっと、有名なとこのほうが、キレイやのに」
「そう・・・だよね、可笑しいよね。
でも、見たかったのは、あの公園の桜、だったんだ」
「なんか、あったんか?」
すばるの言葉に、解き放たれかのように、
智香の目から、涙が溢れ出した。
「ごめ・・・、いや、なんで、涙なんか。
・・・泣くつもりなんか・・・」
しきりに涙を止めようと目をこする智香の手を制し、
すばるは、その肩に、手を回して、抱き寄せた。
「泣きたいときは、ちゃんと、泣かんと。
いつまでも、余計に苦しいだけやぞ」
すみません、いったん、ここまでで。
たっぷり笑顔で、
たっぷりはっちゃけて、
たっぷり暴れまくって、
跳んで跳ねて頂きたいな。
そこへ行けない私は、かなり、我慢して、
妄想で遊ぶことにします。
さて、
本日は、長編の続きを。
懐かしくて、せつない恋に戻る彼に、会ってください。
とりあえず、でも、
フィクションで、ただの小説ですから、
無論のこと、実在の人物とは、一切、関係ありませんので、
そこは、お間違えのないように。
お付き合いくださる方は、続きから、どうぞ。
携帯電話が着信を告げる。
「ねえ、鳴ってるわよ?」
「放っといてええよ。メールやし」
「誰からか、分かるの? 見なくて平気?」
「知らん。・・・・・・けど、どうせ大したこと、ないやろ」
「そう?」
すばるの部屋。
一人暮らしの、その部屋は、
意外と小奇麗に片付いていて、
それは、
高校時代のすばるからは、あまり、想像できなかった。
「なにしてんの」
座りもせず、立ったままの智香に、
すばるは、声をかけた。
「どこでもええから、座ったら? 今、飲むもん、入れるし」
言いながら、小さなキッチンに立ったすばるは、
慣れた様子で、コーヒーをたてはじめた。
部屋にたちこめるコーヒーの香りに混じって、
かすかに、煙草の匂いがする。
「煙草、吸うんだね」
「ん・・・。まあ、本数は多くないけどな」
智香の知らない、すばるの匂い。
それは、
高校を卒業してからの、2年という時間そのものだった。
智香が高校を卒業して、県外の大学に進学したために、
いつしか、会う回数も、連絡も途切れがちになり、
自然消滅した形の、
すばると、智香。
「今日は、どうしたん? 大学、まだ始まらんの」
マグカップをふたつ、
すばるは小さなガラスのテーブルに置いた。
「すばるだって、まだ、でしょ?」
「ん? 俺んトコは、もう、始まるで。
講義自体は、まだやけど、初めのややこしい説明のやつが、な。
学生課やら就職課やら、なんか、ようけ予定に入ってたわ」
「どこも一緒、ね。サークルは? 相変わらず、球入れしてんの?」
「球入れって、バスケのことか。ほかに、言い様あるやろ」
「だって、大学のサークルなんて、ほとんどお遊びに近いじゃない。
体育会系の、有名どころなら、別だけど」
「相変わらず、口、悪いんやな」
窓を少し開けて、
外の風を部屋に入れる。
暖かなひだまりに、
春風の冷たさが、心地よく流れ込む。
「窓、開けたりして、ええの? 花粉症、治ったん?」
「治っては、おらんけど、な。
注射、打ってもらうようになったら、前よりはラクになったわ」
「良かったわね。前は、この時期、廃人同然だったものね」
「あのな、おまえ。もうちぃっと、口、直したほうがええで。
嫁の貰い手、無くなんで」
「ええわ。そしたら、すばる、貰ってくれるんでしょ?」
智香がまっすぐに、すばるを見つめた。
一瞬の間。
智香が、ケラケラ、笑い出した。
「もう! すばる。ツッコんでくれんと!!」
「あ、ああ、すまん、せやって、突然・・・」
「イヤやわ、ツッコミ、下手なんは、変わらんやん」
笑い転げる智香に、
「しゃあないやんけ。慣れてへんねんから」
すばるは、少々、ふてくされた。
「わかった、わかった。機嫌、直そ?」
智香は、すばるのそばに来て、
寄りかかるようにして、顔を見上げた。
「ごめんね、笑ったりして。・・・・・・でも、安心した。
昔のままのすばるでいてくれて」
「成長してへんって、言いたいんか?」
「まあね、背も、ちっちゃいまんまやし」
「おい」
「うそ。そういうことじゃなくて」
「ほな、なに?」
「そんなに拗ねんの止めて」
「別に、拗ねてなんか・・・」
横を向きかけたすばるの顔を、
智香は、じっと、見つめる。
「そうやって、いっつも、私から顔逸らす、すばるの横顔、
あの頃、見るの、辛かったな」
智香の言葉に、すばるは応えなかった。
代わりに、
冷めかけたコーヒーを一口飲んだあと、
手近にあった煙草を一本抜き取って、火を点けた。
吐き出された紫煙が、
その匂いとともに薄く広がっていく。
智香は、寄り添うように、すばるの肩に、頭を預けた。
「自分勝手、だったよね。
忙しくて、新しい生活に慣れるのに必死で。
すばるがくれたメールに、返事もしなくて。
ゴールデンウィークも、夏休みも・・・・、ううん、
帰ろうと思えば、週末だって、いつだって帰って来れるのに、
そうしなかった。
すばるや、みんなに、ホントは、会いたかったのに、
会う機会を、自分から放棄してた。
すばるは、いつも、優しいメールだけ、くれた、のに・・・」
すばるの手にした煙草が、
次第に短くなってゆく。
「なんで、今日、あそこにおったん?」
煙草を灰皿に押し付け、
すばるは、智香に訊いた。
高校生だった二人が、
休日の待ち合わせに使った公園。
「桜、・・・・・・見たくなって」
高校から少し離れた、大型スーパーの裏。
なんの変哲もない、小さなコドモだって、ろくに遊びに来ないような、
代わり映えのしない公園。
だけど、桜の季節だけ。
そこには、空の青と、
うす紅の花の色が鮮やかに調和して、
広がる春の光とともに、
奇跡のようなスペースが描き出される。
ほんのひととき。
それと分かって、そこに立たなければ、
気づきもしないような風景だけれど。
「桜なんか、どこで見たって、同じやろ」
分かっていて、すばるは、少し意地悪を言った。
「花見やったら、もっと、有名なとこのほうが、キレイやのに」
「そう・・・だよね、可笑しいよね。
でも、見たかったのは、あの公園の桜、だったんだ」
「なんか、あったんか?」
すばるの言葉に、解き放たれかのように、
智香の目から、涙が溢れ出した。
「ごめ・・・、いや、なんで、涙なんか。
・・・泣くつもりなんか・・・」
しきりに涙を止めようと目をこする智香の手を制し、
すばるは、その肩に、手を回して、抱き寄せた。
「泣きたいときは、ちゃんと、泣かんと。
いつまでも、余計に苦しいだけやぞ」
すみません、いったん、ここまでで。
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