ここから始まる物語は、すべてフィクションです。
実在の人物とは、一切、関係ありません。
ご承知置きください。
今日は、プロローグのシーン2になります。
本編は、続きから、どうぞ。
遊園地を出たあづさは、駐車場の片隅に立っていた。
春まだ浅い3月。
昼間は暖かな日差しに溢れていたが、
夜ともなれば、
冬の名残りの冷たい風が、吹いている。
「誰を待ってんの?」
不意に背後から声をかけられて、
あづさは、驚いて振り向いた。
立っていたのは、見知らぬ青年。
だがそれは、
今日遊園地にいるあいだに、何度も目のあった顔だ。
それにしても、
このヒト・・・・、どっかで・・・?
「送ってやろうか? たぶん、帰る方向、一緒やと思うで」
(は?
何言ってんの?
ナンパなら、他でやって、面倒くさい。
そんな気分とちゃうし)
声には出さず、
あづさは青年を無視して、他へ歩き出した。
青年は、何か言いたげだったが、
あとを追っては来なかった。
ひときわ明るい街頭の下に来た時、
車のクラクションが、短く鳴った。
運転席には、従兄の信五。
助手席には、その彼女。
バックシートに乗り込んだあづさに、
美也子が声をかけた。
「ごめんね、遅くなってもうて。
ちょこっと、遠出してたもんやから」
「ええねん。こいつに謝ることなんか、あらへんがな」
「ええ? だって、だいぶ待ったよねえ?」
「ヒトのデート、邪魔しよってから。
ちょっとくらい、待っとけっちゅうねん。
大体やなあ、なんで、俺らが、こいつの迎えに来んとあかんねん。
電車で帰ったかて、たいしたことない距離やぞ?
てか、電車のが早いやろ」
「信ちゃん、ごちゃごちゃ、うるさい。
オンナノコには、いろいろ、あんのよ。
一人で帰りたくない時やって、あるわ」
なにやら、まだ文句を言いかけた信五だったが、
とりあえず、車を発進させた。
デートの途中に入った、あづさからのお迎えコール。
迎えに行く気なんか、さらさら無かった信五を促してくれたのは、美也子だ。
「美也子は、いっつも、そうや。
あづさには、甘すぎるわ」
「しょうがない。
妹みたいに可愛いんやから、ええでしょ。
あんまり文句ばっかり言うと、デート、してあげんよ?」
「そんなん殺生やで。
やっと二人きりで会えるとこまで、こぎつけたのに。
今まで、いっつも、グループ交際ばっかしやってんぞ」
それまで、
黙って二人の会話を聞いていたあづさが、
突然、
泣き出した。
「ちょっ・・・なに!? どないしてん? 腹でも痛いんか?」
バックミラーを覗き込んだ信五が、
心配そうな声を出す。
「信ちゃん、鈍感すぎ。黙っとき」
「はぁ?
せやけど、泣いとるやんけ。 どないかしたんちゃうか?」
「オンナノコには、いろいろあるって、言うたでしょ?」
「ワケ分からんわぁ」
美也子が、振り返らずに、言った。
「気の済むまで泣いたらええよ。
ここには、信ちゃんと私しかおらんから。
他の人の目、気にせんと済むやろ?」
美也子の言葉をきっかけに、
あづさの目から、堰を切ったかのように、涙が溢れ出す。
横で不審そうに運転している信五に、
美也子は言い放つ。
「わからんかったら、わからんでもええけど。
ちょこっとだけ、遠回りして帰ってやってな。
なるべく、ゆっくりね」
「お・・・ぉぉ」
信五の車が、
これでもか、というくらいに遠回りをして、
あづさの家に着いた頃には、
涙は、すっかり乾いていた。
「ありがとう、迎えに来てくれて。
美也子さんがいてくれてよかった」
車から降り際、
あづさは美也子に、礼を言った。
「デート、邪魔しちゃって、ごめんなさい」
「気ィ、済んだ?」
「泣いたから、大丈夫」
「焦ったらあかんよ。必要なんは、時間薬やからね」
「うん」
そこに信五が口を挟む。
「何のこっちゃねん、二人とも。
ちゃんと説明せえや」
「信ちゃんは、これやからねえ」
美也子とあづさは、顔を見合わせて、くすくす笑った。
走り去る信五の車を見送って、
あづさは、空を見上げた。
細く差し込む、たよりない月の光。
漆黒の空に、まばらに輝く星々。
月の満ち欠けに隠された、謎めいた話も、
どの星がどの星座で、
どんな神話があるのかまでも、
教えてくれたのは、亮だった。
夜空を見上げて、
立ち尽くすあづさの中から、
亮の存在が消えることは、
まだしばらく、無いのかもしれなかった。
プロローグ終
2-1は、後日。
実在の人物とは、一切、関係ありません。
ご承知置きください。
今日は、プロローグのシーン2になります。
本編は、続きから、どうぞ。
遊園地を出たあづさは、駐車場の片隅に立っていた。
春まだ浅い3月。
昼間は暖かな日差しに溢れていたが、
夜ともなれば、
冬の名残りの冷たい風が、吹いている。
「誰を待ってんの?」
不意に背後から声をかけられて、
あづさは、驚いて振り向いた。
立っていたのは、見知らぬ青年。
だがそれは、
今日遊園地にいるあいだに、何度も目のあった顔だ。
それにしても、
このヒト・・・・、どっかで・・・?
「送ってやろうか? たぶん、帰る方向、一緒やと思うで」
(は?
何言ってんの?
ナンパなら、他でやって、面倒くさい。
そんな気分とちゃうし)
声には出さず、
あづさは青年を無視して、他へ歩き出した。
青年は、何か言いたげだったが、
あとを追っては来なかった。
ひときわ明るい街頭の下に来た時、
車のクラクションが、短く鳴った。
運転席には、従兄の信五。
助手席には、その彼女。
バックシートに乗り込んだあづさに、
美也子が声をかけた。
「ごめんね、遅くなってもうて。
ちょこっと、遠出してたもんやから」
「ええねん。こいつに謝ることなんか、あらへんがな」
「ええ? だって、だいぶ待ったよねえ?」
「ヒトのデート、邪魔しよってから。
ちょっとくらい、待っとけっちゅうねん。
大体やなあ、なんで、俺らが、こいつの迎えに来んとあかんねん。
電車で帰ったかて、たいしたことない距離やぞ?
てか、電車のが早いやろ」
「信ちゃん、ごちゃごちゃ、うるさい。
オンナノコには、いろいろ、あんのよ。
一人で帰りたくない時やって、あるわ」
なにやら、まだ文句を言いかけた信五だったが、
とりあえず、車を発進させた。
デートの途中に入った、あづさからのお迎えコール。
迎えに行く気なんか、さらさら無かった信五を促してくれたのは、美也子だ。
「美也子は、いっつも、そうや。
あづさには、甘すぎるわ」
「しょうがない。
妹みたいに可愛いんやから、ええでしょ。
あんまり文句ばっかり言うと、デート、してあげんよ?」
「そんなん殺生やで。
やっと二人きりで会えるとこまで、こぎつけたのに。
今まで、いっつも、グループ交際ばっかしやってんぞ」
それまで、
黙って二人の会話を聞いていたあづさが、
突然、
泣き出した。
「ちょっ・・・なに!? どないしてん? 腹でも痛いんか?」
バックミラーを覗き込んだ信五が、
心配そうな声を出す。
「信ちゃん、鈍感すぎ。黙っとき」
「はぁ?
せやけど、泣いとるやんけ。 どないかしたんちゃうか?」
「オンナノコには、いろいろあるって、言うたでしょ?」
「ワケ分からんわぁ」
美也子が、振り返らずに、言った。
「気の済むまで泣いたらええよ。
ここには、信ちゃんと私しかおらんから。
他の人の目、気にせんと済むやろ?」
美也子の言葉をきっかけに、
あづさの目から、堰を切ったかのように、涙が溢れ出す。
横で不審そうに運転している信五に、
美也子は言い放つ。
「わからんかったら、わからんでもええけど。
ちょこっとだけ、遠回りして帰ってやってな。
なるべく、ゆっくりね」
「お・・・ぉぉ」
信五の車が、
これでもか、というくらいに遠回りをして、
あづさの家に着いた頃には、
涙は、すっかり乾いていた。
「ありがとう、迎えに来てくれて。
美也子さんがいてくれてよかった」
車から降り際、
あづさは美也子に、礼を言った。
「デート、邪魔しちゃって、ごめんなさい」
「気ィ、済んだ?」
「泣いたから、大丈夫」
「焦ったらあかんよ。必要なんは、時間薬やからね」
「うん」
そこに信五が口を挟む。
「何のこっちゃねん、二人とも。
ちゃんと説明せえや」
「信ちゃんは、これやからねえ」
美也子とあづさは、顔を見合わせて、くすくす笑った。
走り去る信五の車を見送って、
あづさは、空を見上げた。
細く差し込む、たよりない月の光。
漆黒の空に、まばらに輝く星々。
月の満ち欠けに隠された、謎めいた話も、
どの星がどの星座で、
どんな神話があるのかまでも、
教えてくれたのは、亮だった。
夜空を見上げて、
立ち尽くすあづさの中から、
亮の存在が消えることは、
まだしばらく、無いのかもしれなかった。
プロローグ終
2-1は、後日。
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