すばるに恋して∞に堕ちて

新たに。また1から始めてみようかと。

長編3-1

2009-05-18 08:49:31 | 小説・長編

本日は、娘の高校のPTAで、午後から夜まで出ずっぱりです。
更新も、おそらくは出来ないでしょう。

というわけで。

書き終わっている長編の続きを。

前回からシーンが変わります。

注意事項は、お分かりでしょうが、
あくまでも、小説ですので、
実在の人物とは、一切、関係はありません。

お付き合いくださる方は、続きから、どうぞ。



レポートと後期試験も終え、
進級に必要な単位もなんとか無事に満たし、
暇を持て余しつつも、バイトに励んでいたすばるに、
高校時代のクラブ仲間からOB会の連絡が入ったのは、
長い春休みも、少々飽きて来た頃だった。

ふたつ返事で参加した、その日。

地元の遊園地で、
妙に気になるオンナノコの姿を見かけた。

家族連れやカップル、仲間同士のグループに混じって、
ひとりきりで、
次々とアトラクションに乗るオンナノコ。

・・・・・・どっかで、見た、こと、ある・・よなあ???

決して、楽しそうとはいえない雰囲気の、
その姿は、
アトラクションで一緒の列に並ぶたびに、目に入るようになり、

ゲームコーナーで、
何度もクレーンゲームをしては、うまく取れずに、
小さなため息とともに、その場を離れていくのを見たときには、
思わず、自分が人見知りなことも忘れて、
声をかけて、その景品をとってやろうか、とも思ったほどだ。

閉園の頃には、
なんとなく、目が、その姿を探してしまうまでになった。


それが、誰か、を思い出したのは、
閉園後の駐車場で、
人待ち顔で立っているそのコを見たときだ。

後輩の練習相手に借り出されて、
久しぶりに高校に顔をだした時、
体育館の隅で、所在なげに立っている姿を見た。

それが、一年マネの友人で、
練習が終わるのを時々待ってることも、
ゼミ仲間の村上の従妹だってことも、
あとで聞いた記憶があった。

だから、なんとなく、
放っておけない気分になって、声を掛けた。

あとから考えたら、
小さなナンパでしか、なかったけれど。

あのまま、一人で帰してしまうのは、
心配になる雰囲気では、あったのだ。

大きなお世話と、言えば、言えなくも無かった。

けれど、すばるにとっては、
声を掛けるだけでも、
大概、『勇気のいること』だった。

なにしろ、極度の人見知りだったから。

掛けた声も無視されて、
彼女が走り去るとき、
彼女の足元からだろうか、
細い銀のチェーンが滑り落ちた。

拾い上げたそれは、
外灯の灯りに、かすかな輝きを放った。

見れば、
小さなハート型の飾りに埋め込まれた細かなクリスタル。

・・・・・・大切なもんと、ちゃうんか?

追いかけようとした、そのとき、

「何してんねん、すばる。行くぞ、早よ来いや」

一緒に行ったメンバーに呼び止められた。

「どないしてん?」

「あぁ・・・ええわ。何でもないわ」

「次行くって、みんな言うてるで。すばる、どないする?」

「そやな。みんな揃うんも久しぶりやもんな。行くわ」

銀のチェーンをポケットに仕舞うと、
すばるは仲間の方に戻った。

      あとで、あのマネージャーに連絡して、渡してもらったらええわ。






3-2へ続く。



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