すばるに恋して∞に堕ちて

新たに。また1から始めてみようかと。

長編 1-1

2009-03-18 20:50:36 | 小説・長編
はじめに

ここから始まる物語は、
作者が四半世紀も前に、とある同人誌に投稿したものの、
同人誌の休刊に伴い、
未完成のまま放置されていた小説に、
大幅な修正と、加筆をしました。

登場人物の名前に、聞き覚えのある方もあるでしょうが、
まったくのフィクションであり、
某芸能事務所所属の関西男前八人組とは、
まったく、何の関係もないことを、ご承知置きください。


本編は続きから、です。
今回は、プロローグ・シーン1です。







(1-1)



色鮮やかなライトに照らされて、暗闇に浮かび上がる観覧車。

大きく光るデジタルの時計。

少し寂しげなオルゴールの音楽にのせて、
場内アナウンスが、閉園時刻の近いことを告げる。



あづさは、ひとり、メリーゴーランドの馬車に座り、
携帯の画面を見つめたまま、ぼんやりとしていた。

「亮・・・、これ、冗談じゃなかったんだね」





FROM:亮
TO:あづさ



ごめんな。
こんなこと、メールで言っていいんか、わからんけど、

今日の遊園地の約束、
なかったことにしてほしい。
今日だけじゃなくて、これからも、
もう、あづさとは、会わへんって、決めた。
俺ら、もう、終わりにしよう。

理由は、きっと、言っても伝わるとは思えんし、
どんな理由をつけても、
あづさは納得せぇへんやろし。
全部、俺が悪い事にしといてええから、
もう、別れよう。
終わりにしよう。





亮からのメールが入ったのは、
もう、あづさが遊園地に着いた後だった。

はじめは、なんのことか、どういう意味か判らなくて、
何度も何度も、メールを読み返した。
一言一句、読み飛ばさないように、
ゆっくりと心の中で、反芻しながら。

なかなか、言葉が頭に入ってこなくて、理解できなかった。

いや、正しくは。

メールに綴られた亮の言葉の意味を、
理解したくなかったために、
拒否反応を起こしていたのかも、しれなかった。



呆然とした思考回路の中、
慌てて亮にメールをしたけれど、
返信が返ってくるはずもなく。

電話をかけても、
『電波の届かないところにおられるか、電源が入っていません』
という、
お決まりのアナウンスが流れるだけだった。

そのまま、亮の家に押しかけて、
直接、亮の口から真実を聞きたいとも思ったけれど、
亮が家にいるとは、限らないし、
それに、
あまりに見苦しいと思いなおして、それは、やめた。

一旦言い出したら、滅多なことでは後に退かない亮の性格は、
誰より、あづさが知っている。

亮が、『終わりだ』と言ったら、
それは本当に終わりなんだと気付くまで、

それほど時間はかからなかったけれど、

それを自分に納得させている間に、
遊園地は、閉園の時間を迎えてしまった。





楽しそうな家族連れや、
幸せそのものの恋人たちに混じって、
ひとりぼんやりと、
観覧車や、小さなコースターに乗ったりした。

アトラクションに一人で乗る女の子に向けられた、周囲の視線の先に、
時折、
あづさと目が合う顔が、あった。

どこかで見た顔だ、と、
思わないでもなかったが、
なにしろ地元の遊園地だ。

誰がいたって、不思議じゃない。

そんなことより、
なんども、亮と遊びに来た遊園地。

どのアトラクションにも、
亮との思い出があった。

絶叫マシンやコースター、観覧車。
ゲームセンターや、幼児用の汽車にさえも。

『別れよう』 『終わりにしよう』

何度も頭に浮かんでくる、そのフレーズを振りきるように、
あづさは、次から次へと
アトラクションの列に並んだ。

やがて、日が暮れ始めて、
園内に灯りが点き始めた頃、
あづさは、亮にあてて、メールを送った。




FROM:あづさ
TO:亮



わかった。





書きたいこと、
訊いてみたいこと、
知りたいことは、たくさんあって、

なんで?
どうして?
別れるのなんか、イヤやって、

メールに書きたいのを、
一生懸命にこらえて、

一言だけを、送信した。


【相手にメールが届きました】


送信完了の画面を見つめたまま、
あづさは何かを振り払うかのように、かぶりを振り、
亮のアドレスを指定する。


【一件、削除します】


一瞬のためらいの後、
決定ボタンを、

押した。




(1-2へ続く)










2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (のゆから、ままちゃんへ)
2009-03-19 14:42:04
元になってる小説の、誰を、どの名前にしたらしっくり行くのか、
考えてたら楽しくなって、
つい、こんなことになりました。

カメの歩みのように、遅い更新のお話になるかもしれませんが、
よければ、お付き合いください。

実を言えば、まだ、お話の先が私にも見えてないので、

わくわく・ドキドキは私もです。
返信する
Unknown (ままちゃん)
2009-03-18 22:35:43
なんだかワクワク・ドキドキしますっ!!
楽しみですっ!!
頑張ってくださいね{ラブ}
返信する

コメントを投稿