埼玉県八潮市中心部で発生した道路陥没事故。現在、消防隊員が転落したトラック運転手の懸命な救助活動にあたられています。
埼玉県の大野知事は、この事故の原因として、「下水道管の破損に起因すると思われる」とし、県東部の草加市など12市町に対して下水道の使用制限を呼びかけています。
なぜ、八潮市内の事故が、広範囲にわたる下水道の使用制限につながったのでしょうか?
■中川流域下水道の構造が鍵を握る
その背景には、中川流域下水道の構造があります。中川流域下水道(※)は、埼玉県東部11市4町の自治体から排出される下水を、三郷市の下水処理施設に集めて処理する大規模な下水道システムです。
下の図で、中川流域下水道のイメージを作成してみました。
この下水道システムの基幹となる幹線路は、複数のルートに分かれており、最終的に「草加→八潮ルート」と「吉川→三郷ルート」の2ルートに集約され、三郷市にある下水処理施設へと繋がっています。今回、事故が発生した八潮市を通るルートは、そのうちの重要なルートの一つでした。そのため、吉川側を除く広範囲の自治体に下水道の使用制限を呼びかけられています。
- 埼玉県流域下水道管路マップをもとに佐藤憲和が作成
- 緑色の線が幹線路、赤が陥没による通行止め区間、草加市域を黄色で囲みました
■八潮市の事故が下水処理に与える影響
八潮市の幹線路で事故が発生したことで想定される最悪のケースでは、このルートを通って下水処理施設に流れていた下水が滞る可能性があります。そのため、このルートを利用している他の自治体でも、下水を流す量を減らす必要があると判断され、使用制限が呼びかけられた模様です。
陥没した箇所の下水管は5メートル級のとても太い管であり、その管自体に損傷があったのか、マンホールや管のつなぎ目などに何かしらの原因があったのかなど様々想定されますが、現時点で事故原因は不明です。今後、県の事故調査によって明らかとなってくるかと思いますが、その結果によっては、復旧作業や使用制限の内容・期間なども大きく変わる可能性があります。流域自治体としても様々な対応を想定しておく必要があります。
また、県として、事故原因の究明や下水道インフラの点検・整備、流域自治体間の連携強化、万一を想定した下水の逃げ道の確保策など、今後の詳しい調査をもとに同様の事故を防ぐ対策を講じなければなりません。
(※)中川流域下水道は、埼玉県内に8つある流域下水道のうちの1つで、埼玉県の中川下水道事務所が建設・管理に関する業務を行っている。管轄区域は、さいたま市(一部)、川口市(一部)、春日部市、草加市、越谷市、八潮市、三郷市、蓮田市、幸手市、吉川市、白岡市、伊奈町、宮代町、杉戸町、松伏町の11市4町。
(なお、当記事は掲載時点の情報をまとめたものですのでご注意ください。リアルタイムの正確な情報については埼玉県等が公表した情報をご確認ください)