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「みんなでまちづくり」はどこへ?学校給食の民間委託化が市議会で可決

2024年12月17日 | 子育て・教育

今日12月17日の草加市議会で、長栄小学校と新田中学校の給食調理を民間委託化する議案が賛成多数(賛成21人、反対4人)で可決してしまいました。

以下、佐藤憲和がおこなった反対討論の内容です。

 

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<問題点の核心>

  • 情報開示の遅延と不透明性:重要な調査資料が審議後に遅延提出
  • 拙速な決定プロセス:わずか1日で委託化が決定
  • 市民や関係者の意見無視:保護者など当事者に説明なく議案提案
  • 財政上の疑問:民間委託の方がコスト高、財政方針とも整合性なし
  • 民主主義の原則に反し、みんなでまちづくり自治基本条例に違反の疑い

 

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<討論内容>

第88号議案 草加市一般会計補正予算(第7号)について、反対の立場から討論を行います。

長栄小学校と新田中学校のペアスクールの給食調理を直営から民間委託に変更するため、2025年度からの3年間で1億2704万3千円の債務負担行為を設定するものです。

 

■市議会の調査権の侵害

はじめに、市議会の調査権の侵害に対して抗議します。

今回の委託化について時系列で分かる資料を、昨日16日までの期限で執行部に要求していました。しかし、資料が提出されたのは期限後の今日17日です。常任委員会での審議・採決が終わった翌日に資料を提出してきました。

その資料では、11月1日に民間事業者2社に委託の参考見積書の作成を依頼していたことが明記されていた一方で、派遣事業者への調査や、職員再募集の要請などの他の選択肢のアクションは一切履歴がありませんでした。教育委員会が総務部から調理士採用結果を聞いた11月5日以前から、民間委託の方向だけ具体的に動き出していたものです。民間委託ありきであった、あるいは、一面的な検討のみで結論を出したと言える根拠です。

この点は、委員会質疑で「日にちは定かでない」などと、はぐらかし続けられた重要な部分です。都合の悪い事実を意図的に隠していた疑義があります。他にも、この間の答弁と食い違う部分などもいくつかありましたが、今となっては事実を確認することもできません。

斉藤雄二議員が求めていた資料に至っては今現在、ひとつも提出されてきません。

市の責務の放棄、議会の責務に対する妨害行為であり、それら理念を明記している「みんなでまちづくり自治基本条例」違反であり、厳しく抗議します。

 

■責任転嫁

今回の問題は、市が調理士の採用を怠ったことが原因です。その責任を認めず、緊急事態という言葉で装い、民間委託を正当化しようとしています。責任転嫁です。問題の本質から目をそらそうとする行為です。

今年度の採用試験で、教育委員会は正規調理士4人を要望しましたが、試験結果は応募者11人全員を不採用としたことが問題の出発点です。

執行部は、今回は緊急事態だ!緊急事態だから仕方ない!といって、被害者でもあるかのような態度で片付けようとしていますが、行政が緊急事態というべき事案は、自然災害や治安維持上の問題など予期せぬ出来事に対しする事態を言うものです。今回の原因は調理士を採用しなかったこと、そして、これまでの失策にあります。いきあたりばったり、自作自演です。

市役所自身が今回の状況を招いておきながら、市議会がすぐに議決しないと給食が提供できなくなる!弁当になる可能性も!そんな脅しのような、開き直った答弁で迫る執行部の態度に厳しく抗議するものです。

 

■財政上の矛盾

民間委託の方が、かえってコストがかかる可能性があります。しかも、この議案は、市民の大切な税金の適正な使われ方についての十分な検討も議論もなく、急いで提案され決まりかけています。

こちらから調査を求めたことで、中学校給食の1食当たり調理業務経費では、民間委託が251.5円で、直営248.3円より高くなることがわかりました。

市全体で予算15%削減が求められている中であり、市の財政方針と矛盾しています。

教育総務部長の答弁によると、今回の委託化に向けた市長相談でも、経費の議論は一切なかったとのことです。

長期的に見た場合の人材育成など、様々な側面から検討する必要があった点も指摘します。

 

■プロセスの不透明性と拙速性

教育委員会は11月5日に調理士の採用結果を知り、翌日6日には民間委託化の起案書の教育長決済がおこなわれました。わずか1日で委託化が決まりました。あまりにも出来すぎた流れで、議会で「検討」を乱発している執行部とは思えないスピード感です。

起案書の検討内容も、調理士の派遣は「実績がない」「安定して派遣できる保証がない」として却下しています。しかし、公立保育園では保育士の派遣を実施しています。市役所のダブルスタンダードです。職員採用試験の追加実施も「不透明」として却下しています。まるで委託だけノーリスクのような評価で決定しました。

本会議において、「小学校給食の民間委託をさらに進めることはないか?」と質疑したところ、山川市長は委託の検討は必要との趣旨の答弁をされました。この答弁が、わずか1日で道筋が決まった委託化の真意ではないでしょうか。学校給食の民間委託化がさらに広がる疑念を払しょくするどころか、その疑念を確実なものとさせました。

仮に、委託化を進めたいのであれば、計画を作り、私たち議員や市民全体に堂々と明らかにして、賛否両論、合意形成プロセスを踏むべきです。

 

■合意形成プロセスを無視

現役の調理士からは、「職場が失われないか不安」「委託化が進む怖さがあるなかで、草加の調理士になりたいと思う人材が集まるか」「調理士不足が深刻になるのでは」といった声が出ています。

給食関係者からは、現状の直営と委託体制はバランスが取れ、教育委員会や栄養士が主体的に運営している。しかし、委託が増えていけばバランスが崩れ、市と事業者の立場も逆転していく懸念がある。などの意見が寄せられています。これら不安や疑念にも一切答えずに、議案だけが拙速に進められています。

市民への十分な説明や意見聴取も行われていません。議会においても、十分な議論がなされていないまま、採決されようとしています。教育委員会は、先生や保護者・PTAなど当事者には何も説明せず議案提案しました。

合意形成のプロセスを一切無視して、議決だけを求めるやり方は、民主的な手続きを踏んでいない、みんなでまちづくり自治基本条例の趣旨に反します。

 

■みんまち条例違反

今回の件は、単に学校給食の問題にとどまりません。

市民の声も聞かず、民主主義の原則を軽視する、市政運営そのものに対する問題です。このままでは、私たちの住む草加市の将来が危ぶまれます。

委員会審議では、「仮に予算可決後に当事者が反対したらどうなるか」との斉藤議員の質疑に対して、教育総務部長は「反対があっても委託しないというものではない」「進める」と答弁しました。こんな本音が出てしまうこと自体、市役所における市民自治とパートナーシップの放棄です。

また、草加市の最高規範であるみんなでまちづくり自治基本条例違反ではないかとの質疑に対して、教育総務部長はつぎのように説明しました。

  • 今回の委託化に関するプロセスは、緊急的な対応です
  • (自治基本条例で定めている)各分野の基本的な計画に基づいてまち作りを進めますと言う取り組みと性質が異なるものです
  • 説明責任を果たしていこうとしています
  • 直ちに、みんなでまち作り自治基本条例に違反しているというふうには考えておりません

草加市の最高規範である「みんなでまちづくり自治基本条例」は、かつての諸先輩方が築かれた草加市の精神です。勝手に、性質が異なるからその通り進めなくていいというのは、暴論そのものです。そんなルールありません。

そもそも、説明責任を果たすつもりなんて、執行部にはありませんでした。当事者には何も伝えず議案提案して即日先議で採決求めたではありませんか。議会側が、それではおかしいと判断して慎重審議となり、形だけでも当事者10人集めて1回説明し、説明責任果たしたかのような態度をしているだけじゃないですか。こういうのを詭弁と言います。

 

■本質的な解決を

たしかに、各部局内の目の前の課題だけを見れば、必要な人材を確保できなかった、今すぐ結論を出さなきゃいけない、そんな焦りやプレッシャーの中で悪戦苦闘された職員の方々の努力は否定しません。ですが、いくら傷口にばんそうこうを貼っても問題は解決しません。木を見て森を見ず。もっと本質的な部分を広い視野で導く力が今の市役所に不足しているように感じます。

学校給食を、拙速に民間委託化したところで根本的な解決にはなりません。それどころか、不振や不安を広げ、問題を深刻化させてしまいます。

市として、早急に採用試験を再開すること併せて、調理士の待遇改善や人員確保など、根本的な解決策を模索すべきです。

私たち議員のもとに、草加市の職員組合の会報誌が届けられました。そこには、こう書かれてありました。「厳しい状況ですが、人員募集を継続しながら配置をやりくりすれば、組合は、委託をしなくても事業継続が可能と考えています」と。これが現場の声です。一番の解決策です。

市民自治、パートナーシップのまちづくりは、大変な時に、みんなに情報を共有して、こうした思いを頼りに、みんなで乗り越えていくことなんじゃないでしょうか。

今回の市の一連の対応は、民間委託の是非以前の問題でもあります。

みんなでまちづくり自治基本条例の主旨である民主主義を形骸化させ、こどもまんなかを掲げながら、子どもたちを中心とした当事者との対話を無視した今回の補正予算案は、市政運営の理念や大原則を欠いているものであり、認めるべきではありません。

よって、本議案に反対します。

 


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