殿は今夜もご乱心

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手抜き料理・ぶっかけそうめん

2020年09月09日 08時23分48秒 | 手抜き料理
先週の暑い日、同級生の友人ユリちゃんの実家のお寺で

また料理を作った。

この日は予定していなかったが

直前になってユリちゃんから電話があったのだ。


「ねえ…私から電話って、悪い予感がしな…い?」

遠慮がちに切り出すユリちゃんに、私は答える。

「OK、いつ?」

二つ返事どころではない。

結局行くなら、もったいぶることはないじゃないか。


「ええっ?」

驚くユリちゃん。

「一人で行くよ」

「本当に?!」

ユリちゃんはしばらく信じられない様子で

本当?本当?を繰り返してから、日程やおよその人数を伝えた。


平日のその日は、10月に開催する行事の準備。

10人程度が集まって、花飾りを作成するそうだ。

いつもはテイクアウトのお好み焼きかコンビニ弁当だが

マンネリ感はぬぐえず

かといって仲良し同級生の5人会に依頼するのも大袈裟に思え

もしかして私に頼めないかと思案していたそうだ。



電話が終わると、私はさっそく献立を考えた。

今回は、ユリちゃんの切実な希望を取り入れなければならない。

切実な希望とは「暑くても喉を通るもの」。

それから「前回のような献立ではないもの」。

はっきりとは言わないが、つまり前回けいちゃんが決めた

揚げ物オンパレードの献立では季節柄、喉を通らないと言いたいらしい。

檀家からクレームが出て板挟みになったようだ。

「お手伝いしてくださるのは、本当にありがたいんだけど…」

言葉を濁すユリちゃんは、つらそうだった。


確かに前回の施餓鬼供養で、けいちゃんが考えたトンカツ、海老フライ

フライドポテト、ウインナーで構成される「ミックスフライ」は

完全に的外れだった。

そこへレモンで爽やかさを加味したとはいえ

ササミの揚げ物に、トドメが熱々の炊き込みご飯。

エアコンの無い広間で食べるには、高齢者でなくても厳しい献立である。

ユリちゃんは暑い時期にふさわしく

かつ高齢者に喜ばれる料理を切望していた。


それを聞いた私は、深く反省。

けいちゃんの考えた献立を

角が立たないように修正する努力を怠ったからだ。

せっかくやる気になってくれてるんだから、任せよう…

そう言ったら聞こえは良いが

実際は生真面目なけいちゃんの機嫌を損ねたら厄介だし

やんわり修正するのは神経を使うしで面倒なため、丸投げにした。

その結果、けいちゃんが食べたい物を並べるうちに迷走したのが

前回の献立である。


こうなることを予測しながらも

手を打たなかった自分の横着を反省しつつ

今回考えたメインは、ぶっかけそうめん。

冷やしとろろ蕎麦か、山口名物の瓦蕎麦(かわらそば)にしたかったが

蕎麦アレルギーが1名いるそうなので断念した。


それから先日、息子の友人が届けてくれた日本海産の剣先イカで

和風の煮物。

もらい物なのでイカが少なかったため

大根、厚揚げ、冷凍サヤインゲンでカサ増しをもくろむ。


あとは、もらい物のジャガイモと買ったタラコで、タラモサラダ。

淡いピンクが可愛いのと

老人はタラモサラダなんて知るまい、フッフッフ…という下心で採用。

献立というのは、みんなが好く料理ばかりでは成立しない。

目新しいものや癖のあるものを一、二品入れて脇を固め

主役を引き立てることが大事だ。


タラモサラダは簡単。

ジャガイモを皮ごとラップに包み

レンジで柔らかくなるまでチンしたら、皮をむいて潰す。

そこへたっぷりのマヨネーズ、たっぷりのタラコ

塩コショウ少々、薄口醤油か麺つゆ少々を入れてマゼマゼしたら

できあがり。

スプーンで丸く形を整えて器に盛り

上から細く切った味付け海苔をたっぷり振りかけたら

いちだんと美味しくなる。


それから以前、『手抜き料理・ナス』で紹介した

ユリちゃんの兄嫁さん直伝のナス・バンジャン。

前回の揚げ物オンパレードを見た、参加者のおばあちゃんが数人

ゲンナリした表情でヒソヒソ話をしていたからだ。

「今日はナス、無いんかね?」

兄嫁さんのナス・バンジャンは、皆が待ち焦がれる人気料理。

レシピは入手しているので、それを作れば絶対に喜ばれる。


デザートには、もらい物の梨を持って行く。

これで決まり。


とはいえ、これで全部決まったわけではない。

ユリちゃん夫婦と兄嫁さん一家の晩ご飯を作るのが

もはや恒例となっている。

そしてその晩ご飯は、夕方まで残るお客に持ち帰らせる目的もあるので

昼と同じく10人前ほど作る必要がある。


ただでさえ昼ごはんを作ってくたびれたあげく

晩の用意までしていたら、正直ヘトヘトになる。

しかも晩ご飯は、何でもいいわけではない。

偏食の多いユリちゃん夫婦とその姪が食べられる料理で

なおかつ、お客がテイクアウトできる物…

つまり汁物や麺類でない物が求められる。


これはユリちゃんの甘えであり、悪習慣だと思う。

以前この要求を聞いたけいちゃんは密かに、そしてかなり腹を立てた。

「甘え過ぎやわ!」

もっともなことだ。

マミちゃんもいい顔はしなかったが、彼女が作るわけではないので

しょせん他人事。

洗い物担当で倹約家のモンちゃんは

自分の持ち帰る料理が増えるのを見越して歓迎ムードだった。

イラっとするこの気持ちは、実際に手を下す者にしかわからないだろう。


しかし両親はすでに亡く、たった一人の兄にも先立たれ

旦那との夫婦仲も険悪なユリちゃんが甘えられる相手は

兄嫁さんしかいない。

その兄嫁さんの健康がすぐれないとなれば

私がやるしかないじゃないの。

ユリちゃんのお母さんなら、笑顔でやるはず。

だから私もやるまでよ。


で、晩ご飯は牛丼にした。

牛丼の具はジップロックに入れ

ごはんはパックに別盛りで、ちゃんと紅生姜も付ける。

これ一品しか作らない。

ええカッコして頑張り過ぎると、次が続かないから。



そして迎えた当日。

イカの煮物、タラモサラダ、ナス・バンジャンは

朝、家で完成させた。

ぶっかけそうめんのトッピングに使うオクラや干し椎茸の甘煮

錦糸卵など、熱を加える物も家で仕上げる。

エアコンの無いお寺の台所は、相変わらず灼熱地獄。

お寺で火を使うのは、そうめんを茹でる時だけと誓って

おおかたを家で済ませた。


『ぶっかけそうめん』

作る方も食べる方も、普通のそうめんより気軽なので採用した。

①好みの味に仕上げた麺つゆを冷やしておく

②味噌汁を入れる汁椀を人数分用意して、お盆に並べておく

③そうめんを半分に折って茹で、ザルにあけて水で冷やしながら洗う

…今回は汁椀を使うので、そうめんも折ってコンパクトにすると

盛り付けやすく、食べやすい…

④ザルのそうめんを上から何度か手で押して、水気を絞り出す

…これでそうめんがしっかりして、シコシコした食感になる…

⑤水切りしたそうめんを手早く汁椀に取り分ける

…水気が少ないので、すぐに固まってしまうから…

⑥ミョウガ、オクラ、干し椎茸煮、錦糸卵、カマボコ、ネギなど

好みのトッピングをそうめんの上に乗せる

…汁椀は小さいので、トッピングも小さめに切っておくと上品…

⑦冷やした麺つゆをかける

以上


夏も終わりだし、ぶっかけそうめんなんて

みんな知っているだろうから特記するほどでもないのだが

そうめんは手で押して水切りをすると、断然おいしくなるので紹介した。

寒くなったら、にゅうめんでお試しくだされ。


それから、もっとご紹介したいのは麺つゆ。

通販のダシパックで有名なメーカー、久原本家が出している

『久原・あごだしつゆ』という名前の紺色の紙容器に入った麺つゆが

私は今のところ一番おいしいと思っている。


このあたりでは、どのスーパーにも並んでいて

値段は500mlで500円と高めだが

4倍希釈なので、普通の麺つゆと大差は無い。

これが出回るようになって以来

ずっと買っていた、ここの通販のダシパックをあまり買わなくなった。

だって、この味が出したくて高いダシパックを買っていたんだもん。



さて、家で作った物が多かったので、現地では時間が余った。

だからタラモサラダのトッピング用に持って行った味付け海苔で

小さい一口おにぎりをたくさん作った。

おにぎりは、ぶっかけそうめんと相性が良いのだ。


ナス・バンジャンはもちろん、ぶっかけそうめんも

タラモサラダもイカの煮物も好評でホッとしたが

一番人気は、この一口おにぎりだったような気がする。

なんだか複雑な気分よ。
コメント (4)
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