5日の月曜日は同級生ユリちゃんの実家のお寺で
また料理を作った。
翌週に控えた行事の準備に集まった人たちに
昼ごはんを振る舞うのだ。
人数は、私を入れて11人のささやかな午餐。
例のごとく、一人で行くつもりだったが
梶田さんが来て手伝ってくれることになった。
今年の春だったか、ユリちゃんの嫁ぎ先のお寺で
料理をした時に知り合った60代半ばの料理自慢である。
当時の梶田さんはライバル心メラメラだったが
彼女の得意分野はグリーンカレー、ラタトゥイユ、パスタ
手作りパン、手作りデザートなどの洋風あたらし系。
一方、私の得意分野は昭和の大衆食堂系。
お互いに領域侵犯が無いためか
何度か会っていたらすっかり仲良くなった。
この夏、ユリ寺で料理をした時にも会った。
私が来るとユリちゃんから聞いて、わざわざ会いに来たのだ。
他のメンバーもいると思い込んで遠慮した彼女は
あえて遅く来たが、私一人なのを知るとびっくりして
配膳を手伝ってくれた。
料理を知っている人は、さすが動きが違う。
控えめでありながら完璧なアシストぶりに、私は感嘆したものだ。
さて、この日のメインは、次男が獲ってきた落ち鮎の塩焼き。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/7f/478ae6f1cc4bdba012fe1662442debaf.jpg)
小ぶりの鮎だが30匹あったので、皆にしっかり行き渡る。
これを楽しみに、はるばる岡山県から来た人もいた。
手際の良い梶田さんが来てくれると知った私は
この鮎を炭火で焼くことにした。
外で炭火の番をすると、中の台所仕事ができないので
一人では無理だと諦めていたのだ。
焼くのはもちろん、梶田さん。
そしてせっかく炭火を使うなら
ついでに鶏モモの山賊焼きもしようと決めた。
焼くのはもちろん、梶田さん。
当日、梶田さんは夫婦で来ていた。
本人が言うには、決して仲良しだからではなく
一人で出かけたら旦那の食事を用意しなければならず
これが超かったるいそうな。
わかるよ、その気持ち。
定年後、奥さんに付いて歩く男性を「濡れ落ち葉」と揶揄するけど
ヘタに置いて出るとメシがいる…そんな事情もあるのだと知った。
そこで最近は、できるだけ夫婦で行動することに決め
ご主人も、お寺の庭の整備を手伝うようになったそうだ。
初対面のご主人は濡れ落ち葉どころか、ダンディなおじ様。
キャンプが趣味だそうで、簡単に火を起こして2人で焼いてくれた。
なんて使える夫婦なんだ。
さて、サイドメニューはコンソメ味のロール白菜と
長男が釣って来た魚でブリ大根。
どちらも我が家の秋冬の食卓に登場する、手慣れた家庭料理だ。
ロール白菜は朝、家で巻き巻きして
現地でベーコンと一緒に煮ればいいようにして持参した。
コンソメスープの素と薄口醤油で味をつける。
ブリ大根の方は、ブリとは言いながら
この季節に釣れるのは、まだブリに成長していないヤズ。
若いので清々しいほど脂が乗っておらず
家では人気が無いため、お寺で消費してもらうことにした。
完成させて持って行く。
サラダは、以前にも紹介したドレッシングサラダ。
ブロッコリーや茹でキャベツなどの温野菜、半分に切った茹で卵に
人参1本と、ひとかけらの玉ねぎをすりおろし
マヨネーズで和えたドレッシングをかける。
人参のオレンジ色が温野菜の緑に映えて、食が進む一品だ。
野菜や卵は家で火を通し、現地ではドレッシングを作るだけ。
常連の一人、野菜好きの若い男の子が
夏バテの名残りで元気が無いと聞いたため、これに決めた。
「これは夏バテに効く特別なサラダで、食べたら元気になる」
と、だます。
3時のおやつは、白玉ぜんざい。
冷凍食品の白玉を使えば、すぐできる。
これも梶田さんが作ってくれた。
助っ人として、これほど頼りになる人はいない。
こうして出来上った料理は喜ばれ
特に鮎は、梶田さん夫妻の程よい焼き加減もあって賞賛の的だった。
が、安堵するわけにはいかない。
私をいつも苦しめるのは、ユリちゃん夫婦と兄嫁さん一家の晩ごはんと
ユリちゃん夫婦の兄貴分みたいな人の晩酌の肴。
「なんでそこまで?!バカじゃないの?」
私だって他人事だったらそう叫び、あざ笑うだろう。
事実、必死でこしらえた昼ごはんを食べた後
また新たに料理に取り組むのは、精神的にも肉体的にも消耗する。
特にこの夏、エアコンも換気扇も無い台所で作るのは本当につらかった。
ユリちゃんは料理をあまりしないので
疲労のあげくの満腹状態で、次の食事を作る辛さがわからない。
お寺の人特有の“お願い慣れ”により
何事も「感謝」と「合掌」で済ませてしまうため
シモジモの苦しみは別世界の出来事だ。
人に作らせておいて、旦那と兄貴分にはいい顔がしたいのもわかっている。
思うところは色々あるが、今回は秋。
夏よりマシという気持ちが災いして
性懲りもなく、だし巻き卵を作ることにした。
だし巻き卵は、私なりの作戦。
「もう晩ごはんは作りたくありません」とは言いにくい。
感謝と合掌で寄り切る“お寺人”は、おそらく傷つく。
しかも最初、頼まれるままにいい顔をしてホイホイ作ったのは私だ。
あの時はまだ寒かったから、できた。
夏にも頼まれるとは思わなかったのだ。
来夏に向けて晩ごはんの簡略化を進めなければ
熱中症で死んでしまう。
そこでもう、ガッツリ飯はやめにして
簡素なものを一品だけ作り、お茶を濁すことにしたのだった。
だし巻き卵はとっても簡単。
簡単でありながら、おかずにも酒の肴にもなり
食べた老若男女は感動する便利な料理だ。
『だし巻き卵(1本分)』
①濃いめの出汁を取って、冷ましておく
● だし巻き卵をたくさん作る時は、出汁を多めに用意する。
うちは片手鍋半分の水に、通販か市販の出汁パックを
通常1袋のところ、2袋入れて煮出す。
②ボールに卵2個を割り入れて箸で溶き
冷めた出汁をオタマ2杯、 砂糖小さじ1、塩ひとつまみを入れて
よく混ぜ合わせる
● オタマは普通サイズか、少し小さめのものが望ましい。
大き過ぎると出汁が多くなって卵が薄まり、巻くのが難しくなる。
③卵焼き用の長方形のフライパンをよく熱し、油を敷いて
出汁と調味料を入れた溶き卵を何回かに分けて流し入れ
普通に卵焼きを作る
●フライパンに卵液を付けた箸を滑らせたら線が描けるくらいの高温で
卵液を流し込むと、ジュワッと音がする程度。
●出汁で大いに薄められた卵は、基本うまく巻けないので気にしない。
卵液を全部使って巻き終わる頃には、それなりの形になる。
④巻き終わったらまな板に置き、適当に切る
●カッコ良く仕上げたい時、グチャグチャになった時
お弁当に入れたい時は、まだ熱いうちに
巻き寿司を巻く時に使う巻き簾(す)で軽く巻いて 形を整える。
卵から出汁が滲み出るので、火傷に注意。
以上
卵2個に、オタマ2杯の濃い出汁。
焼き始めはフライパンを熱くする。
これを覚えていれば、誰でも料亭の味になる。
少し醤油をたらした大根おろしなんぞ添えると
男は泣いて喜ぶ。
出汁を使わず、しっかり巻かれたお母さんの味もおいしいが
だし巻き卵にもぜひトライして、大人の卵焼きを味わっていただきたい。
また料理を作った。
翌週に控えた行事の準備に集まった人たちに
昼ごはんを振る舞うのだ。
人数は、私を入れて11人のささやかな午餐。
例のごとく、一人で行くつもりだったが
梶田さんが来て手伝ってくれることになった。
今年の春だったか、ユリちゃんの嫁ぎ先のお寺で
料理をした時に知り合った60代半ばの料理自慢である。
当時の梶田さんはライバル心メラメラだったが
彼女の得意分野はグリーンカレー、ラタトゥイユ、パスタ
手作りパン、手作りデザートなどの洋風あたらし系。
一方、私の得意分野は昭和の大衆食堂系。
お互いに領域侵犯が無いためか
何度か会っていたらすっかり仲良くなった。
この夏、ユリ寺で料理をした時にも会った。
私が来るとユリちゃんから聞いて、わざわざ会いに来たのだ。
他のメンバーもいると思い込んで遠慮した彼女は
あえて遅く来たが、私一人なのを知るとびっくりして
配膳を手伝ってくれた。
料理を知っている人は、さすが動きが違う。
控えめでありながら完璧なアシストぶりに、私は感嘆したものだ。
さて、この日のメインは、次男が獲ってきた落ち鮎の塩焼き。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/7f/478ae6f1cc4bdba012fe1662442debaf.jpg)
小ぶりの鮎だが30匹あったので、皆にしっかり行き渡る。
これを楽しみに、はるばる岡山県から来た人もいた。
手際の良い梶田さんが来てくれると知った私は
この鮎を炭火で焼くことにした。
外で炭火の番をすると、中の台所仕事ができないので
一人では無理だと諦めていたのだ。
焼くのはもちろん、梶田さん。
そしてせっかく炭火を使うなら
ついでに鶏モモの山賊焼きもしようと決めた。
焼くのはもちろん、梶田さん。
当日、梶田さんは夫婦で来ていた。
本人が言うには、決して仲良しだからではなく
一人で出かけたら旦那の食事を用意しなければならず
これが超かったるいそうな。
わかるよ、その気持ち。
定年後、奥さんに付いて歩く男性を「濡れ落ち葉」と揶揄するけど
ヘタに置いて出るとメシがいる…そんな事情もあるのだと知った。
そこで最近は、できるだけ夫婦で行動することに決め
ご主人も、お寺の庭の整備を手伝うようになったそうだ。
初対面のご主人は濡れ落ち葉どころか、ダンディなおじ様。
キャンプが趣味だそうで、簡単に火を起こして2人で焼いてくれた。
なんて使える夫婦なんだ。
さて、サイドメニューはコンソメ味のロール白菜と
長男が釣って来た魚でブリ大根。
どちらも我が家の秋冬の食卓に登場する、手慣れた家庭料理だ。
ロール白菜は朝、家で巻き巻きして
現地でベーコンと一緒に煮ればいいようにして持参した。
コンソメスープの素と薄口醤油で味をつける。
ブリ大根の方は、ブリとは言いながら
この季節に釣れるのは、まだブリに成長していないヤズ。
若いので清々しいほど脂が乗っておらず
家では人気が無いため、お寺で消費してもらうことにした。
完成させて持って行く。
サラダは、以前にも紹介したドレッシングサラダ。
ブロッコリーや茹でキャベツなどの温野菜、半分に切った茹で卵に
人参1本と、ひとかけらの玉ねぎをすりおろし
マヨネーズで和えたドレッシングをかける。
人参のオレンジ色が温野菜の緑に映えて、食が進む一品だ。
野菜や卵は家で火を通し、現地ではドレッシングを作るだけ。
常連の一人、野菜好きの若い男の子が
夏バテの名残りで元気が無いと聞いたため、これに決めた。
「これは夏バテに効く特別なサラダで、食べたら元気になる」
と、だます。
3時のおやつは、白玉ぜんざい。
冷凍食品の白玉を使えば、すぐできる。
これも梶田さんが作ってくれた。
助っ人として、これほど頼りになる人はいない。
こうして出来上った料理は喜ばれ
特に鮎は、梶田さん夫妻の程よい焼き加減もあって賞賛の的だった。
が、安堵するわけにはいかない。
私をいつも苦しめるのは、ユリちゃん夫婦と兄嫁さん一家の晩ごはんと
ユリちゃん夫婦の兄貴分みたいな人の晩酌の肴。
「なんでそこまで?!バカじゃないの?」
私だって他人事だったらそう叫び、あざ笑うだろう。
事実、必死でこしらえた昼ごはんを食べた後
また新たに料理に取り組むのは、精神的にも肉体的にも消耗する。
特にこの夏、エアコンも換気扇も無い台所で作るのは本当につらかった。
ユリちゃんは料理をあまりしないので
疲労のあげくの満腹状態で、次の食事を作る辛さがわからない。
お寺の人特有の“お願い慣れ”により
何事も「感謝」と「合掌」で済ませてしまうため
シモジモの苦しみは別世界の出来事だ。
人に作らせておいて、旦那と兄貴分にはいい顔がしたいのもわかっている。
思うところは色々あるが、今回は秋。
夏よりマシという気持ちが災いして
性懲りもなく、だし巻き卵を作ることにした。
だし巻き卵は、私なりの作戦。
「もう晩ごはんは作りたくありません」とは言いにくい。
感謝と合掌で寄り切る“お寺人”は、おそらく傷つく。
しかも最初、頼まれるままにいい顔をしてホイホイ作ったのは私だ。
あの時はまだ寒かったから、できた。
夏にも頼まれるとは思わなかったのだ。
来夏に向けて晩ごはんの簡略化を進めなければ
熱中症で死んでしまう。
そこでもう、ガッツリ飯はやめにして
簡素なものを一品だけ作り、お茶を濁すことにしたのだった。
だし巻き卵はとっても簡単。
簡単でありながら、おかずにも酒の肴にもなり
食べた老若男女は感動する便利な料理だ。
『だし巻き卵(1本分)』
①濃いめの出汁を取って、冷ましておく
● だし巻き卵をたくさん作る時は、出汁を多めに用意する。
うちは片手鍋半分の水に、通販か市販の出汁パックを
通常1袋のところ、2袋入れて煮出す。
②ボールに卵2個を割り入れて箸で溶き
冷めた出汁をオタマ2杯、 砂糖小さじ1、塩ひとつまみを入れて
よく混ぜ合わせる
● オタマは普通サイズか、少し小さめのものが望ましい。
大き過ぎると出汁が多くなって卵が薄まり、巻くのが難しくなる。
③卵焼き用の長方形のフライパンをよく熱し、油を敷いて
出汁と調味料を入れた溶き卵を何回かに分けて流し入れ
普通に卵焼きを作る
●フライパンに卵液を付けた箸を滑らせたら線が描けるくらいの高温で
卵液を流し込むと、ジュワッと音がする程度。
●出汁で大いに薄められた卵は、基本うまく巻けないので気にしない。
卵液を全部使って巻き終わる頃には、それなりの形になる。
④巻き終わったらまな板に置き、適当に切る
●カッコ良く仕上げたい時、グチャグチャになった時
お弁当に入れたい時は、まだ熱いうちに
巻き寿司を巻く時に使う巻き簾(す)で軽く巻いて 形を整える。
卵から出汁が滲み出るので、火傷に注意。
以上
卵2個に、オタマ2杯の濃い出汁。
焼き始めはフライパンを熱くする。
これを覚えていれば、誰でも料亭の味になる。
少し醤油をたらした大根おろしなんぞ添えると
男は泣いて喜ぶ。
出汁を使わず、しっかり巻かれたお母さんの味もおいしいが
だし巻き卵にもぜひトライして、大人の卵焼きを味わっていただきたい。