5日は本社の新年会だった。
この集いは都会のホテルで行われる。
正社員限定のため
夫と息子たちは参加が義務付けられているが
自由出勤の私は非正社員なのでお呼びは無い。
けれども毎年、夫の希望で行き帰りの車に同乗し
新年会が行われる2時間の間、近くのデパートで時間を潰していた。
夫は「心細いから来て欲しい」と言うが
たまには姑と引き離して気晴らしをさせてやろうという
心配りではないかと思われる。
気持ちはありがたいが、ホテルに近いデパートは
繁華街のそれと違って小規模なため、今ひとつ燃えない。
飽きたので今年は辞退を考えていた矢先
新年会に別の社員を乗せて行く必要が生じ
私のことは忘れ去られた。
これに一番喜んだのは私ではなく、義母ヨシコだった。
「毎年、何しに行くのかしらって思ってたわ。
呼ばれもしないのに!」
ものすごく嬉しそう。
ヨシコ、パーティー関係には厳しいのだ。
ライオンズクラブや業界の集まりに
飾り立てて出席するのが命だった女なので
自分以外、特に嫁が、晴れがましい場所に近づくのを非常に嫌がる。
出てるんじゃない、行き帰りが一緒なだけだと言っても
その後の数日はツンケンしていたものだ。
今年は行かないと聞いて、よっぽど気分が良かったらしく
昼ごはんに寿司をおごってくれた。
夕方、息子たちと帰宅した夫。
懐から、おもむろにのし袋を取り出して私に捧げた。
毎年恒例のくじ引きで当てた、一等賞の金一封である。
開けてみると、新札で7000円入っていた。
そ、一等といってもこんなもんよ。
当たりくじを引いた者は、舞台に上がってスピーチをするのが決まり。
夫はそこで、こう言ったという。
「僕はバカですが、一生懸命仕事をしたら
一等賞がもらえると知りました」
それで終わり。
ここぞとばかりに長いスピーチをする者も多い中
夫の短い発言はウケたらしい。
息子たちの報告によれば、会場は大いに盛り上がったという。
「よくやった!」
私は夫を丁重にねぎらう。
バカ発言は、媚びや自虐ではない。
本社に巣食う月給泥棒たちへの痛烈な皮肉である。
これを短い言葉で行った夫を賞賛せずにおられようか。
昨年の後半から、社長は急に
社員のメンタル向上を意識し始めた。
普段、会うこともない社長の意識をどこで知るかというと
社内報である。
季節ごとに発行される社内報の冒頭には
いつも社長の挨拶が掲載される。
これを熟読すると、彼の心模様が浮き上がってくるのだ。
理数系出身の人なので、ずっと数字や経済情勢
今後の戦略が中心の文面だったのが
近頃は「やる気」「向上心」「誇り」など
精神に関するワードが大幅に増加してきている。
特に増えたワードが「愚直」と「人材育成」と「やり甲斐」。
頭のいい人は真意を言わずに、関連する単語を散りばめるものだ。
院卒の化学者というプライドをかなぐり捨て
あえて幼く青臭いワードを多用するところに
社長の焦りを強く感じる。
つまり彼は、やっと気づいたのだ。
やる気、向上心、誇りの無い社員が
長年に渡ってずるく立ち回り、部下を潰し続けたあげく
人材の墓場と化した会社の現状に。
我々は合併当初から、本社の花形部署である営業部から
さんざん煮え湯を飲まされているので知っているが
社長は去年、わかったらしい。
人材の墓場作りには、経理部長ダイちゃんの
カルト宗教勧誘もひと役買っていると思う。
いいように利用され、手柄を奪われ、消耗する日々で
断りにくい上司から宗教に誘われれば、まともな人間なら辞めてよそへ行く。
社長、このことにはまだ気づいてないと思われる。
ともあれ社内報から現在の社長の真意を読み解いて
本社の流れをつかみ、夫や息子たちにわかりやすく伝達するのは
私の重要な仕事である。
「風は今、バカに吹いている」
などと話して聞かせるのだ。
「バカなら負けない!」
「俺たちの時代だ!」
喜ぶ夫と息子たちに
「待て待て、ホンマのバカはどこもいらんのじゃ。
背伸びや虚飾をしない、素直とひたむきが求められておる」
と説明。
会社の流れをつかんでおくのは大切である。
出ないはずの経費が出たり、思わぬサポートが得られる。
どんな仕事もそうだが、楽しく働くには
相手が打ち鳴らす太鼓のリズムの変化を聞き逃さず
合わせる技術が必要なのだ。
潰れそうなところを本社に救済してもらっておきながら
はなはだ傲慢ではあるが、メンタル面においては
本社のほうが我々一家に追いついた感がある。
スピーチで日頃の教育が役立ったのと
くじ引きの賞金7000円を召し上げ、私は満足だった。
夫が新年会に出かける前
「何かあるといけんから持っとき」
そう言って渡した2万円を回収してないと気づいたのは
今朝のこと。
「マイナスじゃんか!」
ホンマのバカは、私だったようだ。
この集いは都会のホテルで行われる。
正社員限定のため
夫と息子たちは参加が義務付けられているが
自由出勤の私は非正社員なのでお呼びは無い。
けれども毎年、夫の希望で行き帰りの車に同乗し
新年会が行われる2時間の間、近くのデパートで時間を潰していた。
夫は「心細いから来て欲しい」と言うが
たまには姑と引き離して気晴らしをさせてやろうという
心配りではないかと思われる。
気持ちはありがたいが、ホテルに近いデパートは
繁華街のそれと違って小規模なため、今ひとつ燃えない。
飽きたので今年は辞退を考えていた矢先
新年会に別の社員を乗せて行く必要が生じ
私のことは忘れ去られた。
これに一番喜んだのは私ではなく、義母ヨシコだった。
「毎年、何しに行くのかしらって思ってたわ。
呼ばれもしないのに!」
ものすごく嬉しそう。
ヨシコ、パーティー関係には厳しいのだ。
ライオンズクラブや業界の集まりに
飾り立てて出席するのが命だった女なので
自分以外、特に嫁が、晴れがましい場所に近づくのを非常に嫌がる。
出てるんじゃない、行き帰りが一緒なだけだと言っても
その後の数日はツンケンしていたものだ。
今年は行かないと聞いて、よっぽど気分が良かったらしく
昼ごはんに寿司をおごってくれた。
夕方、息子たちと帰宅した夫。
懐から、おもむろにのし袋を取り出して私に捧げた。
毎年恒例のくじ引きで当てた、一等賞の金一封である。
開けてみると、新札で7000円入っていた。
そ、一等といってもこんなもんよ。
当たりくじを引いた者は、舞台に上がってスピーチをするのが決まり。
夫はそこで、こう言ったという。
「僕はバカですが、一生懸命仕事をしたら
一等賞がもらえると知りました」
それで終わり。
ここぞとばかりに長いスピーチをする者も多い中
夫の短い発言はウケたらしい。
息子たちの報告によれば、会場は大いに盛り上がったという。
「よくやった!」
私は夫を丁重にねぎらう。
バカ発言は、媚びや自虐ではない。
本社に巣食う月給泥棒たちへの痛烈な皮肉である。
これを短い言葉で行った夫を賞賛せずにおられようか。
昨年の後半から、社長は急に
社員のメンタル向上を意識し始めた。
普段、会うこともない社長の意識をどこで知るかというと
社内報である。
季節ごとに発行される社内報の冒頭には
いつも社長の挨拶が掲載される。
これを熟読すると、彼の心模様が浮き上がってくるのだ。
理数系出身の人なので、ずっと数字や経済情勢
今後の戦略が中心の文面だったのが
近頃は「やる気」「向上心」「誇り」など
精神に関するワードが大幅に増加してきている。
特に増えたワードが「愚直」と「人材育成」と「やり甲斐」。
頭のいい人は真意を言わずに、関連する単語を散りばめるものだ。
院卒の化学者というプライドをかなぐり捨て
あえて幼く青臭いワードを多用するところに
社長の焦りを強く感じる。
つまり彼は、やっと気づいたのだ。
やる気、向上心、誇りの無い社員が
長年に渡ってずるく立ち回り、部下を潰し続けたあげく
人材の墓場と化した会社の現状に。
我々は合併当初から、本社の花形部署である営業部から
さんざん煮え湯を飲まされているので知っているが
社長は去年、わかったらしい。
人材の墓場作りには、経理部長ダイちゃんの
カルト宗教勧誘もひと役買っていると思う。
いいように利用され、手柄を奪われ、消耗する日々で
断りにくい上司から宗教に誘われれば、まともな人間なら辞めてよそへ行く。
社長、このことにはまだ気づいてないと思われる。
ともあれ社内報から現在の社長の真意を読み解いて
本社の流れをつかみ、夫や息子たちにわかりやすく伝達するのは
私の重要な仕事である。
「風は今、バカに吹いている」
などと話して聞かせるのだ。
「バカなら負けない!」
「俺たちの時代だ!」
喜ぶ夫と息子たちに
「待て待て、ホンマのバカはどこもいらんのじゃ。
背伸びや虚飾をしない、素直とひたむきが求められておる」
と説明。
会社の流れをつかんでおくのは大切である。
出ないはずの経費が出たり、思わぬサポートが得られる。
どんな仕事もそうだが、楽しく働くには
相手が打ち鳴らす太鼓のリズムの変化を聞き逃さず
合わせる技術が必要なのだ。
潰れそうなところを本社に救済してもらっておきながら
はなはだ傲慢ではあるが、メンタル面においては
本社のほうが我々一家に追いついた感がある。
スピーチで日頃の教育が役立ったのと
くじ引きの賞金7000円を召し上げ、私は満足だった。
夫が新年会に出かける前
「何かあるといけんから持っとき」
そう言って渡した2万円を回収してないと気づいたのは
今朝のこと。
「マイナスじゃんか!」
ホンマのバカは、私だったようだ。
ここぞ!という時にアピール出来て、めでたしめでたし…
金は天下のまわりもの~と、言いますから、寿司+金一封+誉れ、でチャンチャンでしょうか?
でも、その、誉れが一番お徳なんだと思いますよ(^^)
生活するって、たくさんの理不尽に出会うこと。
闘うにしても、受け入れるにしても
できるだけ面白がりたいと思っています。
それを読まされる皆様のご迷惑もかえりみず
書きなぐる私ですが
「こんなバカもいる」ということで
ホッとしたり元気を出していただければ幸いです。
7000円・金一封
20000円・未回収金
すると誉れ料は11000円か(笑)
誉れはプライスレスだろうから、安い投資か。
なるほど!
勉強になりました。
自分の発言で溜飲を下げた人々が多かったのが
嬉しそうな夫でした。
「ウケたと思って何べんも言ってると
バカがバレるけん、これ一回にしときんさいよ」
「わかった」
ひそかに交わした夫婦の会話。
当時、「不倫」で心が壊れそうになって、検索してみりこんさんに出会えたのでした。
苦しい時に、こんな私に寄り添うような言葉をくださり、どんなに救われたでしょうか。
あれから8年(きみまろ風)、人生は波乱万丈です。
さて、子供もようやく成人式を迎えました。
式当日、病室に夫の希望で、夫の両親と、私と式に向かう子供を呼んだんですが、
来たのは舅だけで、お姑さんは「雨だから」と言って来なかった。
確かに明け方は雨がひどかったけど、
約束していた時間にはすっかり上がって、晴天だったんです。
年をとるとしんどいって、こういうことですか?
子ども曰く、「お父さんが喜んでくれれば良かったからそれでいいんよ。」
式が終わって、たくさんの写真を撮ってきたのですが、
帰省した小中高校の友達と嬉しそうに写っていたのでホッとしました。
なにより、夫が嬉しそうだった。それでいいんですよね。
みりこんさん、なんだかね。
婚家とはいつもこうなんですよ。
私なりに頑張ってるんだけど、みりこんさんの言うように役に立とうと思ってるんだけど、
残念な結果になるんです。
私がヘンで間違ったことをしてるんですかね。
とりあえずは、成人させた、夫と子供が楽しい時間が持てた、それでいいでしょうか?
3000日までお祝いしてくださり、ありがとうございます。
お子さんのご成人、おめでとうございます!
ご主人は安心されたでしょうし、喜ばれたと思います。
お姑さんの欠席理由、「雨だから」(笑)
こういう時だからこそ、家族で心を揃え
助け合いたいところですけど
変人はどこまで行っても変人ですからね。
嫁ぎ先っていうのは必ず
足並みを揃えたくない人がいるものです。
小舅や小姑が一般的ですが
ご主人とは一親等の母親がそれだと影響力が強いので
ねこさんの思いは、いかばかりかと思います。
こんな時まで?と思うでしょうが
こんな時だからこそ、余計に意固地になるものです
義理親と同居や別居を繰り返したあげく、私が理解したのは
自分がこう思うからといって、親が同じ思いだとは限らない
ということです。
自分なりの常識や道徳心で、良かれと思って行ったことでも
向こうには面白くない‥
こういうことって、けっこうあります。
例えばうちの家族が、ねこさんのおうちと同じ状況下に
置かれたとしましょう。
今であれば、皆言うことを聞くと思います。
でも家を出て別居し、年数が浅い頃であれば
出好きで子煩悩のヨシコは絶対来ると思いますが
アツシは来ないと思います。
あれほどモメた憎い嫁が音頭をとって
呼びかけた所へ顔を出したくないからです。
和や人道より大切な、プライドというものが彼らにはあるのです。
同じ思いになれない、心を揃えられない‥
厳しい環境で、この状態はつらいものです。
でも、どんなに立派な王様や経営者だって
人の思いを一度にぴったりと合わせ
文字通りの一丸にすることはできません。
呼んでも来ないのは、頑張ったり役に立つという部門とは
管轄が別です。
頑張ったり役に立つ対象は、ご主人だけでいいです。
ついでに変人の矯正なんて、無理です。
お姑さんに、本当に心から来て欲しいのであれば
そしてそれがご主人のために本当に良いことだと判断し
ねこさんがそれを心から願うのであれば
まずスジを通さなければなりません。
過去の無礼を謝罪した上で「私はこう願っています。
召集かけたら、どうか来てやってください」とお願いする。
どっちが悪いとか、どっちの暴言がひどかったとかは
関係ありません。
スジを通すつもりなら、無条件に
目上が正しくて目下が悪いことになります。
お願いする方が
「私が悪うございました」と折れるのです。
理不尽ですが、それがスジを通すということなのです。
どう?そうまでして来てもらいたい?
変人の落ちこぼれなんか、いらんでしょ。
ご主人もですが、お子さんも気を使っていらっしゃると思います。
多くの母親は、それを「優しい子」で片付けます。
私もその一人です。
優しい子にならざるを得なかった子供の苦労に気づいた時
強くなりたいと思ったものです。
お姑さんが来ないことを気にするお母さんより
お舅さんが来てくれたことを喜ぶお母さんになってください。
満点を望み、足りない一点を気にすると、周りが気を使います。
足並みが揃わない、心が一つにならないと
気にしている間は揃いません。
気にしなくなったら、足並みって自然に揃うことも
あるんですよ。
ご主人とお子さんが温かい時間を過ごせた‥
最高じゃないですか。
よくしてあげましたね。
みりこんさんご自身にまで、当てはめて考えていただいてありがとうございます。
夫が病気になってから、私はお姑さんには舅の前で、今までの非礼をお詫びし、時々、夫に顔を見せてあげてほしいとお願いしたんです。
夫はきっと心細く、怖い夜を過ごすことになると思うから。
舅姑の家の前からは病院まで直行のバスでが出ており、10分足らず。
舅はよく来てくれていて、私と面会時間が重なったときは、「ねこさんは眠れてるの?食べてるの?」と話すんです。その言葉だけでも心が震えるような気持ちです。
子どもは、最初からお姑さんを
「モンスターって考えないとお母さんが傷つくよ」
「要は、お父さんはもうおばあちゃんにとって、今後
使えない人間と判断したんやろう。だから、お母さんや自分はもっと面倒な存在なんだよ」
「今までだっていちいちカドをたててきた人やったやろ」
そうだった。そんなことを子供に言わせる始末。
みりこんさんのおっしゃる通り、母親として
強くならないといけませんね。
そして、いろんな人がいてよくって、いろんな考えがあっていいんですよね。誰が悪いわけでもない。
私は、夫がこれから先、少しでも怖くないように、
これ以上つらい思いをしなくていいように、
それだけを考えようと思います。
そして、父親の病気に遠くから心配している子供に、
必要以上に心配をかけないようにしようと思います。
全て、この子の言う通りだと思います。
賢い子ね!
お舅さん、優しいですね。
モンスターの配偶者は、えてして優しいものです。
お舅さんだけでもいいじゃないですか。
気遣ってくれる人がいるって、ありがたいことです。
ちゃんとスジを通して、えらいですね。
それでもなびかないんだから、あきらめたらいいです。
むしろその方が、楽になれます。
損得でしか物を見られない、考えられない人は
たくさんいます。
強いお母さんになる第一歩は
いろんな人がいて、いろんな生い立ちがあり
いろんな立場の人がいることをまず認めることです。
「悲しみの番付」と私は呼びますが
自分が一番大変で、一番悲しい‥
つまり横綱だと思っていると
自分に同調してくれない人に腹が立つものです。
ひどい、冷たい、おかしいと言うのは簡単ですが
それを何十ぺん言ったところで、相手が変わることはありません。
手放すことは、時に得るよりも難しい場合があります。
お姑さんを手放して、ご主人とお子さんを楽にしてあげることも
大切なケアの一つだと思います。
お舅さんじゃないけど
ちゃんと寝て、ちゃんと食べてくださいね。
お願いしますよ。