殿は今夜もご乱心

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ウグイスワード・4

2015年10月05日 10時28分23秒 | 選挙うぐいす日記
「敵に塩を送る」というのがあるが

義父アツシから誤送された風評のゲタを履く私は

周囲の誤解によってベテランのイメージをまとった。

なにしろ卑怯者であるから「大嫌いな舅の助けは借りないわっ!」

なんて青臭いことは言わない。

「義父はこう言ってました」「義父によると、こんな時はこうするそうです」

などといい加減なことを言うと、多くはかしこまって従うので

たびたび利用した。

アツシにはさんざんいびられているのだ。

利用できることは、しっかり利用させてもらう。


最も役立ったのは、選挙にわいて出るクレーム爺達の撃退である。

毎日グズグズといちゃもんをつけてくる、自称選挙に詳しい年寄りだ。

ターゲットはちゃんと吟味している。

自分よりうるさい奴がいない所。


今は年金生活の彼らが、現役時代にどうだったかなんて誰も知らないので

言ったモン勝ちである。

奴らの狙いは、お引き取り願うために渡すお小遣い。

大昔、田舎の選挙では、こういうことが行われていたらしい。

だから奴らは選挙が好きなのだ。


が、そんなことをしたらおおごとになる。

選挙違反になるばかりか、彼らは絶対よそでしゃべる。

「あそこは出した」と言いふらすに決まっている。

命取りになるので、魅入られた事務所の人間は耐えるしかないのだ。


アツシの名は、こういうヤカラに効果絶大。

アツシの息子の嫁というプロフィールは、彼らを警戒させるに充分であった。

「選挙に詳しい」「敵に回すと票が減る」「自分の胸先三寸で多くの人が動く」

などと豪語するダニどもの主張が

市、県、国…すべての選挙に関わっているアツシに伝わると

嘘がバレてしまうからである。


アツシと私はほとんど口をきかないんだからバレりゃしないが

他人はそう思っていない。

私はアツシの名を活用しながら

彼は何十年もの間、選挙に付き物の厄介人を撃退するために

ひと役買っていたのだと知った。

長さは怖さ。

昔のことを知られているというのは、心がけの良くない人々にとって

怖いものらしい。


私はウグイスとしてより、選挙事務所の魔除けとして存在価値を発揮した。

なにしろ貴重な魔除けだから、何をしても物言いはつかない。

よくいるのだ…身内にウグイスがいるとか

どこかの選挙を一、二度手伝っただけで、すっかりオーソリティ気取りになり

声高に見当違いのアドバイスや批評をしたがる有象無象が。

そいつらモグリが何も言えない環境は、居心地良好。

野放しのやりたい放題だ。

候補と2人、マイクで掛け合いもやっちゃう。


こうなると、美人ウグイスに憧れている場合じゃない。

野放しなんだから、もう楽は手に入れた。

美人になって誰かの陰で楽をしようなんざ、大間違いだった。


でもでも、いくら魔除けとはいえ

シーサーや鬼瓦と形容されたら一大事。

この時点でようやく、自分に与えられた目鼻でも対応できる

現実的な美について考えるようになった。


加齢の波は容赦ない。

もはやパックやエステじゃ間に合わん。

そこは卑怯者かつ怠け者の私…

実物をどうにかするより、錯覚の路線を選択。

なんとなく、でいいんじゃ。

遠目には、でいいんじゃ。


研究の結果、美に遠い者は、いっそ没個性を目指すと

それなりのラインに到達するのが早いと判明。

「私らしく」なんてのは、この際あきらめて

「よくいる、いる、こんなウグイス」の水準を目指す。

ポイントは、髪と眉と配色。

あれもこれもと欲張ったら、かえって実現が難しくなる。


髪はロングでもショートでも

できるだけ美容室帰りの状態を保ち、さらにツヤをもたせる。

それだけで、アカ抜け方がずいぶん違うものだ。

遠い最終目標は、恐れ多くも航空会社のCA。

彼女達がアカ抜けて美しいのは、姿形ももちろんあるけど

おくれ毛やごまかしの無い髪も重要な役割を担っている。


眉は自分の感覚より数ミリ下げて描く。

眉を目に近づけるのだ。

努力すれば5ミリは下げられる。

アイメイクも、マスカラや控えめなアイラインで眉に近づける。

眉と瞳の位置を近づけると、若く見えて目鼻が際立つ。

遠目には、ひょっとして美しいのか?と錯覚することもある。


配色は大事だ。

ユニクロかデパートへ行き

自分の顔色に合う小ぶりなスカーフかマフラーを探す。

顔に近づけて鏡を見ると、パッと顔が明るく見える色が必ずある。

それが似合う色というやつだ。

陣営お仕着せのジャンパーが似合わない色でも

顔から一番近い首に似合う色を持ってくれば、疲れや年齢が顔に出にくい。


老ウグイスの敵は、疲れると顔に出るドヨンとした“影”だ。

似合う色は、下からスポットライトの役割をするので

影が出にくく、朝から晩までハツラツとした印象を演出してくれる。

喉を冷えから守る点でも、効果的だ。


ただし、いくら顔映りが良くても紫や赤、派手な柄物は

年配層に不評なので避けたい。

この際、好きな色はあきらめてもらう。

迷ったら白。

白でもアイボリーから青みがかったものまで色々あるので

やはり顔映りを見て決める。

白にした場合、包帯に見えてはいけない。


スカーフの色が決まったら、リップとチークの色を決める。

スカーフが茶色や緑色であればオレンジ系

青色や水色ならピンク系など、昔からの常識にのっとって選ぶ。

顔に近いスカーフの色と、肌に乗せる紅味(あかみ)とのマッチングは

肌色をより白く、美しく見せる効果が高い。


若くも美しくもないウグイスだが

それでもギャラの分、何とか役に立ちたい。

華やかで明るい雰囲気を発信できるよう、一応の努力をする私である。


最後に、最終日まで声を持たせる裏技をご披露しておこう。

これに関する検索ワードも、たまにある。

夏の選挙にゃ向かないが

首と背中の境目…風邪を引くとゾクゾクする部分に

貼るカイロをペタリ。

それだけで身体全体が温まり、エヘン虫も声枯れも回避できる。

ただし、低温火傷には注意。


(完)

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2 コメント

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首は大切 (婆姫)
2015-10-09 08:00:25
首は大切らしいです。
太い血管が皮の下にあるらしいです。
もう、十月、寒いです。

薄いスカーフを巻いて温めましょう

とつぼの先生が言っていました。

歳を重ねると感覚が鈍くなる!

暑いがわからなくて熱中症になるように、寒いがわからなくて風邪をひくらしいです!

とほほ だわ
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 (みりこん~婆姫さんへ)
2015-10-09 20:48:37
頸動脈があるので、首を温めると全身が温まって
効率がいいですね。
ちょっと気温が低くなると、普段でもハイネックやスカーフで
常に喉を保護しているので過保護になっちゃって
たまに服の都合で喉をさらすと落ち着きません。

暑いのもわからなくなるけど、寒いのも鈍くなるのか~!
そういや去年の冬、ヨシコは低体温症になったっけ。
お客さんが来て、門まで見送りに出て
また長々としゃべった後よ。
年を取ったらお部屋でさよならしないと命にかかわりますね。
「じゃあね」の後が長いから。
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