約3,000件の事例に基づく早稲田大学のデータベースから溶融炉に関する事故やトラブルのリスクについて整理してみました。
以下は、データベースからの引用です。
(1)新技術である灰溶融炉を含む灰処理設備における装置や機器が他の設備の装置・機器よりもトラブルが発生している割合が高い。
(2)焼却処理施設のトラブル事例によるトラブル発生率を見ると、事故発生率に比べトラブル発生率が約100倍高くなっている。
(3)最も事故の発生が少ないものが排水処理設備であり、受入供給設備は120倍、燃焼設備は43.5倍、灰溶融設備は41倍、排ガス設備は24倍となっている。
(4)事故の発生頻度の高い燃焼設備では人身被害割合は91%、灰処理設備では人身被害割合は89%となっており、人身事故の割合が多くなっていることがわかる。
(5)この原因として、受入供給設備や排水処理設備等のように他の処理設備にはない技術であることや複雑な制御を必要とする設備であるため、機械による自動化では対処しきれないトラブルが発生し、人手を要する設備であることが考えられる。これは運転維持管理マニュアルや点検日報における作業項目数を見ると明らかである。
(6)灰溶融設備は1980年頃から最終処分場の逼迫が社会問題となり始めており、埋立処分場を延命するための減容化を目的として検討が進められ、開発された技術であり、燃焼設備に比べ歴史が浅く、予期せぬトラブルが発生し、自動化での対応ができないものが多く、人手を要する設備となっている。
(7)20施設を有する清掃組合のトラブル事例の分析を行った結果、灰溶融炉の有無により灰処理設備におけるトラブルの発生確率が約7倍に高まることが示された。これは灰溶融炉等の新技術の導入により、既存の技術も複雑化したことが一因であると考えられる。
(8)危険軽視を原因とした事故がもっとも多く、ウッカリによる事故や経験不足による事故が次いで多くなっている。
以上がデータベースからの溶融炉に関する部分の引用ですが、これを読んでいただければ、このブログの管理者が沖縄県に溶融炉は似合わないと考えている意味が分かっていただけると思います。
ちなみに、「焼却炉+溶融炉」方式は10年以上前から「ガス化溶融炉」方式に移行しているので、沖縄県においてはこれから(8)のリスクが高くなると考えています。
なお、このブログによく登場する中城村北中城村清掃事務組合が選定している溶融炉は「焼却炉+溶融炉」方式のうち、流動床炉の焼却灰(塩分濃度の高いばいじん)のみを単独で処理する溶融炉であるため、国内にある溶融炉の中でも最も運転管理が難しい(事故やトラブルのリスクが高い)溶融炉であると言えます。
※ごみ処理施設というのは焼却炉だけでも事故やトラブルが多い施設です。したがって、「焼却炉+溶融炉」方式を選定している市町村には、住民の財政負担や温室効果ガスの排出量を削減するためだけでなく、現場で働いている人たちの人身被害を減らすためにも、できる限り溶融炉の長寿命化を回避していただきたいと考えます。