浦添市が自市に新たな広域施設(焼却施設)を整備する前提で中北組合との広域処理を検討しているのは処理人口と処理地域が拡大することによるスケールメリットがあるからです。
一方、自村にごみ処理施設(焼却施設)のない北中城村が浦添市との広域処理に参加することは、中北組合を解散して広域組合の一員になることを意味しています。したがって、一部事務組合における北中城村の役割分担は中北組合における役割分担よりも重く大きくなります。
現在、中北組合は溶融炉を休止して焼却灰の民間委託処分を行っていますが、これはごみ処理施設の整備(焼却炉の長寿命化や更新等)に当って国の補助金を利用しない前提で行っていることであり、国の補助金を利用する場合は廃棄物処理法の基本方針に従って溶融炉を再稼動するか北中城村に最終処分場を整備しなければならないことになります。
そのような状況にあって北中城村が浦添市との広域処理を行うとどうなるか?
浦添市は国の基本方針に従って焼却炉と溶融炉の長寿命化を行っているので、一定の年数(長寿命化から10年以上)を経過すれば、広域処理が「白紙撤回」になっても国の補助金を利用してごみ処理施設の単独更新を行うことができます。
しかし、中北組合は溶融炉を廃止して焼却炉の長寿命化を行わずに焼却灰の民間委託処分を行っています。したがって、広域処理が「白紙撤回」になると自主財源により中城村にあるごみ処理施設を単独更新するか、それが困難な場合は自主財源により北中城村に新たなごみ処理施設を整備しなければならないことになります。
そうなると、誰が考えても北中城村の立場よりも浦添市の立場の方が強くなります。
という前提で下の画像をご覧下さい。

原寸大の資料(画像をクリック)

覚書の締結に当って浦添市が実際に上の画像にあるような条件を提示するかどうかは分かりません。しかし、浦添市にとっては中北組合の溶融炉は不必要な施設です。なぜなら、中北組合の溶融炉は国内では稼動している事例のない極めて特殊な溶融炉だからです。
このため、浦添市は広域組合を設立する前に中北組合を解散してごみ処理施設を廃止することを条件として提示してくると思われます。
なぜそうなるか?
広域組合が中北組合の資産を引き継ぐと廃棄物処理法の基本方針に従って溶融炉を再稼動して焼却炉とセットで長寿命化を行わなければならないからです。
ただし、中北組合の焼却炉と建物は広域組合にとって必要な施設なので、解散した中北組合から無償譲渡を受けることになると思われます。その場合、中北組合は解散と同時に、一旦、国に補助金(主に建物に対する補助金)を返還することになります。
また、北中城村が平成26年3月に改正したごみ処理計画には最終処分場の整備に関する課題は書き込まれていませんが、浦添市が平成23年3月に改正したごみ処理計画には書き込まれています。
したがって、広域組合のごみ処理計画には間違いなく最終処分場の整備に関する課題が書き込まれることになります。
そうなると、広域組合においては北中城村が最終処分場の候補地になります。なぜなら、北中城村が国の基本方針に従ってごみ処理計画を改正していた場合は北中城村が中北組合における最終処分場の候補地になっていたはずだからです。
このブログの管理者が浦添市と中北組合の広域処理について一番気になっているのは、このことを北中城村の担当職員や村長、議員、村民の皆さんがどこまで理解しているかということです。
仮に北中城村の担当職員が十分に理解していれば浦添市との覚書を締結する前に議会に説明をして住民の理解と協力を得るための事務処理を行うはずです。また、議会が十分に理解していれば、村の担当職員や村長に対して事前に住民説明会の開催等を求めるはずです。そして、住民が理解していれば、当然のこととして議会や村に説明を求めるはずです。
しかし、このブログの管理者が知る限り、北中城村においてそのような気配は感じられません。
おそらく、北中城村の担当職員にとって補助金の返還は想定外のことではないかと思われます。また、広域組合のごみ処理計画において北中城村が最終処分場の候補地になることについても想定外のことではないかと思われます。
いずれにしても、北中城村においては今年度中に広域処理に関する来年度の事務処理や予算案等について議会の承認を受けて来年度から浦添市や中城村との協議を進めて行くものと思われます。したがって、議会が十分な審議を行わずに承認をすると、浦添市から具体的な条件が示されたときに村民から猛反発を受ける可能性があります。
沖縄県だけでなく内地においても、これまでに数多くの広域計画が「白紙撤回」になっていますが、その理由の多くは、当局が議会に対して計画の具体的な内容を示していなかったり、住民のまったく知らないところで当局が勝手に計画を進めていたことなどによるものです。
北中城村の村民は、これまで最終処分場の整備に関する問題に直面したことはないと思われますが、浦添市との広域処理を選択するとこれから20年から30年はその問題に直面することになります。しかも、対象人口は約15万人(村の約10倍、中北組合の約4倍)になります。
なお、浦添市にとっては中北組合の溶融炉を広域組合の資産から除外することができれば広域処理に関するリスクやデメリットはほとんどないと思われるので、北中城村の議会や住民に対する説明不足等により「白紙撤回」になることがないように覚書に対する条件については早めに北中城村に提示した方が良いと考えます。
広域処理においては、最初のボタンの掛け違いが最も大きなダメージになります。
※浦添市と中北組合の広域処理については中城村が最終処分場の候補地になることはまず考えられません。なぜなら、中城村には中北組合の焼却炉があり、浦添市に広域施設が完成するまでは広域組合において中城村と北中城村のごみ処理を続けていくことになるからです。したがって、中城村において問題があるとすれば、中北組合の解散に伴う補助金の返還と焼却炉の老朽化対策に関する問題だけになると考えます。
※中北組合が溶融炉の廃止に対して廃棄物処理法の基本方針に適合する代替措置を講じれば、広域組合は中北組合の焼却炉をそのまま引き継ぐことができます。また、国の補助金を利用して長寿命化を行うことができます。長寿命化を行うと国の補助制度により10年以上稼動しなければならないことになりますが、広域組合が整備する広域施設の予備施設として位置付ければ問題はなくなります。そうすれば北中城村と中城村は補助金の返還や焼却炉の老朽化対策に伴う経費の増加を回避することができます。