TONALITY OF LIFE

作曲家デビュー間近のR. I. が出会った
お気に入りの時間、空間、モノ・・・
その余韻を楽しむためのブログ

プーランクの「ノヴェレッテ第1番」を弾いてみて

2016-03-07 01:26:59 | 音楽
リヒテルやアラウ、和音をがっしりと掴んでピアノの躯体を芯から響かせるようなピアニストが好きだ。
しかしながら最近、ピアニシモで滑らかに奏でられるパッセージもまたピアノの魅力であることに気付かされている。
きっかけは久々に人前で演奏したこと。
昨年目標に立てた3曲のうち、プーランクの「ノヴェレッテ第1番」とチャイコフスキーの「舟歌」をモノにした。
本番の録音を聴くと、せっかくさらってきたのだからと言わんばかりの凹凸に反省。
食事に例えるならばお茶漬け、小品はさらっと弾くのが相応しいのである。

2年前のパスカル・ロジェのコンサート。
前から2列目に座ったこともあり、意外に音量があると驚いたのも事実なのだが、
それでも伸ばした音符のなかに柔らかく旋律を収めるやり方など
洗練された味わいに嘆息した。
その演奏はフランスの水や空気を摂取しているからこそ、
あるいはフランス語という言語に育まれて初めて可能となるように思われた。
一緒に出掛けた友人が「寿司食ってちゃダメなんだなあ」と冗談交じりに漏らしたのは図星。
ドビュッシーやプーランクが作曲したときの湿度すら、共通の感覚としてロジェの内側に流れているのだろう。

小山実稚恵も優美なフレージングに魅力が宿っているタイプ。
そもそもピアノとは、指の太さに逆らって、一番細い小指で最も強調したい音を鳴らす楽器である。
親指の打鍵は力を半分以下にしたり、独立した動きを取りにくい薬指をコントロールしたりして凹凸を排除する。
その滑らかさをお手本にしたい。

ところで、ライブの醍醐味は安全運転のストッパーが外れる瞬間。
コントロールとパッションが徐々に拮抗し、やがて後者が前者を凌駕するときが訪れる。
ロジェは最初の「ベルガマスク組曲」のあと、小山は後半のショパンの「バラード第1番」から解き放たれた。
2014年に足を運んだ2つのピアノのコンサートは、久々に向き合ったピアノの練習の糧となっている。
残る一曲、ドビュッシーの「夢」はあと一息。

2014.5.27
パスカル・ロジェ ピアノ・リサイタル《ソワレ》@大田区民ホール・アプリコ 大ホール
2014.11.29
小山実稚恵「小山実稚恵の世界 第18回 ~粋な短編小説のように~」@Bunkamuraオーチャードホール

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