学生時代の知り合いの演奏会や個展に出掛けると、
卒業以来欠かすことなく積み重ねられてきたであろう精進の日々に思いが馳せられてただただ頭が下がる。
特にパフォーマンスを伴うものには「本番」があり、
身体的なメンテナンスにも常日頃から相当な神経を注いでいるはずだ。
狂言「やるまい会」の主催者・野村又三郎は、十四世として今まさに脂が乗っていた。
狂言の道を真摯に極めようとしている姿に接し、またご子息との共演を目の当たりにして一層感慨深い公演となった。
一子相伝の芸が次代へ橋渡しされているのを垣間見られるのは、能・狂言や歌舞伎など子役が登場する演劇ならでは。
工芸や大工などの分野も然り、日本の伝承は家によって代々おこなわれていくのが強みである。
芸能に限れば、雅楽まで遡ってあらゆるジャンルの主要な流派が途絶えることなく並存しているのは
日本ならではの特色と言われる。
極めつけは男系で125代続いている天皇家。
世界広しと言えどもこのような長きにわたる一本の皇統が現存するのは我が国のみで、
それが例えばアメリカのプロトコル(外交儀礼)においては
英国国王、ローマ法王と並んで天皇が最高位に置かれる理由なのだとか。
さて、会主の堂々たる挨拶に始まり、『文蔵』、『石神』、素囃子の「水波之伝」を挟んで『唐人子宝』の三番が披露された。
『石神』で夫婦役を演じた奥津健太郎、野口隆行は役へのはまり具合が絶妙でおかしさを誘った。
なんと三組の親子が舞台に立った『唐人子宝』は、子役達の声や背格好がまさに一期一会であることからも貴重である。
世継ぎを無事に儲けた誇らしさ、めでたさが舞台に満ち満ちているかのように感じられた。
能『唐船』を翻案した異色の狂言だそうで、中国語風の科白が珍しい。
この日客席が一番湧いたのは、唐土(中国)より携えたという宝物、巻絹・サンゴ・瑠璃の壷が舞台に並べられ、
サンゴを「赤サンゴでござる」と言った場面。
おそらく時事の話題を巧みに取り込んだものと思われ、それによって様々な距離がぐんと縮まった。
やはり笑いを取ってこその狂言と思うのである。
野村又三郎は狂言に相応しい明るいオーラと、その風貌に際立った個性を備えている。
古典芸能という制約はあれども、これから唯一無二の芸風がますます磨かれていく予感がした。
楽屋を訪ねたとき、ご子息の挨拶が礼儀正しかったこと。
それにあやかるためにも今度はぜひ子供と一緒に出かけよう。
第30回 狂言やるまい会 東京公演
2014 11.15 sat
十四世喜多六平多記念能楽堂
卒業以来欠かすことなく積み重ねられてきたであろう精進の日々に思いが馳せられてただただ頭が下がる。
特にパフォーマンスを伴うものには「本番」があり、
身体的なメンテナンスにも常日頃から相当な神経を注いでいるはずだ。
狂言「やるまい会」の主催者・野村又三郎は、十四世として今まさに脂が乗っていた。
狂言の道を真摯に極めようとしている姿に接し、またご子息との共演を目の当たりにして一層感慨深い公演となった。
一子相伝の芸が次代へ橋渡しされているのを垣間見られるのは、能・狂言や歌舞伎など子役が登場する演劇ならでは。
工芸や大工などの分野も然り、日本の伝承は家によって代々おこなわれていくのが強みである。
芸能に限れば、雅楽まで遡ってあらゆるジャンルの主要な流派が途絶えることなく並存しているのは
日本ならではの特色と言われる。
極めつけは男系で125代続いている天皇家。
世界広しと言えどもこのような長きにわたる一本の皇統が現存するのは我が国のみで、
それが例えばアメリカのプロトコル(外交儀礼)においては
英国国王、ローマ法王と並んで天皇が最高位に置かれる理由なのだとか。
さて、会主の堂々たる挨拶に始まり、『文蔵』、『石神』、素囃子の「水波之伝」を挟んで『唐人子宝』の三番が披露された。
『石神』で夫婦役を演じた奥津健太郎、野口隆行は役へのはまり具合が絶妙でおかしさを誘った。
なんと三組の親子が舞台に立った『唐人子宝』は、子役達の声や背格好がまさに一期一会であることからも貴重である。
世継ぎを無事に儲けた誇らしさ、めでたさが舞台に満ち満ちているかのように感じられた。
能『唐船』を翻案した異色の狂言だそうで、中国語風の科白が珍しい。
この日客席が一番湧いたのは、唐土(中国)より携えたという宝物、巻絹・サンゴ・瑠璃の壷が舞台に並べられ、
サンゴを「赤サンゴでござる」と言った場面。
おそらく時事の話題を巧みに取り込んだものと思われ、それによって様々な距離がぐんと縮まった。
やはり笑いを取ってこその狂言と思うのである。
野村又三郎は狂言に相応しい明るいオーラと、その風貌に際立った個性を備えている。
古典芸能という制約はあれども、これから唯一無二の芸風がますます磨かれていく予感がした。
楽屋を訪ねたとき、ご子息の挨拶が礼儀正しかったこと。
それにあやかるためにも今度はぜひ子供と一緒に出かけよう。
第30回 狂言やるまい会 東京公演
2014 11.15 sat
十四世喜多六平多記念能楽堂